東京大学の研究チームは、量子情報処理において貴重な資源とされている「量子コヒーレンス」に対し、「量子リソース理論」の枠組を用いて解析を実施。量子コヒーレンスは、無制限の増幅が可能であることを理論的に示した。
東京大学の研究チームは、量子情報処理において貴重な資源とされている「量子コヒーレンス」に対し、「量子リソース理論」の枠組を用いて解析を実施。量子コヒーレンスは、無制限の増幅が可能であることを理論的に示した。 量子コンピュータなどの量子情報デバイスにおいて、「量子超越性」などのメリットを得るには、異なる量子状態の間の重ね合わせである「量子コヒーレンス」の存在が不可欠である。研究チームは今回、エネルギー保存則という、この世界に普遍的に課された制限の下で、異なるエネルギーを持つ状態の間のコヒーレンスをどこまで操作できるのか、という問題に理論解析で取り組んだ。 その結果、最初にわずかでも量子コヒーレンスが存在すれば任意の操作が可能であり、特に量子コヒーレンスをいくらでも増やすことが可能であることを明らかにした。この成果は、量子情報技術への応用が期待されるとともに、量子であることの特徴のひとつである量子コヒーレンスについての予想外の性質を明らかにするものでもあるという。 量子コヒーレンスは、「追加の補助」がなければ減っていく一方で、一度減ってしまった量子コヒーレンスを再び増やすことはできない。そこで、さまざまな追加の補助を用いることで、量子コヒーレンスに対する操作能力を上げようとする研究が活発になされている。しかしこれまでの研究では、補助がない場合と変わらない操作能力しか得られなさそうだという否定的な結果が多く得られていた。 研究論文は、フィジカルレビューレターズ(Physical Review Letters)に、2024年5月2日付けでオンライン掲載された。(中條)