有機EL搭載&真のプロ仕様になったiPad Proに、Apple PencilもProに進化! 春のiPad祭り特集 第10回
【現地レポ】iPad新製品が「久々」であり「大型アップデート」になった理由を探る(西田宗千佳)
2024年05月09日 07時00分更新
iPad Proの「タンデムOLED」とは
iPad Proが軽量化、薄型化したのは、ディスプレイを有機EL(OLED)に変えたからではある。
アップルがiPhone以外でOLEDを採用するのは初めてだが、業界全体で見ればOLEDの採用自体はすでに珍しいことではない。ただ一般論として、OLEDの活用はそれほどシンプルなことではない。
OLEDは自発光デバイスであり、「発色が良くなる」「黒が締まり、コントラストが上がる」「黒を中心に表示する場合、発光面積が減るので消費電力を下げやすい」「液晶よりもレイヤー構造がシンプルになり、薄型化できる」というメリットがある。
だが逆に、「焼き付き現象が液晶よりも起きやすい」「黒以外の面積が多い場面での消費電力は意外と高い」「液晶に比べピーク輝度を高めづらい」「量産性の問題から単価が高くなる」というトレードオフが存在する。
OLEDを使い、メリット・デメリットを勘案して良いタブレットを作るには、相応の工夫が必要になるわけだ。
そういう視点で見ると、iPad Proに投入された新技術の価値も見えてくる。今回のiPad Proで使われたOLEDは、2枚のOLEDパネルを組み合わせた「タンデムOLED」である。
2枚を組み合わせている理由は、「液晶に比べてピーク輝度が低い」「輝度を高めると焼き付きしやすい」という問題を解決するためだ。2枚のOLEDに輝度分布を分散できるので焼き付き防止がより楽になり、ピーク輝度を高めたいところでは2枚分の輝度を重ねることで明るさを担保できる。OLEDになってミニLEDモデルより明るさが落ちるのを防ぐには、この手法を使うのが確かに効率的だ。
そしてなにより、OLEDを2枚重ねたとしても、12.9インチ版iPad Proが採用してきた「ミニLEDバックライト採用液晶」よりシンプルな構成になり、薄型化しやすい。
13インチモデルと12.9インチモデルを比較した場合、厚みは1.3mm違う。今回の新製品同士でiPad ProとiPad Airを比較しても1mm厚さが変わる。iPad Airの13インチモデルはミニLEDを採用していないため、12.9インチ版iPad Proより0.3mm薄くなっているのだが、タンデムOLED採用のiPad Proはさらに薄くなっている。
タンデムOLEDを採用した11インチiPad Proと、2022年モデルの11インチiPad Pro(こちらは通常液晶)では0.6mmの薄型化になっているので、ミニLED搭載モデルは「輝度のトレードオフとして重く、厚くなっていたのだ」とも考えられる。
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