京都大学と産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、二酸化炭素を活物質とするレドックスフロー電池の開発に成功した。レドックスフロー電池は再生可能エネルギー導入時に送電網を安定させる定置型蓄電池として期待が集まっているが、活物質として可逆的に酸化還元する金属イオンや有機分子しか使えないため、コスト低減やエネルギー密度向上に課題があった。
京都大学と産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは、二酸化炭素を活物質とするレドックスフロー電池の開発に成功した。レドックスフロー電池は再生可能エネルギー導入時に送電網を安定させる定置型蓄電池として期待が集まっているが、活物質として可逆的に酸化還元する金属イオンや有機分子しか使えないため、コスト低減やエネルギー密度向上に課題があった。 今回の研究では、産総研が開発したイリジウム触媒を利用して、これまでは利用できなかった化合物を酸化還元させることで、レドックスフロー電池の活物質として利用することを着想。モデル化合物には安定かつシンプルな化合物の代表である二酸化炭素を選んだ。 研究グループはイリジウム触媒を介した二酸化炭素とギ酸をアノード(負極)、2価と3価のマンガンをカソード(正極)に採用したレドックスフロー電池を構築し、その充放電に成功した。この電池では、充電時にアノードで触媒を介して二酸化炭素がギ酸塩に還元され、カソードではマンガンが2価から3価に酸化される。放電時はアノードで触媒を介してギ酸塩が二酸化炭素に酸化され、カソードではマンガンが3価から2価に還元される。 研究グループがこの電池の触媒構造や充放電条件を調整したところ、少なくとも50回の充放電が可能になったという。電池性能を示すクーロン効率は安定して90%を超え、最大で1.5AhL-1の比放電容量を記録した。 研究成果は8月31日、アンゲヴァンテ・ケミー国際版(Angewandte Chemie International Edition)にオンライン掲載された。研究グループは今回の研究によって、これまで活物質として利用できなかった化合物でも、触媒を利用することで活物質として利用できる可能性を示し、新しい活物質開発の余地を広げたとしている。(笹田)