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不動産業界における生成AI活用の現状は?

不適切画像の自動処理、間取りからの特徴抽出 ― アットホームが進める不動産データのAI活用

2023年12月04日 07時00分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 アットホームは、2023年11月30日、不動産業界における生成AIの活用に関するプレスセミナーを開催した。

 同社は、2023年12月で創業56周年を迎える、不動産情報サービスを手掛ける企業だ。不動産会社間の情報流通や消費者向けの不動産情報、不動産会社向け業務支援のサービスを通じて、スムーズな不動産取引や、消費者の物件探しの利便性向上を推進している。

 アットホームのデータやテクノロジーの活用を支えるのが、2019年にアットホーム内のデータ分析部門から独立した、アットホームラボだ。アットホーム内に蓄積された、物件情報やそれに紐づく情報、不動産会社の情報や消費者の行動履歴・問い合わせといった不動産に特化したデータの処理・分析・活用を担う。

 これらのデータはAI活用において重要度を増し、同社では、大規模データを利用してAIモデルを開発、自社サービスへの反映や業務効率化を進めている。

不動産業界の生成AI活用は「まだまだこれから」

 では、現状の不動産業界での生成AIの活用状況はどうだろうか。アットホームの2023年7月から9月に実施した調査結果によると、ChatGPTなどの生成AIを利用している企業は約1割にとどまる。

 「現状、テキスト生成AIが中心で、まだまだ利用が少ないと感じている。他の企業全体のAI利用調査も同程度で、不動産業界だから多い少ないというわけではなく、社会全体で生成AIの活用はこれからだという印象」と、アットホームラボの代表取締役社長である大武義隆氏は説明する。

アットホームラボ 代表取締役社長 大武義隆氏

 調査における、不動産会社の生成AI活用例としては、メールやセミナー案内などの文章作成や、物件紹介のキャッチコピー作成、入居者向けの通知の翻訳などが挙げられた。実際に、センチュリー21・ジャパンでは、同社のIT支援システム「21Cloud」において、ChatGPTを利用して物件情報のセールスコメントを自動生成する「AI コメント君」を提供している。

不動産業界における生成AIの利用状況、利用企業は約1割にとどまる。

物件登録を効率化する画像解析を基にしたアットホームのAI活用

 プレスセミナーでは、アットホームが実際にサービスとして展開するAIの活用事例として、画像解析による不適切画像の検知や種別判定・特徴抽出などの技術が紹介された。

 不適切画像の検知は、物件の画像に映りこむ、人の顔や車のナンバーなどをAIが検知して、自動でモザイク処理をかける技術だ。同社はポータルサイトの運営元として、登録された画像がチェックする必要があり、アップされる画像は月間1200万件を超える。その中で、不適切な画像は約20万件にものぼり、その分の処理作業がAIにより自動化される。

AIによる不適切画像の検知からモザイク処理

実際に人の顔や車のナンバーをモザイク処理するデモ

 画像の種別判定・特徴抽出は、不動産情報としての分類や特徴を、AIが画像から判別する技術だ。外観やリビング、キッチンといった種別別けを自動でするだけではなく、間取り図から物件の特徴を抽出することもできる。デモでは、間取りの画像を読み込むと、各設備における窓の有無であったり、部屋と設備との距離、キッチンや収納などの広さなど、物件選びの参考になるような項目が自動でタグ付けされる様子が披露された。

AIによる不動産情報としての画像の種別判定・特徴抽出

間取りの画像から、物件の特徴が自動でタグ付け

 物件情報の登録時に、AIが画像を解析してキャプションを自動生成する機能のデモでは、キッチン画像では3口コンロを、トイレ画像では手すりを認識して、対応するアピール文をキャプションに記載する様子が披露された。アットホームでは、現在40点までの画像を登録することができ、それぞれでキャプションをつけていた作業がAIで自動化される。

AIの画像解析によるキャプションの自動生成

 また、アットホームも物件情報からのPRコメントの自動生成機能を展開している。物件情報を、同社の統計データベースの周辺物件と比較。比較情報をもとに、AIが先進性や空間、フットワーク、利便性、快適性、セキュリティの各領域におけるアピールコメントを自動生成する。

 今後、画像を基にPRコメントを自動生成する技術を生成AIで展開できるよう現在研究中とのことだ。

 もうひとつ同社が研究を進めているのが、何もない部屋の画像からインテリアを配置した画像を生成するAIホームステージングの技術だ。ホームステージング自体は、リアルの家具やCGで画像を作るサービスもあるが、コストと時間がかかるという。それを生成AIで解決できれば、ひとりひとりの好みを反映したホームステージングが実現できる。

AIホームステージング

 現在、同社が研究を進める生成AIのモデルは、画像生成ではStable Diffusion、画像解析では複数のモデルを組み合わせている。ChatGPTのテキスト生成は、社内利用を中心に展開する。ルールベースの仕組みを生成AIに切り替えたり、AIの学習データを生成AIに任せたりすることで、コスト圧縮を図る取り組みも進めているという。

 最後に大武氏は、「AIが、物件の魅力とユーザーの潜在ニーズを引き出すことにより、今までにないパーソナル化されたマッチングが実現できる。今後住まい探しは、検索して物件を見つけることから、自分に合った物件の提案を受けるという体験に変わるのではないか」と今後の展望を語った。

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