このページの本文へ

「Oracle CloudWorld 2023」レポート

CTOラリー・エリソン氏「大規模モデルのトレーニングに適したクラウド」、Oracle CloudWorld 2023レポート

オラクルが企業向け生成AI発表、OCI“スーパークラスタ”の強みをアピール

2023年09月21日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 オラクルの年次カンファレンス「Oracle CloudWorld 2023」が2023年9月19日(米国時間)、米ラスベガスで開幕した。会期中には多数の新製品/新サービスや新機能が発表されており、「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」では、エンタープライズ向けの生成AIサービス「OCI Generative AIサービス」(ベータ版、限定提供開始)が発表された。

エンタープライズ向け生成AIサービス「OCI Generative AI」を発表(画像は製品サイトより)

 基調講演の中でオラクル 会長兼CTOのラリー・エリソン氏は、大量の「NVIDIA H100」GPUを高速なRDMA(Remote Direct Memory Access)ネットワークで接続するOCIの“スーパークラスタ”が、生成AIモデルのトレーニングにおいて大きな優位性を持っていることをアピールした。

「Oracle CloudWorld 2023」基調講演に登壇した米オラクル 会長兼CTOのラリー・エリソン(Larry Ellison)氏

最大1万6000個のGPUを200GbpsのRDMAネットワークで接続するOCIの“スーパークラスタ”をアピール

エンタープライズ向けの「OCI Generative AIサービス」

 OCI Generative AIサービスは、エンタープライズ向け生成AI/LLMベンダーのCohereとの連携により、OCIクラウド上に構築されたサービス。PaaSとして利用しユーザーが開発するアプリケーションに生成AI機能を組み込むことができるほか、オラクルが提供するSaaSアプリケーション(「Oracle Fusion Cloud Applications Suite」「Oracle NetSuite」「Oracle Cerner」など)が生成AI機能を提供する際の基盤にもなる。

 同サービスは「テキスト生成」「テキスト要約」「チャット」「RAG(Retrieval Augmented Generation、検索で強化した文章生成)」といったユースケースを実現する。提供されるモデルは、ユーザーのプロンプトを受け取りテキストを生成する「Command(コマンド)」、テキストの抽象的な要約を行う「Summarize(要約)」、テキストをモデルが理解できる数値ベクトルに変換する「Embed(埋め込み)」といったもので、これらの事前トレーニング済みモデル(ベースモデル)はCohereが開発する。

 提供されるベースモデルをそのまま使うだけでなく、自社が持つデータを使ってファインチューニングし、自社独自のカスタムモデルを構築することも可能だ。ファインチューニングやモデルのデプロイは顧客専有のAIクラスタで行う仕組みであり、エンタープライズデータのセキュリティやプライバシーは保護される。またこの際、AIクラスタのサイズを調整することで、パフォーマンスとコストのバランスを取ることもできるとしている。

ベースモデル(基盤モデル)のファインチューニングも可能(画像は製品ドキュメントより)

 なお同サービスは、現時点では限定提供のベータ版となっており、OCI Generative AIサービスの具体的な利用料金やSLA、提供するリージョンなどの情報は公開されていない。一般提供開始時期について、OCIのEVPを務めるクレイ・マグワイク(Clay Magouyrk)氏は「まもなく(very soon)」だと述べた。

OCIの“スーパークラスタ”が「AIモデルのトレーニングに最適」な理由

 基調講演においてエリソン氏は、この1年ほどの間に生成AIが社会にもたらしたインパクトは「大きな驚きだった」としたうえで、「生成AIは新たなコンピューター技術として最大級に重要なものか? おそらくそうだろう」と結論づける。

 ただし、エンタープライズ領域における生成AIの活用はまだ黎明期である。エリソン氏は、これからは完全自動運転車や創薬、デジタルアシスタントまで、業種や用途ごとの生成AIユースケースが拡大していくと述べたうえで、OCIはそうした生成AIモデルのトレーニングに「最適なクラウド」だと強調した。

GPUクラスタを高速RDMAネットワークで接続するOCIは「AIモデルのトレーニングに最適なクラウド」だとアピール

 その理由は、高速かつ低コストで効率的にモデルのトレーニングが実行できる“スーパークラスタ”を構成しているからだという。OCIにはもともと、データベース処理を高速化する目的で高速なRDMAネットワークが組み込まれている。このネットワークを使ってGPUクラスタを相互接続することにより、ノード間のデータ移動が高速化されトレーニング処理も高速になる。

 エリソン氏は「トレーニングが2倍高速になれば、処理時間が半分になり、クラウドの利用コストも半分で済む」と説明したうえで、こうしたOCIの優位性が多くの企業を引きつけていると述べた。今回発表したGenerative AIサービスのパートナーであるCohereのほか、イーロン・マスク氏の生成AIベンダーであるxAI、また昨年のCloudWorldでパートナーシップを発表したNVIDIAも、AIモデル開発にOCIを利用しているという。

* * *

 エリソン氏は、生成AI技術を取り込むことで、今後数年間のOracle Cloudでどんなことが起きると予想しているのか、いくつかの例を挙げて紹介した。たとえばローコードアプリ開発基盤の「Oracle APEX」では、AIがコードを生成することで完全に“ノーコード”開発が可能になる。「Autonomous Database」の自律運用も強化され、人手が不要となりヒューマンエラーもなくなる。そのほか、「Oracle Database」におけるセマンティックコンテンツのベクトル格納/検索といったものも挙げている(これは今回発表されたもの。詳細は記事をあらためて紹介する)。

生成AI技術がOracle Cloudにどのようなインパクトを与えるのかも紹介した

 「オラクルでは、これまで長きにわたって(予測AIなどの)AI技術を活用してきた。しかし、生成AIはそれとはまったく違う“革命”だ。大きなブレークスルーであり、状況に根本的な変化をもたらす」(エリソン氏)

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    訓練だとわかっていても「緊張で脇汗をかいた」 LINEヤフー、初のランサムウェア訓練からの学び

  2. 2位

    ビジネス・開発

    最悪のシナリオは「フィジカルAI」による基幹産業の衰退 日本の勝ち筋は、“同期技術”と“ドメイン知識”

  3. 3位

    ITトピック

    若手が言わない“本音の退職理由”上位は/「データ停止は景気後退よりも企業の脅威」6割/クライアントに告げずAI活用するフリーランス、ほか

  4. 4位

    Team Leaders

    ファイル名が命名規則に合っているかの自動チェック、Power Automateのフローで実現しよう

  5. 5位

    TECH

    “GPUなし”ノートPCで動くLLMで、ローカルAIエージェントを自作する

  6. 6位

    TECH

    糖尿病超早期を採血なしで検出、予防へ! 代謝や臓器のつながりに着目した予防法開発

  7. 7位

    ビジネス

    廃校がAIの心臓部に!? 地方の遊休施設を「AIデータセンター」に生まれ変わらせるハイレゾの挑戦がアツいぞ

  8. 8位

    TECH

    業界横断で“サイバー攻撃から供給網を死守” NTT・アサヒ・トライアルらが「流通ISAC」始動

  9. 9位

    Team Leaders

    バックオフィス業務もAIに“丸投げ” マネーフォワードが「Cowork」機能を2026年7月に投入へ

  10. 10位

    sponsored

    AI議事録はもう「Zoom」1つでいい “やりっぱなしの会議”を次のアクションへ変える

集計期間:
2026年04月07日~2026年04月13日
  • 角川アスキー総合研究所