AMDは4月16日、ビジネス用途のAI PC向けプロセッサーシリーズを発表。デスクトップ向けに「AMD Ryzen PRO 8000シリーズ」、モバイル向けに「AMD Ryzen PRO 8040シリーズ」をそれぞれ発表した。
NPUを統合したAIプロセッサー「Ryzen AI」を一部モデルに搭載。生成AI系アプリを使った作業に向いていることに加え、「ウェブ会議をしても消費電力が少ない」といった電力効率の良さがアピールポイントだ。
デスクトップ向け「AMD Ryzen PRO 8000」シリーズ
AMD Ryzen PRO 8000シリーズは、Socket AM5向けのデスクトップ向けAPU(CPUとGPUを1つのチップに統合したプロセッサー)。「RDNA 3」世代のGPUを採用している。
Ryzen 7、Ryzen 5、Ryzen 3のラインアップ構成で、最上位はRyzen 7の8コア16スレッド、最下位はRyzen 3の4コア8スレッド。
性能は、最上位クラスの「Ryzen 7 PRO 8700G」が、2024年1月発売の「Core i7-14700」(いずれも65W)より高いと主張。ベンチマークテストでは、総合点で19%高く、特にグラフィックスでは3倍の差をつけており、コンテンツ制作などに役立つとしている。
電力効率は同じプロセッサー同士の比較で、諸々のMicrosoft Officeツールを立ち上げたままTeamsで会議をした場合、1080pのWebカメラを使った場面では76%も電力効率が良いとした。
モバイル向け「AMD Ryzen PRO 8040」シリーズ
AMD Ryzen PRO 8040 シリーズは、AI PC向けのモバイルSoC。Zen 4アーキテクチャーを採用しており、4nmプロセスで製造している。
Ryzen 9、Ryzen 7、Ryzen 5のラインアップ構成で、最上位はRyzen 9の8コア16スレッド、最下位はRyzen 5の6コア12スレッド。
性能は、上位モデルの「AMD Ryzen 7 PRO 8840U」(15W)が、2023年12月発表の「Core Ultra 7 165U」(15W)、「Core Ultra 7 165H」(28W)より高いと主張。ベンチマークテストでは、総合点でそれぞれ30%、18%高く、特に映像処理では54%、27%高い結果になったという。
電力効率は、同じプロセッサー同士の比較で、Word、Excel、PowerPoint、Outlookを使った場合、総合的にはそれぞれ70%、12%電力効率が良かったとする。
AIアプリは、同じく「AMD Ryzen 7 PRO 8840U」(15W)が、2023年12月発表の「Core Ultra 7 155H」よりも処理が高速だと主張。画像生成AI「Stable Diffusion v1.5」で28%、ポストプロダクションソフト「DaVinci Resolve」のアップスケーリング機能では85%高速だったという。
最上位モデルの「Ryzen 9 PRO 8945HS」(45W)は、2023年12月発表の「Core Ultra 9 185H」と比べても、CGやCADなど様々なクリエイティブ系アプリで処理が早いと主張。特にAIアップスケーリングアプリ「Topaz Labs AI」では50%早く処理が終わったとして、コンテンツ制作などに役立つとする。
なお参考までに、PCローカル環境で動作させる大規模言語モデル(LLM)については、2023年6月発表の「Ryzen 7 PRO 7840U」(15W)は、2023年12月発表の「Core Ultra 7 155H」に比べ、Metaの「Llama 2」を動かした場合、最初のトークン(文字列)が表示されるまでの速度が79%早かったという。
「AMD PRO Technologies」対応
プロセッサーはいずれも「AMD PRO Technologies」に対応していて、独自の管理ツールやセキュリティ機能が利用可能。セキュリティ面では、マイクロソフトとAMDが共同開発したセキュリティプロセッサー「Microsoft Pluton」を新たにデスクトップ向けにも組み込んでいる。
プロセッサーの主要納入先はHPとLenovoで、ノートパソコンでは「HP Elitebook」シリーズと「Lenovo ThinkPad」シリーズ、デスクトップでは「HP Elite Small Form Factor」シリーズと「Lenovo ThinkCentre」シリーズに採用される。
今後5〜10年はビジネスでも「生成AI」が重要に
商用クライアントPC分野におけるAMDの市場シェアは2019年から2023年までに166%成長している。そのなかでAMDは、今後5~10年にクライアントPCで大きな役割を果たすのは生成AIソリューションだと考えているという。特に生成AIを使ったパーソナライゼーションや、生産性向上などへの期待が高まるものと予想している。
IDCの調査によれば、2027年のPC出荷台数の約60%がAI PCになると予測されており、企業顧客の約59%はAI PCを採用したいと考えているという。AMDではこうした市場背景から、ビジネス用途のAI PCに売り伸ばしのチャンスを見ている形だ。