「スモールスタート、ノーコードでDXの“手応え”を感じられる」など6つの特徴を紹介
セゾン情報、クラウド型データ連携基盤「HULFT Square」サービス開始
2023年02月09日 07時00分更新
セゾン情報システムズ(セゾン情報)は2023年2月9日、クラウド型データ連携プラットフォーム(iPaaS)の新サービス「HULFT Square(ハルフトスクエア)」の提供を開始した。税抜価格は月額24万円(Basicプラン)から。まずは国内向けにリリースし、今年下半期からは北米、欧州向けでもリリース予定。
8日に行われた記者発表会では、「スモールスタート」「ITフレンドリー」などHULFT Squareが掲げる6つの特徴を中心として、新サービスを提供する狙いやターゲットについて紹介された。
データ連携に必要な幅広い機能を備える一方、必要なものだけ選択できる
HULFT Squareは、セゾン情報が2019年11月の事業戦略説明会で開発意向表明を行い、2021年6月に具体的なサービス内容が発表されていたiPaaS。セゾン情報が今後事業拡大を図るデータプラットフォーム事業のなかでも中核製品と位置づけられており、同社にとってまさに「待望のリリース」(代表取締役社長の葉山誠氏)となっている。
HULFT Squareはデータ連携プラットフォームとして、クラウド上で「データ変換」および「データガバナンス」の多様な機能群を提供し、オンプレミス/クラウドにあるさまざまなデータソースと外部システムの間を柔軟につなぐ。データの取得(送受信/接続)から識別/可視化、統合(ETL)、公開(API公開、権限管理)まで、データ連携に必要な一連の連携機能群を備える。
外部とのファイル連携/データ連携が可能な「コネクター」を6種類、51コネクターを用意しており、XMLやCSV、Excelなどのファイル、Oracle DatabaseやSQL Serverなどの主要データベース、主要なクラウド基盤、SharePoint、ServiceNow、Snowflake、BoxなどのSaaSと容易に連携できるという。オンプレミスに配置した「HULFT 8」経由でのデータ連携も可能だ。
また、取得したデータの処理(ETLなど)ステップは、GUI上でアイコンをつなぎ、処理フローを描く(このフローを「スクリプト」と呼ぶ)だけのノーコード開発となっている。誰でも簡単にデータ処理フローを開発でき、内製化も促す。
セゾン情報では今後、HULFT Squareを四半期ごとにバージョンアップして機能を拡充していく。
HULFT Squareは、3種類の基本プランと利用目的に応じたアドオン(コネクターを含む)で構成され、利用料金はそれらの合計額となる。月単位あるいは年単位での契約が可能。
基本プランは、スモールスタート向けの「Basicプラン」(月額24万円)、企業内/複数部門のデータ連携基盤向け「Standardプラン」(価格は要問い合わせ)、基幹システム連携や大規模データ移行に対応する「Enterpriseプラン」(同)の3種類。それぞれvCPU数とメモリ容量、月間最大データ転送量、管理できるAPI個数が異なるほか、上位プランではオンプレミスとの閉域網接続にも標準で対応する。なおvCPUやメモリ、転送量といったリソースや追加機能、夜間/休日サポートなどは、必要に応じてどのプランでもアドオン(追加購入)することが可能だ。
また、コネクターのうちファイル、ネットワーク、データベース(JDBC)、イベント通知コネクターの各コネクターは標準機能として全プランに含まれる。その他のデータベース、クラウド、SaaSコネクターについては、数カ月の一定期間(基本プランにより異なる)ののち有償となる。
なおHULFT Squareは、Amazon Web Services(AWS)のクラウドプラットフォームを使って提供される。まず国内提供開始にあたってはAWSの日本国内リージョンで展開をスタートし、今年下半期に予定されている北米/欧州への展開拡大時には、それぞれの地域のリージョンにも拡大する計画。同サービスはGDPR、CPRAなどに準拠している。
まずはユーザ企業が「“手応え”を感じることが大切」
同社 取締役 事業推進管掌 兼 上席執行役員 DIビジネス統括の石田誠司氏は、HULFT Squareには大きく「6つの特徴」があると紹介した。中でも、特に強調した特徴が「スモールスタート」と「ITフレンドリー」だ。
「スモールスタート」という特徴については、まずは部門内のSaaS連携など小さなユースケースから導入しやすいコストでスタートし、徐々に社内全体のデータ連携基盤へと拡張していけると説明した。石田氏は特に、まずスモールスタートしてユーザー企業が「手応えを感じる」ことが大切だと強調する。
「とかくDXだ、デジタル人材だ、アプリケーションとシステムのデータを全部統合するんだ――などと考えてしまうが、それは“振りかぶりすぎ”。HULFT Squareならば、1日2日で『DXってこんなものなんだ』『データを突合したらこんな分析ができるんだ』という手応えを感じるスモールスタートができる。そして、こなれてきたらそこからどんどんスケールアップできるスケール性も持っている」(石田氏)
もう1つの「ITフレンドリー」については、IT担当者の業務負担を軽減できるという特徴だ。具体的には、前述したノーコードでのデータ処理フロー開発のほか、Amazon EKS(Elastic Kubernetes Service)ベースのアーキテクチャでデータ処理量の急増に追従できる。また、SaaS間連携を容易に実現できるAPIマネジメント機能も備える。さらには複数のワークスペース(インスタンス)を立ち上げて、重要な処理基盤だけを隔離したり、ユーザー部門に処理基盤を割り当てて社内のデータ活用を促すこともできる。
なお石田氏は、セゾン情報ではシステム構築やコンサルティングのメニューも取りそろえており、「ワンストップでDXを支援できる」と紹介した。その中でも「コンセプトデザインサービス」は、スタートから3カ月~半年程度でセゾン情報がプロトタイプを作成し、ユーザー企業に「手応え」を感じてもらうとともに、内製化への自信も付けてもらい「ひとっ飛びで(短期間で)DXまで行く」(石田氏)サービスだという。すでに200社ほどの実績があり、その知見を生かせることもポイントだと述べた。
サプライチェーン全体のCO2排出量把握などでも活用を期待
同社 社長の葉山氏は、想定されるHULFT Squareの活用シーンのひとつとして、サプライチェーン全体における「温室効果ガス(GHG)排出量の把握」を挙げた。
近年では、脱炭素社会に向けたアクションがあらゆる企業に対して強く求められており、たとえば東証プライム上場企業は2022年度からTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った情報開示が求められている。さらに2023年の内閣府令改正では、有価証券報告書を提出する企業でGHG排出量の積極的な開示を求めている。
ここで、サプライチェーンの上流/下流も含めたスコープ3のGHG排出量を正確に算出することは難題だ。スコープ1、2の数字は自社内のデータから算出できるが、スコープ3まで正確に算出するためには、他社のデータやオープンデータも取り込む必要がある。
「今後(スコープ3まで)正確に算出していくとなると、各社間のデータ連携が必要になる。そこでHULFT Squareを使えば、クラウドサービスとしていろいろな会社のデータを『つなぐ』ことが可能になる。現在はまだ、HULFT Squareでそれ(GHG排出量の算出)特有のサービスを載せているわけではないが、今後、お客様のニーズに応じてそうしたサービスを搭載していくことも考えている」(葉山氏)