AIサイネージはホームセンターで活躍中
── 技術的な話ですが、T-HUBは裏側にパソコンがついてるんですか?
丸尾健治氏(以下、丸尾) Androidタイプのセットトップボックス(STB)が付いています。処理としてはカメラに写った人の顔を検出して、年齢とか性別を出す。何秒サイネージの下にいたかをカウントするためにIDも振っています。IDの保持期間は10〜20秒です。認証技術は協力会社のヴィゾ(ViZO)というITベンチャーが作り、アプリを作り込んでいるのが弊社という形で、協力しあいながらやっています。
── 訪日外国人客の話が出ましたが、外国人も解析できるんですか?
丸尾 いまは日本人に特化しています。というのも、最初のバージョンは外国人を中心にデータを大量に流し込んだんですが、それだと日本人が正しく検出されないということが起きてしまったんですね。なので、バージョン2では日本人に限定しています。
── 集めた情報はどういう形で見られるんですか?
細井 ダッシュボードに時間単位で情報がまとめられます。各時間帯の人数をまとめているので混雑状況などがわかり、カメラの前によくあらわれる人の属性情報もわかるようになっています。サイネージ自体は「DiSiクラウド」というシステムで動いていて、スケジューラー機能がついています。
── サイネージ管理アプリもAndroidベースなんですか?
細井 そうですね。STBは1台で、アプリがそれぞれ別々に入っています。映像をプレイリストに入れ、何時から何時まで流すか決めるというもの。サイネージの稼働状況、登録したコンテンツ、スケジュール編成が表示しています。
── 他社との違いはどんなところなんでしょう?
細井 主な機能がすべて一画面で操作できて、直感的なことですね。コンテンツ登録画面、管理画面、プレイリスト画面などページが遷移していくと、「今どこにいるのかわからなくない」ということが起きてしまうという話をよく聞きます。サイネージが使われなくなる理由は「CMSが使いづらい」とか、引き継ぎのタイミングで「どう操作したらわからない」ということが圧倒的に多いので、一画面で基本的なことはすべてできるようにしようと。
細井 おかげさまで3万IDは出ています。ただ、普通にスケジュールどおりサイネージを配信するというだけのビジネスはもう枯れてきているので、AIに取り組んで属性に応じてコンテンツを出し分けたり、ビッグデータとしてマーケティングデータに活かしたりというところをやっている状況ですね。
── とはいえ、画像を解析してデモグラ(性別や年齢、居住地域などの情報)を判断して〜といったことは10数年前からサイネージ業界で言われていましたよね。そんなに使われなかったんですか?
細井 コロナ禍になって、AIカメラによってマスクをしているかどうかとか、体温を検知するといった話題があった。そこからAIを活用する流れが高まってきたと認識しています。
── おお〜、なるほど。
細井 喫煙所に行きたいけど、人がいたら密になる。それであらかじめ、どれくらい人が集まっているかを検知できるようにすると。同じようにショッピングモールのトイレで、「これくらい並んでいます」といったデジタルサイネージで見られたらいいよねといったニーズがコロナで普及したのかなと感じています。
── 海外でエレベーターホールにサイネージをつけたらケンカが減ったという話もありましたよ。
細井 (笑)エレベーターもサイネージとしては貴重なスペースですよね。
── T-HUBはまだ実証段階ですが、AIカメラではどんな効果が出るんですか?
細井 運用していただいているお客さんで一番効果的な使い方をされているのはホームセンターさんですね。メーカーごとの棚にカメラつきのサイネージをつけて広告を流すと、どんな人が見ていたかがわかるというものです。ホームセンターさんには会員カードがあるので、メーカーさんは、売り場で商品に興味を持った方と、実際に購入に至った方の属性の違いがわかるというものですね。
── おむつを買った人はビールも買う傾向があるという「おむつとビール」じゃないですが、そういうことがわかると。
谷口 T-HUBでも、どんな人たちが興味を持ってくれたのかというのは伝統工芸品の事業者さんにフィードバックしています。技術者の方とお話したところ、AIカメラを棚に設置すれば目線も追えるということだったので、そうしたところの応用ができたら、より商品を置く価値につなげていけるのかなと思っています。
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