2023年11月22日、AMDはZen 4世代のHEDT向けCPUの最新モデルとなる「Ryzen Threadripper 7000シリーズ」の国内販売を開始する。AMDはCPUの構造をコア+共有キャッシュで構成されるCCD(Core Complex Die)やメモリー、PCI Expressのコントローラーを備えたcIOD(I/O Die)を分離することで、CPUのコア数を飛躍的に伸ばすことに成功。その結果HEDT向けCPUではインテルを大きく越える最大64コアを実装するに至った。
ただ、そのThreadripperシリーズは、近年プロ向けモデルのみが更新されるばかりだった。今回のRyzen Threadripper 7000シリーズ(以降Ryzenは省略)は、約3年半ぶりに更新された“比較的”コンシューマー寄りのHEDT向け、もっと言えばエンスージアスト向けCPUとなる。
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Threadripper 3000シリーズ最後のモデルが出たのは、2020年2月。5000シリーズはPROのみが発売されたので、無印Threadripperが出るのは、かなり久しぶりのこととなる。アーキテクチャーもZen 2+→Zen 4になるので、性能面でも相当なジャンプアップが期待される
今回投入される製品は「Threadripper 7980X」「Threadripper 7970X」「Threadripper 7960X」の3モデルで、秋葉原における初値はそれぞれ税込89万9800円、49万9799円、26万9800円になっている。
Threadripper 7000シリーズはアーキテクチャーがZen 4世代に更新されたことで大幅な性能更新を果たし、PCI Express Gen5対応やDDR5対応といった新世代の企画をキャッチアップできたというのが強みとなる。
コア数は今のところ最大64コアで据え置きだが、後日Threadripper PRO 7000WXシリーズに並ぶ最大96コアのフラッグシップモデルが投入される予定もある。
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Threadripper 7000シリーズは3モデルが発売される。最上位は64コア、最下位は24コアなのでRyzen 7000シリーズよりもコア数が多く、かつ足回り(メモリーやPCI Express)の太いCPUとなる
今回筆者はAMDよりThreadripper 7980Xおよび7970Xのレビューキットが送られて試す機会に恵まれたが、受領したのが情報解禁日の48時間前、かつさまざまなトラブルに見舞われる厳しい展開となったため、今回はThreadripperシステムの概要、そしてベンチマーク結果のプレビューのみをお届けする。本格的なベンチマーク記事(今も筆者の横で検証を回している)はもう少々お待ちいただきたい。
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Threadripper 7980X(左)と1世代前(非PROでは、という意味)の3990Xを比較。フットプリントは全く同じといって良い。ただキャリアフレームの構造が微妙に異なる(フレームの穴の処理)
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裏面の違いは一目瞭然で、Threadripper 7980X(左)と3990X(右)ではランドのパターンがまるで違う。さらに基板の形状においても、3990Xには存在している切り欠きが7980Xにはない。つまり物理的に旧Threadripper用マザーボードには載せられないように出来ているのだ
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Threadripper 7000シリーズおよびPRO 7000WXシリーズの構造。中央にcIODがあり、その上下に最大6基のCCDを配置する。各CCDが持てるコア数は8基なので、12基使えば96コア、8基使えば64コアとなる。恐らくThreadripper 7980XはCPUから最も遠い4基がダミーに置換されていると推察される
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Threadripper 7980Xの構造を「Ryzen Master」で確認。8基のコアを備えるCCD1~8の存在が確認できる。Threadripper 7000シリーズはOC対応なので、その気になれば自己責任の下OCできるが、電力消費に関しては相当の覚悟が必要だ
改めてThreadripperを使う際の注意点を述べておくと、Windows環境においては、論理64コアを1まとまりとした「プロセッサーグループ」という概念がある。1つのプロセスが使えるコア数の上限はプロセッサーグループにより制限されるため、64コア128スレッドのThreadripper 7980Xの場合、全力で回しているつもりでも、半分のコアしか使っていないということが、しばしば見られる。
アプリ側でプロセッサーグループの壁を越えられるように対応することで、論理128コアを全て使えるようになるが、そうでないアプリの方が圧倒的に多いため、Windows環境でCPUパワーを使い切るには工夫が必要だ。もしくはプロセッサーグループの縛りのないOS、具体的にはLinux等で運用することも検討すべきだろう。
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