共創のきっかけづくりはできても、伴走まではできなかった
RICOH BIL TOKYOには、いくつかのポイントがある。
ひとつめは、冒頭に触れたように、実装までのプロセスに伴走し、支援する拠点に進化した点だ。
2018年から設置していたRICOH BIL TOKYOでは、5年3カ月の間に、860社が利用した実績がある。しかし、そのうち、リコーのデジタルサービスによって解決できた課題は56%に留まり、残りの44%は既存のデジタルサービスの範囲では解決が困難であったという結果が出ている。
10件に4件以上の課題解決が困難だったという結果だけを捉えると、リコーが取り揃えたソリューションによるDX推進には、限界があると感じざるを得ない。言い換えれば、100以上の顧客価値シナリオや、様々な業種業務ノウハウを活用したスクラムパッケージおよびスクラムアセット、サイボウズとの戦略的提携によって実現したクラウド型業務改善プラットフォーム「RICOH kintone plus」を取り揃えていても、4割以上の課題が解決できていないとも受け取れる。
だが、この44%の数字を精査してみると、そこには大きな理由がある。
ひとつは、従来のRICOH BIL TOKYOでは、わずか16坪(約53平方メートル)の部屋がひとつ用意されていただけであり、共創のきっかけづくりはできても、伴走するところまでは力不足だったことだ。
また、持ち込まれる課題の多くが、業務プロセス全体に及んでいたり、複数のソリューションを組み合わせた提案が必要であったりするにも関わらず、それを提案できる環境が整っていなかった点も課題といえた。
新たなRICOH BIL TOKYOは、1000平方メートルというフロア面積を誇り、共創のために必要なファシリティを準備。実装までの共創プロセス全体を網羅し、伴走するところまでをカバーする。ここでは、生成AIを活用することで、より身近にリコーの技術やソリューションを業務に組み込むことにも取り組む。44%という数字を引き下げることができる施設になるというわけだ。
ちなみに、RICOH BIL TOKYOの新たなロゴでは、山のようなデザインを採用したり、施設内の名称にも登山に関する名称を使用したりしているが、これは、ビジョンに共感する人とともにパーティーを組み、未踏の山の頂を目指し、これまでの経験から道筋をつけたり、新たなルートを開拓し、その結果、到達した山頂から目の前に開けた景色を見て、さらに、次の登山につなげるというサイクルを表現したものだ。最後まで顧客に伴走するという姿勢がここからも伝わってくる。
リコーの菊地室長は、「これまでは、価値創出につながらなかったり、PoC止まりに終わってしまったりというものがあった。また、リコーが提供するピンポイントソリューションだけでは解決に至らないものもあった。RICOH BIL TOKYOでは、お客様との共創の場であるとともに、パートナー企業とも共創することで、課題解決の幅を広げたい。これまでには解決が困難だった課題にも対応できる」と自信をみせる。
RICOH BIL TOKYOでは、年間360社の来場を見込み、新たな価値創造と社会実装の実績として2028年度までに100件の成果を目指すことになる。
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