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プラットフォーム指向と現場主導で進めるグループのDX

富士フイルムHDがDXの取り組みを公開 ― 新規半導体材料発見など成果も

2023年12月01日 11時30分更新

文● 大河原克行 編集● 福澤/TECH.ASCII.jp

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 富士フイルムホールディングスは、2023年11月28日、グループのDX戦略とDXの取り組み事例に関する記者説明会を開催した。これまで同社が打ち出してきた「DXビジョン」「DX基盤」に加えて、新たに「DXの行動規範」を定めたことを明らかにした。

 同社はかつて、急速なデジタル化によって、本業のイメージング事業損失の危機を経験。フィルムカメラが全盛だった1988年に、デジタルカメラを世界で初めて開発してデジタル化の先頭を切り、2000年以降には、事業構造を転換して収益構造を大きく変化させた。売上高の約6割、営業利益の約3分の2をイメージング事業が占めていた構造から大きく転換し、現在では売上構成の32%をヘルスケアが占める。

富士フイルムホールディングスの事業ポートフォリオの変化

 富士フイルムホールディングスの執行役員 CDO兼ICT戦略部長である杉本征剛氏は、「富士フイルムは、DXという言葉が認知される以前から、デジタル化の進展による急激な社会変化に向き合ってきた経験がある」と語る。

富士フイルムホールディングス 執行役員 CDO兼ICT戦略部長 杉本征剛氏

プラットフォーム指向と現場主導で進めるグループのDX

 富士フイルムホールディングスのDXの取り組みには、2つの特徴があるという。

 ひとつめは、基本姿勢が「プラットフォーム指向」であるという点だ。DXの推進にあわせて、特定用途向けの機能を垂直統合する「コンポーネント型開発」から脱却し、共通機能を柔軟に組み合わせて、多様な用途を実現する「プラットフォーム型開発」へと変革した。

 プラットフォーム指向のきっかけは、2000年に実施した画像処理技術の共通プラットフォーム化だ。当時は、イメージングや医療、グラフィックス、オフィス事業が、それぞれ個別開発した画像処理技術を抱えていたが、急速なデジタル化の進展を捉え、プラットフォーム指向へと一気に舵を切った。

 「労働集約的な画像処理ソフトウェアを、個別に抱える環境のままでは、他社に太刀打ちできないと考えた。そこで、プラットフォーム型開発へと移行し、各事業の製品やサービスの移行を進めた。レゴブックのような部品の集合体であるプラットフォームを用意し、共通部品の上で、事業ごとの個別ニーズに対応した部品を開発したことで、高品質な製品やサービスを、素早く、低コストで提供できた」と杉本氏。

富士フイルムグループのプラットフォーム指向のDX

 同社のDXの特徴の2つめは、トップダウンのガバナンスを効かせながらも、現場主導の取り組みを重視している点だという。

 同社では、DX人材像の明確化や教育を推進する「人材DX」、デジタルツインによって生産性向上を図る「業務DX」、利用価値を最適化するモノ+コト売りと持続的イノベーションを実現する「製品・サービスDX」の3つのDXを推進、業務の徹底したスリム化や顧客要求に柔軟に対応できる業務プロセスの構築を目指してきた。

 「3つのDXが相互に関連している。DX人材が起点となり現場業務を変革、そこで生み出された時間で顧客およびパートナーのニーズを分析し、製品およびサービスの質を高め、価値を最大化する」と杉本氏。

富士フイルムグループの現場手動の取り組みを重視したDX

 また、同社はDXビジョンとして、「イノベーティブなお客様体験の創出と社会課題の解決」と「収益性の高い新たなビジネスモデルの創出と飛躍的な生産性向上」の2点を掲げ、DX基盤として、先に触れた「人材DX」「業務DX」「製品・サービスDX」の3つを定義してきたが、新たに「DXの行動規範」を示した。

 「DXの行動規範では、人間の知恵とデジタルを高い次元で融合することを掲げた。現場の知恵を大切にし、好循環を生む現場間の連携を促進するとともに、安心安全のトラストを実現して、DXビジョンを加速する」と同社は位置づける。

 DXの行動規範は、顧客や業界のウオンツを理解し、現場間の業務をデジタル化する「デジタルの表現」、現場で求められる安心安全をデジタルプラットフォームで提供する「トラストの実現」、現場間の業務を連携し、顧客や業界、富士フイルムの効率を高める「現場間連携」で構成される。

富士フイルムグループの目指すDX、DXの行動規範を新たに定義

 一方で、年間300億円弱のIT投資を継続する姿勢を示しながら「これまでは既存システムのバージョンアップのほか、ERPや生産システムの更新への投資が多かった。今後は、情報セキュリティや情報インフラへの投資を拡大する。DXを推進するためには、プラットフォームに参加する企業の安心安全が重要になる。エコシステムの形成や、PoCを行うための予算を増やしたい」と杉本氏は述べた。

 説明会では、同社の4つのDXの取り組みも紹介された。

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