中国でスマホを隠せる道具がECサイトで売られている
どうやら学生が購入しているらしい
中国のECサイトに行くと、スマホが入るマグボトルがひっそりと売られている。スマホが水浸しになっていいわけはないのだが、横から見ると「巨」の字のような形で中の突起の部分に空間があり、本来の水をためる機能を持ちつつも、底からスマホが入れられるようになっている。
これが何のためにあるかと言えば、学生がスマホを隠し持つためのアイテムなのだ。商品によっては、さらにUSB充電器やケーブルを入れる程度のスペースを別に用意しているものもある。
実際にこうしたマグボトルは淘宝(タオバオ)、京東(ジンドン)、ピンドゥオドゥオなど中国のECサイトで売られているほか、ピンドゥオドゥオの売れ残りを海外で処分する仕組みのあるECサイト「Temu」においても販売が確認できた。
中国のECサイトでは「蔵手机(ケータイ隠し)神器」や「寮でのケータイガサ入れでもバレない」「試験場でのケータイ持ち込みもバレない」などといったキーワードでひっかかる。
メーカーやECサイトは学生向けに提供しているとは言わない
商品を見ると、学校の校門やテスト会場の入口で空港にあるような金属探知機を使って生徒の持ち物を検査する学校の教師の写真とともに、「もうバレる心配はない」といった内容のテキストが書かれている。
メーカーの担当者によれば「当初はスポーツ選手が携帯電話を入れるために使用していた透明なウォーターカップだった。その後販売店の要望で不透明なウォーターカップを製造した」と弁明する。つまりスポーツ用品だったが、販売者が学生のニーズに合っているとばかりに改良したわけだ。確かにTemuにおいても学生向け製品としては売ってはいない。
日本の文科省にあたる中国の教育部が発表した「小中高生の携帯電話の管理強化に関する通知」によれば、小中高生は私物の携帯電話を校内に持ち込むことを原則として認めないとし、これ自体は日本も変わらない。だが、中国は権力を持っていたり、財力がある人間が強く、さらに言えば教師の権力は日本のそれの比ではない。
生徒が集中していなければ怒るし、モノを教壇から投げて生徒にぶつける。スマホを隠して学校に持って行って見つかれば没収されてその日に返ってくれればいいほうで、グループチャットや宿題の調べもので必要なのにも関わらず、しばらく返ってこないこともあるし、見せしめに朝礼でまとめて公開破壊されることすらある。
中国の学生は日本以上に勉強で忙しい
でもスマホのゲームもちろんプレイしたいのだ
そこまでしてなぜ中国の小中高生が学校にスマホを持っていくかというと、中国でもゲームが人気だからだ。具体的には長らくテンセントの「王者栄燿」、近年はmiHoYoの「原神」が学生たちの間でよく遊ばれている。
勉強量、覚えなければいけない量が日本と比べて非常に多く、公立校でも朝早くから夜遅くまで授業漬け。家に帰ってからも深夜遅くまで宿題を数多くやらされるが、その隙をぬって学生たちはゲームを遊ぶ。中国の歴史的著名人らのキャラクターが5対5で戦う王者栄燿はクラスメートの共通知識となるほど人気で課金する学生も少なくない。ちょっとでも遊ぼうと監視カメラのないトイレの個室や体育倉庫で1、2回だけ遊ぶというのはよくあることのようだ。
中国ならではの「上に政策があれば下に対策あり」を子供の頃から実践しているのか、学生もお上の命に反してスマホを隠し持ってくるのだが、秘密道具はマグボトル以外にもある。
中国のECサイトで「蔵手机」と検索したり関連報道を見たりすると、スマートフォンを入れる層を設けた弁当箱、手鏡、モバイルバッテリー、目覚まし時計、分厚い辞書や名著などが売られているのがわかる。
分厚い本ならいざ知らず目覚まし時計を持って行くのかと思うのだが、これはどうやら学生寮向けだ。学生寮でもスマートフォンの持ち込みは許されないところが多いことから、据置型のスマホ隠し持ちアイテムもあるわけだ。ちなみにこうした商品は親も反対していて、それでいて学生が所持しているのだから、多くの学生はある程度お小遣いでECサイトで買い物ができる状態にある。
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