『龍が如く7外伝 名を消した男』と『龍が如く8』は2作で1つという想いで制作

『龍が如く8』開発者インタビュー。意味深カットの由来は? 人気キャラ再登場はどうなる?【TGS2023】

2023年10月03日 23時00分更新

文● 松野将太 編集●ミヤザキ/ASCII

「龍が如く」シリーズ チーフプロデューサーの阪本寛之氏(画像左)、龍が如くスタジオ 代表の横山昌義氏(画像中央)、『龍が如く8』ディレクターの堀井亮佑氏(画像右)

 「東京ゲームショウ2023」に先駆けてゲーム情報が公開され、大きな盛り上がりを見せている『龍が如く8』。あわせて15分以上に渡る長尺のストーリートレーラーとゲームトレーラーが話題を呼び、TGS会場での試遊も大盛況だった様子だ。

 発売日は来年1月26日とそう遠くないが、今回TGSの会場で龍が如くスタジオ 代表の横山昌義氏、「龍が如く」シリーズ チーフプロデューサーの阪本寛之氏、『龍が如く8』ディレクターの堀井亮佑氏にお話を伺える貴重な機会をいただいた。トレーラーの内容や、実際にゲームを試遊してみての疑問・質問をぶつけてみたので、今から発売が待ちきれないユーザーの参考になれば幸いだ。

『龍が如く8』ストーリートレーラー

『龍が如く8』 ゲームトレーラー

話題のストーリートレーラーは“1回でバンと全部伝えた方がいい”で10分超に

――本日はよろしくお願いいたします。まずは、先日公開されたストーリートレーラーとゲームトレーラーについてお話をお伺いしたく思います。特にストーリートレーラーは10分ほどの凄まじい情報量で、公開時には圧倒されました。反響はいかがですか?

横山氏(以下、横山):反響は大きいですね、やっぱり。もちろん動画の再生回数もありますけど、それがどうとかというより、今時10分前後の長いトレーラーはナンセンスというか、皆「やめようよ」というような空気が何となくあるんですよね。

 実際、僕たちのチームでも最近は長めのトレーラーはあまり作っていなくて、短いものを何本か出して行くのがトレンドになっていると感じています。そういう流れはあるのですが、今回はもう、ストーリーに関してはこれ以外トレーラーを出さないつもりでいます。

――物語の魅力に関する部分は、この1本にぎゅっと詰め込んでいると。

横山:もちろんキャラクターの詳細情報であるとか、別の動画は出していくと思いますけどね。やはり、トレーラーを小出しにしても、みんながちゃんと見るのは最初の1本目なるんですよね。結局、1本目が面白ければ、それを何回も繰り返し見てくれると思いますし、「1ヵ月や2ヵ月と、期間を空けて複数のトレーラーを公開しますよ!」とやっても、伝わらないというか。

 それでしたら、1回でバンと全部伝えた方がいいということで、再生時間が10分を超えるぶん情報量が超多いトレーラーが出来上がりました。時代への逆張りではないですけど(笑)。

――多くの方が盛り上がっている様子を見ていると、その試みは成功しているように思います。

横山:やはり今だと「VIVANT」であったり、「THE FIRST SLAM DUNK」であったりもそうですけど、“良いものは良い”という思いが強くて。自分たちが“良いものだ”と思えるものを出すときには、こういう戦い方もアリなのではないかと思うんですね。前からそのように考えていたので、今回はそういう風にやってみました。

 そのうえで今回の試遊も、開場3分で整理券が終わってしまったり、ビジネスデーで関係者の方と話しても「あれ、すごく良かったよ」って声かけられたりして。初めてですよ、こんなにトレーラーの話をされたのは(笑)。ちゃんと反響が出て良かったです。

阪本氏(以下、阪本):(トレーラーを発表した)「RGG SUMMIT FALL 2023」の会場に来られた方も、最初は「おぉ……(ため息)」という感じで(笑)。その後は自然と拍手が出たり、反応は良かったです。「何か凄いものを見たぞ」って、そんな感じに皆さんおっしゃってくれますね。

シリーズの代名詞でもある桐生一馬がダブル主人公の1人として登場。今作では髪が白髪交じりになるなど大きく風貌が変わっているが、ガンを患った影響もあるようだ

――試遊の範囲はとにかく明るさが目立つ内容でしたが、一方でダブル主人公の1人である桐生一馬はガンを患っていることが明かされるなど、ストーリーの断片からは重苦しい雰囲気も感じられます。

 明るい部分が底抜けに明るければ明るいほど、なんとなく先の展開が不安になってくるような印象を受けるというか……。非常にコントラストの効いた作りになっていると思うのですが、こういった部分は意図されているのでしょうか。

横山:意図しているというよりは、自然とそうなってしまうんですよね。春日一番と桐生一馬、2人の主人公がそうさせている、という部分はあると思います。

 馬鹿みたいな話ですけど、人に何かものを訊ねることひとつ取っても、一番が軽めに「ちょっといい?」って訊くようなところを、桐生は「ちょっと……いい?(声真似)」と入っていく。

――(笑)。

横山:同じことがらでもニュアンスが変わるんですよ。2人の性格が正反対な主人公がいると、同じことなのに重そうか、重そうではないかが違ってきます。

 たとえば今回、桐生は病にかかっていますけど、一番がガンになってたとしたらもっと明るい雰囲気になるのではないかと思うんですよね。

 結局、コントラストはキャラクターによって分かれていて、出来事によって分かれているわけではないというか。なので、今回のトレーラーでコントラストや明暗を感じてもらえるのは、2人の主人公がいるから為せる業だろうと思います。

 明るい奴が二人だったら、「治そうぜ!」で終わってしまいますからね(笑)。あとはもちろん、ぽっと出のキャラクターではなくて、シリーズの歴史を背負った2人のキャラクターがやっていることも大きいかなと思います。

――「龍が如く」シリーズはナンバリングだけでも8作目で、派生作品もかなりの数になっています。長くプレイを続けてきたユーザーほど思い入れも湧きますよね。

横山:そういう方には存分に楽しんでもらえる一方で、これだけ多くなると、シリーズを今から遊ぼうという人には入りにくさはあるでしょうね。

 特に、桐生一馬というキャラクターは過去を知っていないと楽しんでもらいにくいキャラクターではありますので、だからこそ今回『龍が如く7外伝 名を消した男』を並行して作りました。

 結果的に2作を短い期間で出すことになってしまいましたが、そもそも敷居は高いタイトルなんですよね。無理にそのハードルを下げてもしょうがないですし、これだけシリーズが続けば過去ありきの見せ方はせざるを得ない。

 ある意味ユーザーフレンドリーではない作り方だとは僕も思っているんですが、どうにもならない部分もありますので、まあそれでもいいか、みたいな感じで(笑)。

TGSの試遊会場で見ることができたイメージカット。レオナルド・ダヴィンチの「最後の晩餐」のパロディになっており、キャラクターの配置にも意味があるとのこと

――ストーリーに関して言えば、情報の多いトレーラーだった反面、まだ語られていない部分も多いのではないかという印象があります。

 今回、試遊スペースの上部に横長のモニターが設置されていたんですが、そこにレオナルド・ダヴィンチの「最後の晩餐」のパロディになっているイメージカットが表示されていました。

 かなり意味深ですが、どういった意図があるのでしょうか?

横山:あれは、あの……がっかりしないで欲しいんですが(笑)。設営の仕様に関して、会場に横長のモニターがあるという話を2週間ぐらい前に聞いたんです。

 最初はムービーをトリミングして流そうかと言っていたんですが、「ちょっとつまんないな」となりまして。試遊の待機列は長くなりますよね。飽きない映像にしたいと思い、まず静止画に見えるけれどもたまに少し動く、みたいな映像をたくさん用意したんですね。

 それで1週間前ぐらいに、今回のメインキャラクターが13人いることに気付きまして。なにか「最後の晩餐」の様なビジュアル作れない? という話になったところで、デザイナーが「作れますよ」と。

 「なんか意味深な、それっぽいものを」と頼んで、それぐらいのスピード感で出来上がったのがあちらになります(笑)。

――相当意味深だったので身構えてしまったんですが、かなりの突貫作業だったんですね(笑)。

横山:しかも、あれは実は4種類ぐらいありまして、それぞれキャラクターの配置が違ったりしています。一番人目を引きそうな「ユダ」に相当するキャラクターの配置もバージョンごとに変わっていますし。

――そうだったんですね。私が見た画像では、再登場が発表されたばかりの沢城丈がユダの位置にいたので、個人的に気になっていました。

横山:「最後の晩餐」については諸説あるようなんですが、それになぞらえて、いくつかの配置をデザイナーたちが考えてくれています。

阪本:あれは、ユーザーの方も相当盛り上がってますよ。

横山:……実はいちばん想定外なんですよね、この盛り上がりが(笑)。最後の最後で入れ込んだものなので……確か前日か当日、会場にデータを持ち込んだのではなかったかな? うちのチームは、結構こういうノリでいろいろなことを始めてしまうんですけど、まあ、皆さんが盛り上がってくれてるなら何よりです。

阪本:もっと意味深に話しておいたほうがいいんじゃないですか(笑)?

横山:いや、でも僕も20年以上ゲーム開発に携わっていますけど、ゲームはほかの商品に比べて発表から発売までのプロモーションが長いんですよね。たとえば洗濯機とか、発表して翌日には売り出していたりしますし。

 ゲームは訴求して認知度を上げて……というフェーズを踏んでいこうとすると、その間に話題を持たせるのは大変なんです。昔は発売まで1年などやっていた時期もあるんです。最近は短いと3ヵ月ぐらいですけど、それでも大変ですよ。

 そういう時に、発売までの期間を一緒に楽しめるものというのは、やはり必要で。あれもひとつのゲームコンテンツなんですよね、言ってしまえば。「東京ゲームショウ」という催しも、僕はショウというよりはひとつのゲームだと思っています。

 全部ひっくるめて、みんなで一緒に楽しんでいこうというものは、あった方がいいと思います。

堀井氏(以下、堀井):私たちとしては、ユーザーの方々に情報を与えたいというか、興味を持ち続けてもらいたいというのが大きいので。そういう意味では、今回の試みはよくマッチしていたのではないかと思います。

 イメージカットについても、いくつかのパターンがある中で「これが正解です」という一応の答えみたいなものは用意していますので、ぜひ考察して、見つけていただければなと。

横山:指示はアバウトですが、チームメンバーはみんな頭がいいので、そこは安心してください(笑)。

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