“攻め”の生成AI活用をする企業ほど“守り”のAIガバナンスに注目
PwC、AIガバナンスの道筋を示す政府「AI事業者ガイドライン案」を解説
2024年02月05日 10時00分更新
PwC Japanグループは、2024年1月31日、「AI事業者ガイドライン案」をテーマとしたメディアセミナーを開催した。
2023年12月21日、日本政府のAI戦略会議は「AI事業者ガイドライン案」を公表。本ガイドラインは、法的拘束力なしで自主的な対応を求めるソフトローという位置づけとなり、本ガイドライン案を参考に、生成AIを含むAIの事業活動に、AIガバナンスを取り込むことが求められる。
本セミナーではPwCにより、最新の生成AIの実態調査から、AI事業者ガイドライン案の詳細や活用のポイント、海外の規制動向を踏まえた日本企業がとるべき対応について解説された。
生成AI実態調査 ― 生成AI活用が急速に進む中、攻めのAI活用を推進する企業ほどAIガバナンスにも注目
最初に、PwCコンサルティングが実施した生成AIに関する実態の結果について、同社でデータアナリティクスチームの責任者を務める藤川琢哉氏より説明された。
本調査は、売上高500億以上の国内企業のAI導入に関与がある課長職以上を対象に、2023年10月に実施。2023年の春に実施した調査と比較して、生成AI活用の現状を分析している。
まず生成AIの認知度について、春の段階では生成AIを使用したことがあるという回答が10%しかいなかったのに対して、秋の調査では73%と大幅に増加。生成AIを全く知らないという回答はわずか4%だった。「生成AIの民主化が進んできた」と藤川氏。
実際の生成AIの活用も大幅に進展しており、春の段階では共にゼロであった、社外向けの生成AIサービスを提供しているという回答は12%、社内業務等で生成AIを活用しているという回答は22%となった。検討中という回答も含めると、実に87%が生成AIを活用もしくは推進している状況だ。
一方で生成AI活用における脅威という観点では、春の段階では“ビジネスの存在意義が失われる”という漠然とした脅威を感じている回答者が41%と一番多かったが、秋の調査では“他社(者)により相対的に劣勢にさらされる”という脅威を感じているのが47%と、傾向が変わってきている。
脅威の理由をみてみると、“競合他社に先を越される可能性”、“デジタルディスラプター(既存ビジネスを破壊するプレイヤー)が参入する可能性”を懸念する回答が多く、今ではこれらの脅威が、生成AI活用検討の動機になっていると藤川氏は分析する。
生成AI活用の予算規模に関しては、数十億円以上から百万円未満までばらつきがあるものの、24%が数億円以上の予算規模であり、改めて生成AIに対する期待が伺える。
そして、2024年9月までに生成AIの本格導入を予定しているという回答は、半数を超える58%となり(導入済みも含む)、生成AI活用は今後さらに加速していくとみられる。
最後に生成AI活用のリスクへの配慮について、予算規模を数億円以上とした回答者のほうが、リスクに対する注目度も高いという結果に。「“攻め”の生成AI活用をしている企業ほど、“守り”としてのAIガバナンスにも力をいれている」と藤川氏。
このAIガバナンスは、生成AIを活用する企業にとって重要なテーマになってきており、AIのリスクに対して日本を含む各国が政策や法規制を検討している最中だ。OECDの調査によると、これまで69か国で、100を超えるAIに関する戦略もしくは規制が生まれているという。
「こういった規制をにらみながら、AIガバナンスを推進していくことは企業にとって非常に難しいポイント。国によって規制の内容がバラバラなことが、対応の難しさを増している」(藤川氏)。
例えば、日本、アメリカ、EU、中国のAI規制をみてみると、日本とアメリカは、ガイドラインベースで自主的な対応を求める「ソフトロー型」なのに対して、EUと中国は、法律によって縛り付ける「ハードロー型」をとっている。多くの企業はグローバルでビジネスを展開しているため、日本の規制を基準として海外でAI利活用を推進した場合には、規制対応が後手に回り、高額な制裁金が科される恐れもあるという。