「PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~」制作秘話を聞いた
広井王子さんインタビュー、eスポーツ青春映画の制作は広井さんにとっても青春だった
2024年03月08日 15時00分更新
しっかりと話をしたうえで、信じて任せる
──ここまでストーリーのお話を伺いましたが、キャストの皆さんはどうやって決まったんですか?
広井さんそこは、古賀さん(古賀俊輔さん、チーフプロデューサー)に担当していただきました。各芸能プロダクションも、台本がよくて誰が作っているかがちゃんとわからないと、(俳優さんを)出しますとOKを出さないんです。広井王子が何かやるといっても、動いてくれないわけですよ。
──え、広井さんがやられるってなったら、バリバリ動いてくれそうな気がしますけど。
広井さん:声優さんであれば、私はアニメもゲームも作ってきたので大丈夫なんですけど、やっぱり俳優さんとなると、難しいんです。そういう意味で、古賀さんが入ってくれたのはとても助かりました。あとは、やはり古厩さん(古厩智之さん、監督)が入ってくれたというのも大きかったですね。青春映画といえば古厩さんですから。事務所の信頼も厚かったです。
──企画・プロデュースの広井さん、プロデューサーの古賀さん、監督の古厩さんの黄金のトリオによって、本作が生まれたんですね。俳優さんが決まって、撮影が始まったあとの広井さんのお仕事はどのような内容だったんでしょうか?
広井さん:現場で制作が始まってしまえば僕は引いて、あとは古厩さんにお任せしました。それまでに古厩さんとは何度も打ち合わせをして、気持ちのすり合わせもできていたので。僕がプロットで青春も恋愛もって満載にしちゃったんですけど、現場の事情もあるので時間内に上手く成立させるために調整してくれて、それを丁寧に説明してくれていたので、そこはリスペクトを持ってお任せしていましたね。
──では現場での制作が始まる前のほうがやることが多かったんですね。
広井さん:一番重要視していたのは「全員と話して認識を合わせること」です。やっぱり認識がズレてくると怒る人もでてくるし、その分進行が遅れてしまう。やはりチームワークが大事で、全員の認識がちゃんとあっていたので、チームがすごく上手くいったんです。
──広井さんがまとめ上げたお陰で、スムーズに制作が進んで、多くのことがうまくいったというわけですね。
広井さん:みんな力を持っているわけだから、いちいち色々言わないほうがいいんですよね。しっかり話しをして僕の熱意も伝えているから、皆も熱を持った状態でやってくれるので、任せられる。
──任せて不安にならないというのも、すごいですね。さまざまな名作を手掛けられてきた広井さんだからこその押し引きみたいなのもあるのでしょうか。
広井さん:僕は結構巻き込まれ型なんだけど、信条があって、最初の言い出しっぺの人に寄り添っていこうと思っています。最初に何がやりたいのかを必ず細かく聞きますから。そこからそれをどうやって叶えるかを考えます。もちろん僕の色はでちゃいますけど、それでも何がやりたいかというのがズレないかはちゃんと話ながら進めます。
──尾崎社長ともお話をされていたんですか?
広井さん:そうですね。定期的にお会いして、進捗はしっかりとお伝えしていましたよ。信条としてもう1つは、絶対に中途半端では終わらせないということです。何としても実現、形にする。それが僕の役目だと思ってます。
──今までの作品でもその信念で完成させてこられたからこそ、今回もお声がかかったんですね。
広井さん:昔入交さんに、なんで僕なの? って聞いたことがあるんです。そしたら入交さんが「広井は船をちゃんと港につけるでしょ」って言ったんです。だから、僕の役割はそうなのかなって思ってます。
──船長がしっかりと港につけるから、皆さん信頼して船に乗るんでしょうね。
eスポーツは一番ピュアなスポーツ
ゲーム映像がわかりやすく映画に登場して驚いた
──広井さんは日本のeスポーツをどのようにご覧になってますか?
広井さん:eスポーツはシューティングゲームやアクションゲームが主体で、僕が作ってきたRPGはちょっと違うジャンルなんですけど、本気でゲームに取り組むことに、スポンサーがついて競技として戦うって、すごく面白いなと思っていました。男女関係なく、身体が不自由な方でも挑戦できるという点も、本当にピュアなスポーツだと思っています。
──そうなんですね!
広井さん:自分でアクションゲームをやるのは苦手だったけど、昔からゲームセンターとかで強い人のプレイを見るのがすごく好きだったんですよね。ゲームが上手い人のプレイみるのは本当に面白い。格闘ゲームとか見てると、どうやってだすのそれ? って。だからもともと全然抵抗なかったし、もっとやればいいのに、もっと盛り上がればいいのにって思ってましたね。だから僕は、観客としてはすごくいい観客だと思いますよ。
──本作も、いつもeスポーツを観戦している私が入り込んでしっかり楽しめたのは、そういった視点が含まれているかもしれませんね。
広井さん:そこは古厩さんの手腕もありますよ。僕は最初ゲーム画面を劇中に出すのは反対でしたから。
──そのお話しも東京ゲームショウのトークセッションのときにされていましたね。
広井さん:やっぱり、ゲーム画面を出すとわからない人がつまらないんじゃないかって、最初は思ったんです。でも、古厩さんのどうしても出したいという熱い思いと、ロケットリーグという、ルールがわかりやすいタイトルを採用したことで、とてもいい感じになりました。
──ロケットリーグは確かにわかりやすいですね。
広井さん:わかりやすいし、翔太に達郎が教えるシーンがあって、こっちは何気なく見てるんだけど、しっかりとゲーム画面を使ってその特徴やルールの説明になってるんですよ。これがあるおかげで、あとは単純に観戦を楽しめる。これは画期的でしたね。
──私は第1回から全国高校eスポーツ選手権に取材に行ってましたけど、劇場でも選手権を観戦している気分になりました。
広井さん:それはよかった。リアルに感じてもらえたってことですよね。実際に大会があるわけだから、そこに対してはしっかりとリスペクトしなきゃいけないというのは考えていたので。