本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「最新マイコンボード「Arduino UNO R4」の基礎からIoT向け通信を学ぶ ― IoT-Tech Meetup レポート」を再編集したものです。
目次
IoT-Tech Meetupとは?【セッション1】IoT におけるMCUの役割とクラウドとの関係
【セッション2・3】Arduino UNO R4 解説と Arduino Cloud
【セッション4】LTE-M Shield for Arduino は Arduino UNO R4 Minima で使うには?
Q&A セッション
次回のIoT-Tech Meetupは2/7(水)「屋外でのIoT実装」
こんにちは、ソラコムの松下(ニックネーム: Max)です。
電子工作の定番マイコンボード「Arduino UNO」の最新版 “R4” が2023年に登場しました。強化されたMCU(Micro Controller Unit)やWi-Fi搭載モデルなど、IoTデバイスの試作としても利用できます。
1/16に開催したIoTの勉強会「IoT-Tech Meetup」では、Arduino UNO R4の全体像やR3からのアップデート解説、そして通信を用いたクラウド連携を紹介しました。その様子をお届けします。
IoT-Tech Meetupとは?
「IoT-Tech Meetup」は、ソラコムが持つIoTや周辺技術の知見を、主にエンジニアの方に共有する事を目的としてシリーズ開催する無料のオンライン勉強会です。プレゼンテーションの他にQAもあり、学びを深めていきます。
テーマは多岐に渡っており、Raspberry Pi(ラズパイ)やM5Stack、クラウド型カメラといったハードウェアから、サーバーレスIoTやAIといったクラウド・ソフトウェア、そしてMatter等のIoT向け規格、法規やオープンソースライセンスといったあらゆる面で、IoTを活用するエンジニアの方に役立つ内容を企画・定期開催しています。
【セッション1】IoT におけるMCUの役割とクラウドとの関係
冒頭は私(Max)より、いつもお送りしている「IoTの全体像の振り返り」の紹介と、Arduino UNO をはじめとしたマイコンボードやMCUの役割を解説しました。
遠く離れた現場をデジタル化し、そのデータを用いてカイゼンやビジネスにつなげるのがIoTです。センサーやカメラ、そしてクラウドと通信するためのWi-Fiモジュールやモデムといったハードウェアに注目が集まりますが、実はそれらを制御しているのがMCUです。
MCU は、 I/Oポートを通じてセンサーのデータを読み込んだり、通信モデムを操作してクラウドへデータを送信します。
MCU は、多くの種類が存在します。そこでセッション後半では、MCU 仕様の読み解き方を紹介しました。IoTにおいては、特にセンサーとモデムが重要なため、I/Oポートの物理的な形状やサポートしている信号に注目したいことを解説しました。
資料はこちらです。
【セッション2・3】Arduino UNO R4 解説と Arduino Cloud
Arduino UNO R4 は、ルネサスエレクトロニクス社のMCU「Renesas RA4M1」が採用されています。そこでセッション2と3には、ルネサスエレクトロニクス株式会社の岡宮氏をゲストにお迎えして Arduino UNO R4 と、データ活用 SaaS「Arduino Cloud」についてお伺いしました。
セッション2では Arduino UNO R4 の基礎や、これまでの歴史と前モデルの R3 からのアップデートポイントを解説いただきました。前半の資料は非公開ですが、サマリーを紹介します。
- 2005年にスタートしたArduinoプロジェクトは、2010年のArduino UNOの登場で一躍有名になり、2013年には70万台を超える規模に。昨今では機器の制御に使える PLC モデル (Arduino Opta) など、プロユース向け製品も投入している。
- Arduino UNO R4 は、2023年の新製品。前モデルの R3 の形状を引き継ぎつつ MCU を強化。R3 と比較して、メモリーはFlash(プログラム格納用メモリ)が8倍、SRAM(プログラム実行時の変数格納用メモリ)が16倍に増量。クロック(動作速度)は3倍に。これまで以上の事が可能となる。
- R3 向けの “シールド” と呼ばれる拡張ボード等のエコシステムのほとんどが流用可能。加えて、Wi-Fi モデルも用意されている。Wi-Fi モデルは技適取得済み。
後半のセッション3では、Arduino Project が提供しているデータ活用 SaaS「Arduino Cloud」の解説をいただきました。
Arduino Cloud は Arduino シリーズに対する SaaS サービスで、データの可視化やリモート制御ができます。セッションでは、スマホを Arduino Cloud 対応させるアプリから、Arduino Cloud を経由して Arduino UNO R4 の LED を遠隔制御する一連の流れを紹介しています。
Arduino Cloud は無料で始められますが、有料プランもあります。有料の機能にはOTA(Over the Air; 通信経由でのファームウェア書き換え)やTriggers(アラート通知サービス; メール通信などが可能), API があり、遠隔での制御や大量デバイスの管理といったビジネスでも使える事をお話しいただきました。
プラン別の機能比較も資料内にあります。詳細は資料をご覧ください。
【セッション4】LTE-M Shield for Arduino は Arduino UNO R4 Minima で使うには?
最後のセッションでは、ソラコムのソリューションアーキテクト 服部(ニックネーム: Masa)より、Arduino 向け LTE-M シールド(拡張ボード)「LTE-M Shield for Arduino」と Arduino UNO R4 の組み合わせについて解説しました。
まずはLTE-M自体の紹介です。LTE-Mは、私たちが普段スマートフォン等で利用している「LTE(4Gとも言われる)」と同じカテゴリーの通信技術です。そのうち、省電力に特化した通信技術の1つが「LTE-M」です。
LTE-M Shield for Arduino(以下、LTE-M Shield) には LTE-M モデムが搭載されており、Arduino UNO に LTE-M 通信の機能を付加することができます。LTE-M Shield は Arduino UNO R3 向けですが、同じサイズの R4 で動作できるかをチェックしてみました。
ルネサスエレクトロニクス様にも協力をいただき、様々な調査を行った結果、シールド(拡張ボード)の物理的な形状やピンは R3 と同一だが、そのピンで使える機能の有無が R3 と R4 で異なるケース※があり「ほとんどのシールドが流用可能」と紹介はしていましたが、完全互換では無い事を共有しました。Arduino UNO R4 Shield Compatibility でも、その様子が確認できます。
※具体的には、LTE-M Shield を利用する際に使う SoftwareSerial.h(ソフトウェアによるシリアル通信実装)には、MCU側の IRQ(割り込み)が必要ですが、LTE-M Shield が使うピンには IRQ が未割当なのが要因です。Arduino UNO R4 のピンとMCU(RA4M1)の機能割り当て状況は、 RA4M1 のページの「RA4M1 グループ データシート」で確認できます。
資料はこちらで公開しています。
Q&A セッション
Q. Arduino IDE 以外に開発で使えるエディタはありますか?
A. 手軽さであれば Web 上のエディタ「Arduino Cloud」があります。一方で、サードパーティーライブラリの利用やコードの規模が大きくなりそうであれば、PlatformIO の利用もおススメです。PlatformIO は、Microsoftの無料エディタ「Visual Studio Code」用の組み込み向け開発環境で、Arduino UNO R4 もサポートしています。PlatformIO の導入については「Visual Studio Code のプロファイル機能で、独立した PlatformIO による Arduino UNO R4 開発環境を作る」というブログにまとめましたので、こちらも併せてごらんください。
Q. R4 の GPIO の定格電流はどのくらいですか?センサー等へ供給する電流が不足する場合がありますか?
A.各ピン毎で最大8mAです。R3 より少ない(R3は20mA)ため、接続機器の必要電流は確認をしてください。
Q. Arduino Cloud の「Enterprise Based Plan」商用利用の事例はありますか?
A. Arduino Cloud 自体のユースケース(どのように使えるか)は、Arduino Cloud / Use cases で確認いただけます。2024年1月現在では具体的な事例は確認できませんでしたが、最新事例が掲載されている可能性があるため、逐一チェックいただくことをおススメします。
Q. R4 へプログラムを書いた際に、稀に無反応(USB-CでPCと接続しても、Serialポートも認識せず、書き込みもできない状態)になることがありました。Bootloaderの書き込みを行うことで回復自体はできたのですが、無反応(のように見える状況)でもMCUの状態を確認する、もしくはデバッグする方法はありますか?
A. まず、お手間をかけており恐縮です。書き込みスケッチ(プログラム)の内容によって状況が異なるというのが現状です。公開いただける範囲で Arduino Forum で相談いただくのが近道となります。英語ではありますが、翻訳サービスを利用いただければコミュニケーションは可能だと考えています。
Q. (Arduino UNO R4 ではなく) RA4M1 をチップ単体で調達できる方法はありますか?
A. ルネサスエレクトロニクス社からの直接購買の他、ディストリビューターからのご購入が可能です。ディストリビューターの一覧は、RA4M1 の「製品選択」から進み、カートボタンの先で確認いただけます。
Q. WiFiモデルの技適取得はいつごろになりますか?
A. Wi-Fi モデルの「Arduino UNO R4 WiFi」は2023年10月から日本国内での販売を開始しています。技適マークは箱についているため、箱を紛失しないようご注意ください。
次回のIoT-Tech Meetupは2/7(水)「屋外でのIoT実装」
次回の IoT-Tech Meetup は「屋外でのIoT実装」です。
IoT による現場のデジタル化は、屋外にも広がっています。この回では、ゲストをお呼びして屋外でのIoT運用に特有の問題の整理と、今使える実践的な知識とスキルの共有を行っていきます!
すでにお申し込みページはオープンしています。お気軽にご参加ください。
オンラインでお会いしましょう!
― ソラコム松下 (Max)
投稿 最新マイコンボード「Arduino UNO R4」の基礎からIoT向け通信を学ぶ ― IoT-Tech Meetup レポート は SORACOM公式ブログ に最初に表示されました。
この連載の記事
-
第484回
デジタル
AWS re:Invent 2024に見る、IoTの成熟と生成AIとの融合 -
第483回
デジタル
二歳半の子供を持つエンジニアの一日の働き方 -
第482回
デジタル
VPN 対応の産業用 LTE ルーターの価格改定【30%オフ】 -
第481回
デジタル
時間帯に応じたメール通知の構築方法 : SORACOM LTE-M Button と SORACOM Flux の活用 -
第480回
デジタル
SORACOM Flux 料金プランを発表しました -
第479回
デジタル
12/11-13 商業施設・店舗DX展に出展:最新IoTソリューションや事例をご紹介 -
第478回
デジタル
コープさっぽろが、クラウド型カメラ「ソラカメ」を全店舗で導入、現場主導の改善を実現、サーバールームの異常な温度上昇を通知する新規掲載レシピ takuyaのほぼ週刊ソラコム 11/16-11/29 -
第476回
デジタル
WebRTCとMedia over QUIC Transportの性能比較 -
第475回
デジタル
SORACOM Lagoon 3 の [Math] 機能で、複数データを組み合わせた通知の手順 -
第474回
デジタル
SORACOM Flux の AI アクションに Amazon Bedrock – Anthropic Claude 3.5 Haiku を追加、Teltonika RUT240 の価格を改訂 takuyaのほぼ週刊ソラコム 11/02-11/15