ドコモとNEC、オープンRANを世界展開
そんななか、NTTドコモとNECは4月1日に海外のキャリアにネットワーク機器やソフトウェアを販売、運用や保守などを担う合弁会社を設立する。
NTTドコモはオープンRANの旗振り役として、2018年2月に世界の主要な通信事業者と「O-RANアライアンス」を設立。2020年3月には全国規模でオープンRANのサービスを開始している。
さらに2023年2月には「OREX」というブランドを立ち上げ、海外でオープンRANを導入仕様としている通信事業者に対し、導入を支援する取り組みを強化してきた。
OREXで扱う汎用機器には、NECや富士通、NTTデータといった日本企業だけでなく、インテルやHP、NVIDIA、クアルコム、レッドハット、デルに加えて、今回、AWSやarmなども参加している。いずれも、エリクソンやノキアが牛耳ってきた市場を獲りに来ているようだ。
NTTドコモとしては国内でのオープンRAN導入実績があり、さらにオープンRANの開発や検証など技術的なノウハウは持ち得ているものの、海外の通信事業者に対して、機器を販売、運用、保守といった体制は整っていない。
そこでNTTドコモがパートナーとして選んだのがNECだ。
導入コストは3割減、消費電力は5割減
NECはすでに国内外の通信事業者にオープンRANの導入実績があるだけでなく、これまで世界の様々な国や地域で、通信インフラ構築の実績がある。NECが海外に持つ拠点を活用することで、世界の通信事業者に対して、オープンRANに必要な機器の販売、運用、保守などを担っていく。
オープンRANは通信業界では数年前から注目されてきたが、コロナ禍があったことで、海外の通信事業者による投資マインドが一気に冷え込んでしまった。4Gから5Gへの移行に関しても「5Gネットワーク構築に対する設備投資がかさむ一方、5Gでマネタイズできる術がない」として5Gへの移行を急がなくなった通信事業者も多いという。
OREXが提供する仕組みでは、導入や稼働にかかるコストは3割減、消費電力も従来より5割減、ネットワーク設計稼働も5割減になるメリットを訴求する。
OREXに対して、昨年は世界の5つの通信事業者が「関心がある」と名乗りを上げたが、今年はカタール、シンガポール、フィリピンの通信事業者がフィールドトライアルを実施予定で、2024年度以降に商用化を目指す予定だ。
NTTドコモとNECの合弁会社の設立によって、世界的にオープンRANの導入を検討していく通信事業者が増えていきそうだ。

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