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EVの150kW充電が無料!? 都内1000ヵ所に超急速充電器設置のテラチャージはどんなモデル?

2023年09月30日 15時00分更新

文● 栗原祥光(@yosh_kurihara) 編集●ASCII

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テラモーターズが設置する予定の150kW充電器

◆ガソリンスタンドと同じ数だけ充電器を設置が目標

 電気自動車向け充電インフラ事業を展開するテラモーターズのサービス「テラチャージ」は、出力150kWの自動車用超高速充電器を都内に1000ヵ所、無料導入することを発表した。

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1年間で2858基の充電器を設置!

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設置台数で業界トップだという

 テラモーターズは2010年に創業。アジアを中心にEVの二輪事業を展開している。2022年から日本でEV充電インフラ事業を立ち上げて、基礎充電の分野で最後発ながら、すでにマンションを中心に1年間で1240ヵ所、2858基の充電器を設置。現在業界ナンバー・ワンと自負している。

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驚きの超急速充電器設置プラン

 今回発表したプランは、行政施設だけでなく、商業施設や公共施設、コンビニエンスストアなど利便性の高い1000ヵ所に超高速充電器を“無料で”設置し、電気自動車の普及促進に貢献するというもの。さらに電気代や電気代基本料、メンテナンスコストもテラモーターズが全額負担するようだ。

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テラモーターズが設置する予定の150kW超高速充電器。メーカーは明らかにしていないが、新電元工業の機械のようだ

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150kW BOOSTの文字が見える

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超高速充電器のコントロールパネル

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充電ケーブルが接続されたレクサス

 一般的に超高速充電器は、設備と工事費用を合わせて1500万円から2000万円という費用がかかる。さらにランニングコストとして、電気代が年100万円前後、メンテナンスコスト年30万円位かかることが、普及の大きな課題となっていた。だが、テラモーターズのプランを利用すれば、施設側は場所を提供するだけで済むため、インフラ問題が一気に解消する可能性がある。

◆日本の問題点は充電の遅さや時間課金なこと

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徳重 徹テラモーターズ取締役会長

 では、なぜこのような仰天プランが可能となったのか。そして、なぜ急速充電の分野に踏み出したのか。徳重 徹テラモーターズ取締役会長は、集合住宅向けの充電設備設置事業を進める中で、日本のEVインフラには3つの問題点があると話した。

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テラモーターズが考える3つの課題

 「日本のEVにおける課題は、充電スピードが圧倒的に遅いこと、時間課金であること。そして都市部を中心に機械式駐車場であることです。機械式駐車場に基礎充電設備を設置することは技術的制約により難しい。エンドユーザーや事業者が電気自動車に乗り換えたくても、近くに急速充電設備がなければ乗り換えることはできません」。

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日本の平均的な急速充電器の給電能力

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主なBEVの充電能力

 「また、日本は今まで急速充電といえば20kWがほとんどでした。そして今、50kWへの切り替えが進んでいまして、日本の平均的な出力は40kWになります。ですが今後、バッテリーの大容量化と高速充電の適応力がものすごく上がってくるのは容易に想像できますし、海外では120kW以上が一般化しています。充電設備は一度設置すると10年近く使いますので、今50kW機を導入しても、近い将来、給電能力が足りなくなることは目にみえています」

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時間課金の問題点

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経済産業省の検討会資料

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世界は従量課金

 「また時間課金というのも問題です。20kWでも50kWでも同じ料金であるため、ユーザーはもちろん、設置した施設側も利益は変わらないのに電気代などの費用負担が大きくなります。この問題は経済産業省も認識していて、今後改定される予定です」と現状を説明した。

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急速充電ポート

 よって充電コネクターはCHAdeMOであるものの、支払いは日本で普及している「e-Mobility Power」提携カードではなく、独自のテラチャージ専用アプリを用いた従量制。具体的な料金は現在検討段階で、今後発表する予定だ。

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都内のガソリンスタンドと同じ数だけの急速充電器を設置する予定

 「なぜ1000ヵ所かといいますと、都内のガソリンスタンドと同じ数にすることで、エンドユーザーの心理的負担を減らすためです。150kW充電なら6分で100km走れることになりますので、エンドユーザーはガソリンスタンドに近い感覚が得られます。これなら機械式駐車場利用者の不安問題は解決すると考えています」。

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家電量販店のコジマに設置する予定

 すでに家電量販店のコジマが手をあげているほか、いくつかの小売店からも問い合わせが来ているという。設置しても施設側にインセンティブの支払いはないものの「充電中に買い物利用をするなどといった、集客が見込める可能性があります」と、語気を強めて語った。

◆資金源は資金調達と国からの補助金

 気になるのは本事業の資金源だ。会見にはエコノミストや新聞社から、実現可能性についての質問が相次いだ。というのも、2000万円もする充電設備を1000ヵ所といえば、3桁億円という費用がかかる。その資金をエンドユーザーの充電だけで賄うのは、現在の電気自動車の普及台数から考えて難しいように思えるからだ。

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昨年、40億円の資金調達に成功している

 「補助金を活用しながら、我々が持ち出しをすることになります。ですがマーケット市場では充電インフラ事業に対して好意的で、前回は40億円の資金調達ができました。今後、補助金の額は上がってくることが予想されますし、われわれは他の国でも充電事業を展開していますが、日本ほど補助金が出る国はありません。マーケットからの資金も実績をキチンと出せれば確保できると思っています」と、かなり強気の発言が飛び出した。

 「それゆえ東京に限定して実施し、実績を作ります。ほかの地方都市については、東京での成果や実績をみて検討する」とのこと。「また一度設置すれば150kW級なら10年は使えると思っています。事業性はあります」と言葉に力をこめた。

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EV後進国から先進国へ

 「これが実現できれば、日本はEVに対して遅い国と言われていますけれども、世界に対して最先端のEV都市になれると思います」という、テラモーターズの無料超高速充電器を1000ヵ所設置する計画。「われわれは1年半、普通充電の事業やってきて、色々とわかってきましたし、実績もあります。そして今度は急速充電の分野で、新しいイノベーションを起こします」と自信をみせた。

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充電するポーズをとる徳重 徹テラモーターズ取締役会長

 「充電設備のない月極駐車場には借り手がつかない」時代がくることは想像に難くない。同じように「急速充電器のない大規模小売店には、お客が来ない」時代が来るかもしれない。そんなことを思わせた発表だった。なお、サービス開始は来年早春以降となる。

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