このところ、あちこちで関連記事やイベントの告知などを見かけるように、Macintoshというパーソナルコンピューターが発売されてから、この1月24日でちょうど40年となる。振り返ってみると、あっという間のことだったようにも感じられる半面、その間には実にいろいろなことがあったと感慨深く思い出されるのも確かだ。
現在、単純に市場にあるパソコンのシェアとして見てみれば、Macが特に大きな領域を占めているわけでもなく、世の中に対してさほどの影響力を持っているようには感じられないかもしれない。しかし冷静に考えてみれば、今の世の中に出回っているパソコンはもちろん、一般ユーザー向けの電子機器でも、Macの影響をまったく受けていないと言い切れるものは、実はほとんどないと言ってもいいのではないか。名前はMacintoshからMacに変わったものの、1つの系統の製品が、はっきりそれとわかる確かな痕跡を歴史に刻んできたことは間違いない。
本稿では、特にMacintoshの登場前とその後で、パーソナルコンピューターというものがどのように変わったのかということについて、世の中への影響も踏まえつつ考えてみることにしよう。
大企業の研究室から一般家庭のリビングルームへ
1984年に登場したMacintoshは、小さな画面ながら完全なビットマップディスプレイを採用し、画期的なGUI(Graphical User Interface)を実現したパソコンだった。また、画面に表示した文字や画像を、ほとんどそのままのイメージで紙の上に印刷できる、いわゆるWYSIWYG(What You See Is What You Get)を実現していたことも忘れてはならない。
このようなMacに特徴的な機能を最初に実現したのが、もしMacそのものだったのであれば話は単純だ。
しかし、残念ながら実際はそうではない。こうしたものをMacが初めて実現したかのように書くと、いや本格的なGUIを採用したパソコンはLisaが最初だとか、それより前にXeroxのAltoやStarといったワークステーションがあったからこそ、アップルがそれらをパソコンで実現できたのだ、といった反論が聞こえてくるのは必至だろう。いやいやそもそもGUIに不可欠なマウスを発明したのは、スタンフォード研究所のエンゲルバートだし、GUIを最初に実現したのはサザランドの作ったSketchpadだろうといった話までさかのぼりたくなる人もいるかもしれない。さらにはGUIの元祖はアメリカ空軍の防空管制システムにあるという話も出てきそうで、とりとめがなくなってしまう。
ここで取り上げたいのは、そのような研究レベルものや一般のユーザーには手の届かない、企業ユーザーを対象にした高額なシステムの話ではない。家電品としては高価な部類に入るとしても、自動車ほどの金額を積まなくても入手できる範囲のパーソナルコンピューターに限った話だ。
そして、そうした歴史に名を残すような研究室や実験室の中でのみ実現されていたもの、高額で大規模なシステムでのみ可能だったことを、誰もが一般家庭のダイニングテーブルの上でできるようにしたことこそ、Macの最大の功績だったと言えるのではないだろうか。