共創と宇宙 北九州市がスタートアップと描く未来
北九州市発の大規模スタートアップイベント「WORK AND ROLE 2024」レポート
「北九州市 × INNOVATION」を掲げた北九州市発の大規模イベント「WORK AND ROLE 2024」が2024年3月27日に開催された。北九州市のスタートアップ支援5事業に採択された21者/社のスタートアップによるピッチや展示、20者を超えるゲストによるパネルセッションのほか、交流会などが行なわれた。
イベントは、北九州市立高校ダンス部「N9SD CREW」のダンスパフォーマンスから始まった。1999年4月に結成され、数々のダンス選手権でも入賞経験を持つ実力派チーム。パフォーマンス終了後には、このような大きなイベントのオープニングを務めることができとてもうれしかったと語った。
続いて、北九州市市長の武内和久氏による開会の挨拶があった。武内市長は、北九州市のスタートアップについて、北九州市はいろいろなことにチャレンジしている街だとし、人や技術、企業、アカデミアの力などがそろっており、人のつながりもあると魅力をアピール。
その力を集め、新しい時代に挑戦するようなスタートアップ、企業、研究が生まれることに期待したい、皆と一緒につくっていきたいと述べ、今回のイベントにおいてスタートアップのより一層の盛り上がりに期待すると締めくくった。
イベントでは、スタートアッププログラムに応募し採択されたスタートアップによるピッチや、豪華ゲストによる講演やパネルディスカッションのほか、参加企業によるブース展示も行われた。スタートアップによる成果発表や協業を求める企業、アカデミアなどがそれぞれの目的のためにアピールし、来場者を含めて交流が行われた。
展示会場にはスタートアップ企業のブース以外にもキッチンカーや地元飲食店などの販売ブース、地元の高校や大学のブースもあり、にぎわいをみせていた。
夕方からは夜の部(ナイトセッション)として、ステージでは起業家を交えたパネルディスカッションが行なわれるかたわら、飲食をしながらのネットワーキングも行われ、閉会の時間まで盛り上がった。
数々のセッションの中で、来場者の注目をもっとも集めたのがメインテーマのひとつでもある「宇宙」にまつわるもの。月面探査ロボット(ローバー)の技術を応用したモーターで社会課題解決を目指す株式会社Piezo Sonicなどスタートアップ企業も参集。宇宙飛行士で日本科学未来館名誉館長である毛利衛氏による基調講演「我々は何故宇宙へ挑戦するのか」は、来場者の関心も特に高かったようだ。
なぜ人は宇宙を目指すのか。人類が宇宙を目指し、実際に宇宙に滞在できるようになった今、人類はなんのためにここにいるのか、地球に住む生命のひとつとしてどのように生きていくべきだろうか、と毛利氏は問いかける。
人間は40億年前に生まれた生命の延長線にあるということを念頭に、「think ahead」――未来のことを考え、持続可能な社会のための知恵を持ち寄るべきだと説いた。
続いて行われたパネルディスカッションでは、「夢をつむぐ宇宙への挑戦者たち」と題して毛利氏を交えて、これから宇宙を目指すスタートアップについて熱く語られた。
宇宙産業は、アイデアがあれば新しいことができるが、まだまだ人材が足りていないという。しかし、人材の厚みが求められている中、九州工業大学が宇宙に特化した宇宙システム工学科を有しながら卒業生が宇宙産業になかなか就けないという課題も挙げられた。一方で、宇宙分野でようやく「文系」のスタートアップが日本からも出てきたことで、盛り上がりを感じるとの期待も示され、北九州からビジネスを活性化していこうと盛り上がった。
今回のメインテーマは「未来」、「共創」、「宇宙」ということで、宇宙関連以外にも多くのスタートアップのピッチ、パネルディスカッションが展開された。各プログラムを紹介していきたい。