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【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第30回

千葉で2005年創業の人気店が、埼玉・吉川に移転してリスタート!『にぼしラーメン一恭』が煮干しにかける想い

2024年06月21日 12時00分更新

文● 大熊美智代 編集● ラーメンWalker

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 千葉で2005年創業の人気店が、2021年に埼玉県吉川市に移転した。その名も『にぼしラーメン一恭』。移転して店名に掲げた煮干しへの想いは、店主の町田恭治さんがその味に惚れ込んで弟子入りした、千葉の永福町大勝軒系『海空土』の味に通じる。千葉で長年愛され、吉川でも2年半、名店の味を受け継ぐ店主のラーメン人生第2章!

千葉の人気店が埼玉移転で、煮干しを看板に掲げて再スタート

 厨房で黙々とラーメンを作り続ける町田恭治さんが、ラーメンの道に進むまでには長い道のりがあった。転機は、大学を卒業し、化粧品メーカーに勤めていた頃のこと。コンサルタント営業でいろんな店を回るうちに、自分でも何かやってみたいと思い始めた。3年勤めた会社を辞め、飲食業界の企業に転職する。新宿、目黒と都内で働くうち、千葉の飲食店を立ち上げる話が舞い込んだ。

 移り住んだ千葉の都賀という地で、店長として店を切り盛りするうち、永福町大勝軒系の流れを汲む『らーめん専科 海空土』に出合う。「2、3回行ったら本当にハマってしまって、朝起きたら『海空土』のラーメンが食べたくなる。時間があれば『海空土』に行って、すぐに大将の楠田さんとも仲良くなりましたね」と、町田さん。

 しばらく経った頃、同じ千葉市内に空き物件が出るという話を楠田店主が「町田くんもラーメン屋やりたいんでしょ」と教えてくれたのだ。学生時代はラーメンを食べ歩き、自分でランキングを作るほどラーメン好きだった町田さん。それまでは漠然とラーメン屋をやりたいと思っていたが、開業するなら『海空土』の味でやりたいと弟子入りした。楠田店主のもとで修業を積み、千葉の生実で『こだわり拉麺 一恭』を創業したのは2005年2月15日。『海空土』の味を目指し、ひたすら追い求めた。

『にぼしラーメン一恭』店主の町田恭治さん。名店『海空土』の味を目指し千葉で独立、そして埼玉へ

 独立してから17年ほど経った頃、もともと50歳までには地元・埼玉に戻ってきたいと思っていた町田さんは、移転を決意する。2021年11月18日、店名新たに埼玉の吉川市に構えた店は、『にぼしラーメン一恭』。「店名って大事じゃないですか。何のラーメンかイメージできるようにしたくて。やっぱり、こだわってるのは煮干しだったので」。そうして、新しい店名に煮干しを冠した。

店は、吉川駅から徒歩14分、流山からレイクタウンへ通じる県道近くの住宅街にある

 実家が近くなったことで、町田さんの両親も毎朝、開店の準備を手伝いに来てくれるようになった。保育士だった妻の由季さんも、店を手伝ってくれることに。あたたかい雰囲気の店内は、由季さんが手掛けたものだ。「店づくりの時に、私に内装は任せてくれて、女性が入りやすい店をテーマに、オレンジを基調にした色合いにしました。壁の煮干しの絵も、表情の違うのが3匹いるんです。それを見つけたりするのも楽しいですよ」と、遊び心あふれる仕掛けを由季さんは教えてくれた。

席数13席(カウンター7席、4名掛け・2名掛けテーブル各1)。カウンターに電源があるので、充電切れでラーメン写真を逃さない

継ぎ足しスープの旨さが際立つ、こだわりの煮干し出汁

 千葉で約17年積み上げてきた味は、吉川でさらにブラッシュアップを重ねているという。寸胴の中を見せていただくと、看板の煮干しはもちろん、魚介系、動物系、野菜と美味しいスープのもとがぎっしり詰まっている。

煮干しの他にも、かつお節やサバ節、豚骨や鶏ガラ、野菜など14種類の食材で出汁をとる

毎日、継ぎ足して作るスープは一期一会の味わい

スープの香りが店内を満たし、ラーメンへの期待が高まる。早速、町田店主渾身の一杯をお願いした。

温めた丼にタレ、出汁を注ぎ、平ざるで麺上げ。流れるような所作でラーメンが完成していく

「煮干しだし醤油ラーメン並」950円+スペシャルトッピング340円(味玉・バラ海苔・チャーシュー追加)

 「コロナ禍に魚が獲れなくなって、煮干しの高騰と、物を選べない状態になってしまったんです。二番出汁など試したり、いろいろ試行錯誤したけど、やっぱり一番出汁じゃないとこの味にはならない」という町田さんの言葉に、まずはスープをいただく。

カタクチイワシの煮干しメインに、魚介、動物、野菜がバランスよく、醤油の効いた旨味あふれるスープ

 「醤油は6種類使っていたのを、いまは5種類にして配合も変えて、醤油が強くなった分、煮干しも強く出してます。他の食材も基本は変えないで、バランスをとる感じですね」。以前よりもバランスよくまとまったスープは、毎日飲み干したくなるほど、身体にもやさしい美味しさがある。そのスープをたっぷりまとうやわらかな麺は、千葉時代から変わらない山田食品の中細縮れ麺。卵不使用のオリジナル麺だ。

山田食品のやや縮れ中細麺が煮干しスープによく絡む

〆に煮干し全開の比類なきつけめんと、長く愛される味へ

 もう1つの看板メニューつけめんは、千葉で閉店する際にも「最後につけめんを食べておきたい!」という常連客が駆けつけたほど。「他にはないつけめんだと、お客様にもよく言われます。特にタレは醤油の種類、配合、バランス等を変えて、長年かけて作りあげたもので、千葉からつけめんを求めていらして下さる方もいるんですよ」。その人気は、吉川に移っても変わらない。

「煮干し出汁醤油つけめん 並」1080円

 つけ汁の器が置かれると、煮干しの香りがふわっと立ち上る。いつもなら麺からいただくのだが、よい香りに導かれレンゲでひとすくい。甘辛酸の旨味あふれるつけ汁のなかに、煮干しの味がはっきりと! これはあとをひく旨さ。ラーメンと同じ中細縮れ麺はつけ汁にもよく絡み、噛むごとに小麦の風味も広がる。「つけめんは、カエシがメイン。大量のホタテや昆布などが入ってるので、そのカエシが効いてますね。つけめんのほうが自分の個性が出せてるって、自信があります」。そんな話を伺うと、コアなファンが多いのも頷ける。

手前が14種類の食材が入った出汁100%割りスープ原液

 ちょうど食べ終わりそうな頃、見計らったように別器で割りスープが提供。なんと、煮干し等14種類の食材が入った出汁100%の原液だという。がっつりビターな煮干しの効いた割りスープは、そのまま飲み干してしまいたいほど美味しい。通常とは逆パターンで、つけ汁をレンゲで3~4杯ほど割りスープに追加するとよいそうだが、つけ汁を何杯追加しても、ビターな煮干し感は変わらず、最後まで煮干し全開だ。

ミニライスにバラ海苔、とろろ昆布がのった「ラーメン茶漬け」120円で、スープを余さずいただく

 千葉で17年かけて築いたものが、新しい場所への移転で、またゼロからの挑戦。スープやタレなどのブラッシュアップはもちろん、夫婦二人だけの営業でサービスが落ちないよう、かなり多いメニューを見直すなどして、2年半かけて、いまは安定して提供できるようになったと町田さん。

由季さんの盛り付けに、そっと手を添える町田店主。夫婦二人三脚で一杯のラーメンが完成!

 「ありきたりなんですけど、吉川の皆さんはじめ一人でも多くの方に喜んでいただけたら。本当にそれだけです」。由季さんの細やかな接客の奥で、淡々とラーメンを作り続けているときも、お客様への心配りを忘れない町田店主。スープを飲み干すと、また食べに来たいなあと思った。この一杯の中に、食べる人へのやさしい想いがあふれている。千葉から始まったこの味は、吉川でも長く愛される味になるだろう。

町田店主の傍らには、「休日に子供を集めて読み聞かせもできるといいですね」と元保育士の由季さん

にぼしラーメン一恭
埼玉県吉川市中野1-2-102
平日11:30〜15:00、18:00〜21:00、土日祝11:30〜15:30、18:00〜21:00(LO各15分前)
火曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッターをご確認ください。

大熊美智代 Michiyo Okuma

ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。

本人Twitter @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna

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