産業技術総合研究所(産総研)、横浜国立大学、東北大学などの共同研究チームは、多数の量子ビットを制御可能な超伝導回路を提案し、回路動作の原理実証に成功した。室温に設置した機器と極低温に設置した機器をつなぐケーブル数の大幅な削減が可能となり、大規模量子コンピューターの実用化に向けた基盤技術となることが期待される。
産業技術総合研究所(産総研)、横浜国立大学、東北大学などの共同研究チームは、多数の量子ビットを制御可能な超伝導回路を提案し、回路動作の原理実証に成功した。室温に設置した機器と極低温に設置した機器をつなぐケーブル数の大幅な削減が可能となり、大規模量子コンピューターの実用化に向けた基盤技術となることが期待される。 既存の量子コンピューターでは、室温下で生成したマイクロ波信号一つひとつを異なるケーブルで極低温下の量子ビットまで伝送する。そのため、量子ビット数が増えると、室温と極低温を繋ぐ大量のケーブルが必要となり、制御可能な最大量子ビット数は1000個程度に制限されるという。 研究チームは今回、超伝導集積回路の優れたエネルギー効率やマイクロ波技術との高い親和性に着目。マイクロ波を多重化することで1本のケーブルで多数の量子ビットを制御可能な超伝導回路を提案した。さらに、提案した量子ビット制御超伝導回路を産総研の超伝導集積回路プロセスにより作製し、液体ヘリウム中(絶対温度4.2 K)の極低温環境下でその原理実証に成功した。 この技術が実用化されれば、マイクロ波の伝送経路の密度を従来の1000倍程度まで高めることが可能となり、極低温下で制御可能な量子ビット数を飛躍的に増加させることが可能となるという。研究論文は、npjクァンタム・インフォメーション(npj Quantum Information)に、2024年6月3日付けで掲載された。(中條)