ユーザックシステムとパトライトがRPAの見える化セミナー

RPA成功の鍵は稼働状況の把握  信号灯で動作を見える化するメリットとは?

文●指田昌夫 編集●大谷イビサ

提供: ユーザックシステム

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 ユーザックシステムは10月、「RPA稼働状況の『見える化』が大事!業務効率を最大化させる“プロの運用方法”」と題したオンラインセミナーを開催した。シグナル機器メーカーのパトライトも登壇し、RPAの稼働状況を視覚的に把握できる信号灯の活用について、事例とともに解説した。

RPAで労働力不足に挑む企業の事例

 まず、ユーザックシステム RPAカスタマーサクセス事業本部 部長の渡辺大輔氏が、「うまくいってるチームはここが違う!RPAの3ステップ~開発・運用・スケール~」と題して講演した。ユーザックシステムは業務改善に直結するパッケージソフト「名人シリーズ」を開発、販売している。3400社以上に利用され、うちRPA製品は1300社に利用されている。

ユーザックシステム RPAカスタマーサクセス事業本部 部長の渡辺大輔氏

 企業がRPAを導入する背景には、労働人口が減少する日本社会の未来がある。生産年齢人口は2021年の7401万人から2040年には5978万人まで減少する見通しである。働き手が減っていくなかで、業務の効率化、自動化は必然であり、RPAのニーズは高まっている。

 渡辺氏は、もはやRPAは、業務の補助として使われるだけでは不十分だと話す。「業務自体をRPAに任せ、そのうえで生産性を上げていくところまでしていかないと、労働者が減少する時代には対応できない。先行している企業は、そこまでいっている」

 次に渡辺氏は、RPAを効果的に導入している例を複数紹介した。1社目は、RPAの開発者育成に力を入れる企業の事例だ。開発者育成プロセスを、基礎教育、業務棚卸支援、モデルケース自動化、RPA開発実践・運用~改善サイクル、ノウハウ共有と自部門への展開の5つのステップに分類し、前半3つを伴走支援フェーズ、後半2つを自立支援フェーズとして体系を作り上げた。その結果、RPAのロボット開発者を3名から57名まで増やすことに成功した。豊富な開発リソースを活用し、幅広い業務に対してRPAの内製化を進めている。

 次の事例は、食肉卸企業のフードリンクだ。同社はユーザー部門とシステム部門の連携がうまく回っている。RPAの開発と管理はシステム部門が担当しているが、RPAのアイデア出しはユーザー部門が担っている。システム部門はユーザー部門に対してRPAを啓蒙し、理解を浸透させていることが成功の要因だという。エラーが出た時などの運用について、簡潔にルールをまとめていることもポイントだ。

 同社がユニークなのは、月に一度、RPAが自動化している業務を人の手によって作業する日を設定し、RPAの手順が間違っていないかを確認していることだ。「長い間RPAに業務を任せてしまうと、業務の中身がわからなくなり、改善のポイントが見えなくなる。そこで避難訓練と同じように、定期的に業務の手順を確認している。これは多くの企業にお勧めしたい方法だ」(渡辺氏)

 さらに、自動化の効果を最大化するために取り組む企業事例も紹介した。RPAで1つの業務を自動化しただけでは、人手不足の解決や従業員のモチベーション向上を果たしたとはいえない。そこで、継続的な改善のため、ダッシュボードを用いてRPAの効果を可視化し、それを経営者だけでなく現場にも共有している。部門別の取り組みを確認することで、特定部門の改善例を全社に拡大することを狙う。

RPAは開発よりも運用フェーズが大事

 渡辺氏は、RPAの導入には「開発」「運用」「拡大(スケール)」の3つのステップがあると話す。往々にして、どんなロボットを作るのか、と開発面に目が行きがちだが、じつは開発にはそれほど大きな比重を置かなくていいのだという。
「当社の製品を含めて、どのRPAも使いやすさが改善されており、開発の敷居は非常に低くなっている。特定のスキルはいらないところまできているので、心配はいらない」(渡辺氏)

 開発時に重要なのは、自動化対象の業務フローを整理することだ。どの業務を自動化すべきかを決め、自動化の設計をする。同じ業務でも人の場合は、目視の確認などがルールとして必要だが、RPAでは不要だったり、プロセスが異なってくることも考慮する。また、どうしても発生するイレギュラーなケースや、トラブル時にどう対応するかを決めておく。

RPA運用の秘訣

 開発よりもむしろ運用が、RPAの成功を占う大きな部分だと渡辺氏は話す。運用の秘訣は3点ある。1つ目はどれだけの業務をRPAに任せておけるか。これは当然、RPAの効果に直結する。2つ目は、メンテナンスの負荷をいかに下げるか。導入時のサポートをいかに短期に終わらせ、現場が自立できることが重要だ。3つ目として、業務をRPAに任せつつも、業務を改善していくためにRPAの遂行状況を把握することが必要と挙げている。

 そして、多くの企業が課題として挙げているのが、RPAをスケールさせることである。ノークリサーチの2022年調査では、中堅中小企業のRPAの用途数は「1つだけ」が50%程度と圧倒的に多く、2つ以上はその半分以下の企業しか導入できていない。多くの企業がもっとRPAの適用を増やしたい意向を持ちながら、実現できずにいる。

 その原因は何か。渡辺氏は他社製品も含めたRPAのユーザー企業にヒアリングを行い、ある課題が見えてきたという。「企業の声で一番多かったのが、RPAの活用状況を企業が把握できていないことだった。改善のPDCAを回していきたいが、RPAによる改善の具体的な情報が得られていない。そのため、経営者は投資を拡大する判断ができない」

 この状況を解決するには、RPAのデータを可視化し、稼働率や成果、トラブル対処の状況や、コストを把握することが必要である。「ダッシュボードを見て、効果が出ているものは伸ばし、出ていないものは対策を考える。このPDCAを回すことがRPAをスケールさせるための秘訣だ」(渡辺氏)

メール通知の確認という「巡回作業」をなくす

 続いて、パトライト グローバルマーケティング本部 DX戦略推進部の村上敦氏が「業務効率UP! RPA運用のツボ」と題して講演した。パトライトは、車両の回転灯や工場ライン、物流倉庫の信号灯を製造販売する企業。1947年創業で長い歴史を持つ。シグナル機器の国内シェアは約70%を誇る。

パトライト グローバルマーケティング本部 DX戦略推進部の村上敦氏

 同社自身もRPAのユーザーである。自社のシグナル機器を使ってRPAと連携させ、進行中、終了、遅延の状態を信号の状態で一見してわかるようにしている。それによって、RPAの処理が終わって人の作業が入るタイミングがすぐにわかり、待機時間が減った。また、遅延やトラブル時も人がすぐに介入できるようになったことで生産性向上を実現した。同社ではこの仕組みを、社外にも提供している。

 同社がRPAとの連携に取り組むきっかけは、RPAのユーザー企業からの切実な声だった。RPAが停止したとき、そのことをすぐに知る仕組みを作りたいという要望が寄せられたのだ。独自に調べてみると、RPAが何らかの理由で止まってしまい、困っているという企業が39%に上っていた。

 RPAが止まったときにスキップさせる機能もあるが、スキップした際に未処理が残っているかを、別途人が確認しなければいけない。そのため、「人がロボットの動きを見張っている」というオフィスが数多く存在するという。これでは、RPAによる自動化は効果を発揮できていない。

 メールによる異常通知の場合は、通知は担当者にしか届かず、その担当者が手を離せなければ、対応は後回しにされてしまう。村上氏は、異常検知などの大事な通知は属人化せず、皆がわかる仕組みにすべきだと説明する。

「物理的に光や音が出て五感に訴える通知は、人が巡回しなくても気づくことができる。また、周囲の人に知らせることができるため、チームで最速の対応ができることもメリットだ」(村上氏)

 村上氏は、信号灯とRPAの連携事例を紹介した。ある印刷会社では、印刷機器の検査結果を手作業で記録していたが、RPAで自動入力する仕組みを構築した。転記ミスがなくなり業務改善しただけでなく、信号灯とRPAを組み合わせた結果、検査の異常値が出力されるとアラートを表示し、担当者はいち早く不良品対応がとれるようになった。

信号灯とRPAの連携

 また別の会社では、Webシステムに届いた注文データを、RPAを使って社内の受注システムに自動入力する仕組みを作った。だが、RPAが対応できない内容があり、人の手によるリカバリー作業が必要だった。その連絡は、従来メールで来ていたが、他のメールに埋もれてしまい、探すのに苦労していた。そこでRPAに信号灯を連動させ、赤ランプの際だけ対応することで、担当者の負担を大幅に削減した。

「現場の業務がどうなっているかを知るため、工場などでは信号灯による見える化は当たり前に使われている。しかし、オフィス内の業務は、PCの中に通知が出るだけで、画面を監視してなければわからない。メールの場合も埋もれてしまう。これは非常に効率が悪い。異常がなければ自分の作業に専念できる環境を作るために、RPAの見える化は不可欠だ」と村上氏は語る。

RPAの肝は、「運用」と「状態の可視化」にある

 セミナーでは最後に、ユーザックシステム渡辺氏、パトライト村上氏によるパネルディスカッションを実施した。

 まず取り上げたテーマはRPAにおける運用の重要性について。渡辺氏は改めて、RPA導入では開発よりも運用に目を向けるべきと指摘する。「他社製品から当社に乗り換える企業のケースでは、ロボット開発に問題があったケースは2割程度。残りのおよそ8割は、運用の負荷が重いことが理由で、乗り換えたいというニーズだ」

 パトライトの村上氏も、「RPAの動作を確認するために1時間ごとのメールチェックをするのが厳しい、といった企業が、当社の信号灯をRPAと組み合わせて使っている。これはまさに運用の問題だ」と話す。

 RPAを導入したばかりのころは、運用について深く考えている企業は少ないのが実態だ。だが運用こそが自動化を成功させるカギだという点で、両者の意見は一致している。

「RPAの運用では、エラーのときの通知方法や対応だけでなく、正しく動いているか、あるいは作業が終わったかなどが、誰の目にもわかることが重要だ。パトライトの事例からそのことを知り、感銘を受けた」(渡辺氏)

 特に最近では、エラー通知だけでなく、作業完了通知の見える化も重要度を増している。例えば、RPAを受注業務で使う企業は多いが、受注が完了すれば次工程である製造部門に処理内容を受け渡す必要がある。処理の完了をどうやって知るかは、各社とも悩んでいるところだという。信号灯の設置は有効な方法の1つだ。

「RPAの運用に行き詰まったり、違和感を持った場合は、稼働状況の見える化を検討してほしい」と、最後に村上氏はアドバイスした。

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