みなさんこんにちは。30周年企画「あの銘店をもう一度」が終わり、30周年を迎えた後の最初の店舗として「博多一双」さんが2024年6月24日(月)に満を持して登場します!
前回の記事はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話 ラー博にまつわるエトセトラ Vol.41 あの銘店をもう一度がついにフィナーレ!! 大トリは横浜「六角家1994+」
過去の連載記事はこちら:新横浜ラーメン博物館のウラ話
とんこつラーメンの聖地・福岡において、ひときわ目立つ大行列。
博多っ子はもちろんのこと、県外や海外に至るまでその評判を聞きつけ多い時には200人以上が列をなす。そのお店の名は「博多一双」。
長時間待ってまで食べたいその魅力は、豚骨を長時間炊き上げ、骨の髄からうま味を最大限に引き出した濃厚なスープ。そして丼一面を覆うきめ細かい“泡”は、その見た目から“豚骨カプチーノ”と称され一双の代名詞に。
福岡は今、非とんこつ系(淡麗醤油やつけ麺等)に注目が集まっています。決してこの流れを否定するわけではありませんが、新横浜ラーメン博物館としては、創業から30年間、変わらず続けてきたことは、日本の素晴らしい食文化である「ご当地ラーメン」の紹介であり、この基本理念はこれからも決して変わることはありません。
そしてこの度、博多ラーメンのこれからを担うお店として「博多一双」が2024年6月24日(月)に出店します。
博多一双の創業は2012年。創業者は兄・山田晶仁(まさひと)さんと、弟・山田章仁(あきひと)さんの山田兄弟。屋号の「一双」には、「二人で一つ」、「二人で日本一になろう」という想いが込められています。
兄弟は福岡県北九州市に生まれ、幼少期に福岡市へ引っ越し、それ以来ずっと地元福岡を世界一有名な町にしたいという想いを持っておりました。
山田兄弟はこれまで一度も喧嘩をしたことがないというほど大の仲良し。
弟・章仁さんが書いた幼稚園の卒園文集には、既に「兄がゲーム会社の社長、僕がゲーム会社の副社長」と書かれており、将来は二人で事業をやっていこうという気持ちが幼少期からあったのです。
そんな山田兄弟が何故ラーメン店を開業したのか?
兄・晶仁さん曰く「ある日、テレビでラーメン特集がやっていて、“ラーメン店は気合と根性があれば必ず成功する”っていう言葉に触発され、”俺でもできるっちゃない?”と思い、ラーメン界に入る事を決意しました」とのこと。兄・晶仁さんは18歳の時、福岡中のラーメン店を食べ歩き、自分が美味しいと思ったラーメン店で修業を始めます。弟・章仁さんも、高校1年生の時に同店にアルバイトとして入り、高校卒業後すぐに社員として働き、それぞれ兄が7年半、弟が5年間の修業の末、2012年11月27日に「博多一双」本店を開業。兄25歳、弟21歳のことでした。
博多一双は博多駅から徒歩6分ほどの場所に開業。今でこそホテルや飲食店も増え、それなりに人通りが多いエリアとなりましたが、開業したころはお昼時にサラリーマンの人がいるだけで、夜は全く人もいない場所でした。またこの場所は多くの飲食店が開業しましたがことごとく失敗していた場所でもありました。
何故この地に創業したのか?
兄・晶仁さん曰く「元々地元の方々に支持されるお店を目指していました。特に地元で働くサラリーマンの方々がラーメンを食べて、“よし午後からの仕事頑張ろう!”とか“今日は頑張ったからご褒美に美味しいラーメンを食べたい”と思ってもらえるようなお店にしたいと思っておりましたので、不安もありましたがここでやるという決断に至りました」とのこと。
開業後、平日はそれなりにお客さんが来ましたが、夜と休日はやはり苦戦したようです。弟・章仁さん曰く「手元資金に余裕がなかったですが、とにかく美味しいラーメンをという想いでお客さんの声を聞いたり、兄と話し合いながら日々試行錯誤を繰り返しました」
そんなある日、気づいたら夜も休日もお客さんが来るようになりました。「お客さんから“食べログで1位のお店だから来てみた”と聞き、知らない間にこれまで来ていただいたお客さんによる書き込みで夜や休日にも足を運んでくれるようになりました。開業の半年後のGWには行列ができるようになりました」
その後、お客様が順調に増え続け、開業から2年が過ぎたころにはスープの仕込みが追い付かなくなり、夕方にはスープ切れでお店を閉めざるを得ない状況が続きました。そこから24時間体制でスープを炊いても間に合わなくなったため、近隣に店舗を借り、そこでもスープを取り、ようやく売切れなく営業できるようになりました。その後、2014年5月29日には中洲店、2016年9月28日には祇園店をオープンし、現在福岡で3店舗を運営。
私たち新横浜ラーメン博物館が「博多一双」さんを初めて食べたのが2014年。開業してから2年が経った頃です。地元のラーメン通からの口コミでした。
当時のメモには「活気と勢いがあり、地元の人に支持されている。10年後にこの状態が続いていたら、次世代の博多ラーメンを担うお店になるのでは」と書かれていました。
10年経った「博多一双」さんは私たちの想像を超えたお店になっていました。私たちは「次世代の博多ラーメンを担う代表としてご出店いただきたい」とお声がけをしましたが、その答えは「NO」でした。
その理由について兄・晶仁さんは「私たちは福岡で生まれ育ち、商売をさせていただいているので、現段階で福岡県外に出店することは考えていない。豚骨、チャーシュー、麺、醤油などの食材も全て地元福岡の業者から仕入れるなど、頑なに地元福岡にこだわり続けてきました。私たちのお店を目指して福岡県外からお客さんが来てくれることが少しでも恩返しになると思っていました」とのこと。
私たちはいつものことながら何度も何度も通い、不安点を1つ1つ解決していきました。
新横浜ラーメン博物館はある意味アンテナショップであり、過去の実績からここで知った人が本店に行く人が多くいることと、ラー博は海外からのお客様も多いため、国内のみならず全世界から福岡を訪ねることとなる、その結果として博多ラーメンを世界中に知らしめるチャンスであると何度も話し合いました。
少しずつ考え方も変わってきた中、山田兄弟がニューヨークを訪れた際に「これまでは地元福岡に食べに来てもらいたい、福岡の地で頑張りたいという気持ちが強かったですが、少し頭が固かった。これからは、福岡のとんこつラーメン、博多一双のラーメンを、関東圏、そしてゆくゆくは海外にも知らしめたい。ラーメン博物館で“とんこつラーメンといえば博多一双”と言ってもらえるように頑張りたい」と考えるようになり、出店を決断していただきました。
博多一双の代名詞「豚骨カプチーノ」という言葉は、どんぶり一面に浮かぶ泡(脂泡)を表現して、開業から1年が過ぎたころ、お客様がSNSで名付けたのが始まりです。
この泡はブレンダー等で意図的に作り出したものではなく、スープを炊くときに空気と脂が混ざり合い、自然に出来たものです。泡のマイルドさと豚骨が持つ力強さが同居した、極上のスープが完成するのです。
兄・晶仁さん曰く「私が修業時代、この泡はアクだから捨てなさいと教わりましたが、私は泡が立っている時が一番美味しいと思っていたので、独立後はこの泡が出ている状態のスープでラーメンを出したいと思っておりました。“豚骨カプチーノ”という言葉は後からお客さんにつけていただいた言葉であり、決して最初から戦略的に泡を出しているわけではなく、あくまでもこの状態が美味しいから泡を出しているのです」とのこと。
スープは国産豚の骨だけを使い、店主の考える黄金比によって豚の頭骨、背骨、げんこつを
骨の髄からうま味を最大限に引き出されたとんこつスープに浮かぶ泡は濃厚な手作りとんこつスープの証で、「豚骨カプチーノ」と呼ばれる極上のスープなのです。
替え玉率8割の麺は、しなやかであり触感が心地いい歯切れの良さが特徴。形状を平打ちにする事により、濃厚な豚骨スープを持ち上げ、ぷつっと歯切れの良い触感が生まれます。
チャーシューは、店主が吟味した安心安全な豚肉を使用。ラーメンダレでラーメンの味を邪魔しないシンプルな味付けをしているため、スープになじみ易く肉の味を楽しめます。
その他の具材は、きくらげ、青ネギとシンプルな構成。
新横浜ラーメン博物館ではこれまで福岡のラーメンの歴史でエポックメイキングとなったお店を誘致・ご出店いただきました。今回ご出店いただく「博多一双」さんで福岡の店舗としては7店舗目です。
【これまで新横浜ラーメン博物館に出店した福岡のお店】
●博多「一風堂」
ラー博出店:1994.3.6~2001.6.3
●久留米「魁龍博多本店」
ラー博出店:2001.7.11~2004.8.31
●博多「ふくちゃんラーメン」
ラー博出店:2004.8.3~2009.11.24
●久留米「大砲ラーメン」
ラー博出店:2009.12.19~2013.1.14
●博多・長浜「名島亭」
ラー博出店:2015.2.18~2017.2.26
●博多・薬院「八ちゃんラーメン」
ラー博出店:2019.3.6~2022.10.30
現在の「博多一双」さんは、百道時代のふくちゃんラーメンや、94年当時の一風堂といった、これまで博多ラーメンの歴史を作ってきた人たちと同じく、とんこつラーメンという土壌で新たな道を切り開くお店だと私たちは考えます。是非皆様の舌で歴史と共に味わってください。
新横浜ラーメン博物館公式HP
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