◆量子暗号は近い将来、絶対的に必要になる
ソフトバンクは9月20日に、東芝デジタルソリューションズと一緒に、量子暗号技術である「QKD」を用いた拠点間VPN通信の実証実験に成功したことを発表した。
QKDとは、量子力学に基づく原理を通信に応用し、データの送信側と受信側の双方に共通の暗号鍵を生成する技術。生成した鍵は1回だけ使用する仕組みで、安全な通信が成立する。今回の実証実験では、東芝独自の技術によって鍵の生成を高速化したQKDシステムを、東京・竹芝のソフトバンク本社と都内のデータセンターの間(2拠点間のファイバー距離は約16km)に導入して行なわれた。
東芝デジタルソリューションズの村井信哉氏から、QKDの有用性について説明された。
◆量子インターネットの実証実験もスタート
ソフトバンクは9月21日に、横浜国立大学発のスタートアップ、LQUOM(ルクオム)と共同で、実用環境における量子もつれの伝送実験を開始したことを発表した。ソフトバンクは、既存とインターネット技術と量子インターネット技術を融合したハイブリッドネットワークの実用化を目指して、取り組みを進めている。
量子インターネットの有用性と実現に向けた課題、今回の両社の取り組みについて、LQUOM社長の新関和哉氏から説明された。
ソフトバンクは、今年3月に開催した「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」でも量子技術分野についての展示をしていたが、今回の説明会は小規模ながら、より深い内容だった。
量子インターネットが実用化される時期の見通しは発表されておらず、質疑応答ではソフトバンクの小宮山氏が「2030年頃には……」と話し、慶應義塾大学のRodney Van Meter教授は「そんなにかからないのでは」と話していた。研究開発は加速している印象だ。