KDDIは15日、「通信品質向上の取り組みに関する記者説明会」と題する説明会を開催。5G専用の周波数によるエリアが、今年4月以降に大幅に拡大。高速・安定した通信を提供するとアピールした。
高速大容量のサブ6の5G基地局を積極展開してきたKDDI
今春に人工衛星との干渉が緩和され、本来の威力を発揮する
同社が、このような自信を見せる背景には、サブ6の5G専用周波数において、他社を大きく上回る基地局数を予定しているとともに、その制限が今年4月以降に解消され、本来の力が発揮される点がある。
サブ6の5G専用周波数(3.7GHz帯、4.5GHz帯)で、KDDIとNTTドコモは200MHzずつ割当を受けている(ソフトバンクと楽天モバイルは100MHzずつ)。このうち、KDDIは3.7GHz帯(より正確には3600MHz~4100MHz)に200MHzを持っており(ドコモは3.7GHz帯と4.5GHz帯に100MHzずつ)、割当時の開設計画の時点で約3万4000局と他社と比べて非常に多い基地局数を表明していた。
一方で、この3.7GHz帯はこれまでフルの性能を出せない状況が存在していた。具体的には、この周波数が衛星事業者(スカパー!)の人工衛星と地球局との通信に用いられており、それとの干渉を防ぐため、特に首都圏においては出力が抑制されてきた。今年4月以降に衛星事業者の協力によって、干渉問題が緩和されることで出力アップが可能に。高速なサブ6の5Gエリアが2倍に拡大される予定というわけだ。
これまでは4G転用周波数で5Gの面的エリアを拡大
パケ止まり発生率の低さをアピール
同社はまた「導入期」と位置づけている、これまでの5G展開における通信品質の管理についても紹介した。
5G専用周波数における出力に制限がある中、同社は面的な拡大や屋内への浸透で強みを持つ、4Gから転用した周波数で5Gエリアを拡大してきた。その際に課題になるのが、5Gと組み合わせる4Gのアンカーバンドの逼迫、また4Gと5Gのシステム間干渉だったという。
前者については、周波数ごとのトラフィック負荷分散の最適化を実施。特定のバンドに端末が集中しないようにした。後者は、同じ周波数に4Gと5Gのシステムが重なることでの干渉だが、こちらは電波の飛ばし方を最適化して干渉を減らした。
こうした努力の結果、パケ止まりの発生率が低いことを強調する自社調べの数字を提示。色からどのキャリアか推測できるグラフだが、5Gエリアの面展開で基本的に同じ方針を取ってきたKDDIとソフトバンクが低く、ドコモと楽天モバイルが高いことが見て取れた。
コミケなどのイベント対策にはStarklinkも活用
年内にも通信衛星と直接通信のサービスを開始予定
ここまでは日常的なエリア作りだが、“非日常”のエリア対策にも力を入れている。
まずはコミケや音楽ライブなどのイベントについては、Starlinkを組み合わせた車載型基地局、可搬型基地局を用意するなど、同社の設備やノウハウを結集。コミケの例では昨夏と昨冬の比較では約1.5倍の接続を実現。SNSでの投稿数でも、ポジティブの声がネガティブの声を大きく上回ったとする。
また、災害時での対策でもStarlinkを活用。能登半島地震では750台超のStarlinkを現地に投入し、現在に至るまで大量のデータを処理している。
今年はさらにSpaceX社との協力による、通信衛星とスマートフォンの直接通信によるサービスを年内にも開始を予定している。