PCゲーム文化と若者の就職難がブーム後押し
なぜ中国でこれだけStable Diffusionが流行することになったのか。
背景のひとつにはPCゲームユーザーが元々多いことが考えられます。中国はスマホゲームも強いですが、PCゲームカルチャーがとても強いんですね。そこそこお金を持っていて、そこそこのビデオカードが乗っているゲーミングPCを持っている人も少なくありません。そのユーザー層がStable Diffusionを面白がって使いはじめたということがあるようです。
もうひとつは過去最悪の就職率です。中国では大学生が卒業後も就職できないことが大問題になっていて、就職率は5割以下だと言われています。そうして就職できずに家にいる人々が、就職につながるスキル習得に期待を持ってStable Diffusionを使っているのではないでしょうか。
実際、Bilibiliはユーザーの年齢層が若いのが特徴です。18〜35歳のユーザーが78%を占めており、そうした若い世代が画像生成AIに興味を示しているという格好になっています。
中国が推し進めてきたAI政策も背景に
さらにマクロな話として見えてくるのは、中国のAI政策です。
すでに中国でのAIの競争力は世界的に見ても、米国に次ぐ高い水準に達しています。投資を受けた企業の数でも、アメリカには及ばないまでも、2022年には世界第2位の地位を獲得しています。
ここに至った背景としては、2015年に示された「中国製造2025」で、技術的な重点政策としてアメリカに追いつくと宣言したことが大きかったようです。実際、現在では特許取得件数はアメリカを抜くほどになりました。
さらに、中国の基礎的な力を引き上げるため、中国から大量に出ていっていた留学生を中国に呼び戻し、自国で働けるよう環境を整備しています。これにより、2016年までに約2500人ものトップレベルの海外研究者の帰国招致に成功。様々な研究機関の土台を築きました。
国別の国際特許数。2016年から2021年までの推移を見ると中国がトップに
(特許庁「国内外の出願・登録状況と 審査・審判の現状」より)
2017年に策定された「次世代AI発展計画」では、国家戦略としてAIを推進しています。2020年には関連経済規模も含め1兆元(約19兆円)を目指すという大規模な計画になりました。
当時、AIについての教育も推し進める戦略が始まったようで、あらゆる社会レベルでAIにふれることが目標とされ、学校によっては「AIルーム(教室)」というものさえつくられていたと言います。
「次世代AI発展計画」では、2030年に世界一となることを目標に掲げている(2018年の記事 JETRO 「官民一体でAIに賭ける中国」より)
こうしてアメリカの大学などとの太いパイプができあがっていき、現在につながってきたと考えられます。

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