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スーパー耐久2023レポート 第4回

スーパー耐久第5戦で冨林勇佑が今季初優勝! 4年連続S耐王座へ突破口開く

2023年09月10日 15時00分更新

文● 吉田知弘 写真●加藤智充 編集●ASCII

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スーパー耐久

◆優勝に手が届かなかった前半戦
◆後半戦は攻勢に出たいところ

 9月2~3日にモビリティリゾートもてぎで「ENEOS スーパー耐久シリーズ2023 Supported by BRIDGESTONE 第5戦 もてぎスーパー耐久 5Hours Race」が行なわれ、冨林勇佑が乗る41号車「エアバスター WINMAX GR86 EXEDY」がST-4クラスで待望の今季初優勝を飾った。

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 スーパー耐久 ST-4クラスは第4戦オートポリスが“不参加クラス”として指定されていたため、41号車にとっては7月のスポーツランドSUGO以来、約2ヵ月ぶりのレースとなった。TRACYSPORTS with DELTAは今年からST-4クラスに参戦。ST-3クラスで3連覇を飾った冨林勇佑と石井宏尚が41号車のメンバーとなり、新たに水野 大を加えた3名体制をベースに参戦している。

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 ただ、ST-4クラスは強力なライバルが多数参戦し、毎回ハイレベルな戦いが繰り広げられている。その中で41号車は各レースでベストを尽くす走りをするが、優勝には一歩手が届いていないまま前半戦が終わっていた。

 ランキング2番手で迎えた今大会。何とか今季1勝目を飾ってポイント差を縮めたいところ。インターバルの間に課題だったストレートスピードも改善させて、もてぎ大会に臨んだ。

◆予選は今季初ポールポジション!

 今年の夏は全国的に異常な猛暑が続いており、各サーキットの中でも特に暑さがこもると言われているモビリティリゾートもてぎは、練習走行日から気温30度を超える暑さが続いた。その中で41号車は粛々と予選に向けてマシンのセッティング等を確認。土曜日の公式予選に臨んだ。

 今回は水野をAドライバーに起用。ここまでの準備が功を奏し、セッション終盤に2分14秒688を記録。クラストップタイムとなった。Bドライバー予選は冨林が担当。上位は接戦模様となったが、マシンのパフォーマンスを最大限引き出す走りを披露し、2分12秒613を記録。わずか0.154秒届かず2番手となったが、A・Bドライバーの合算タイムでトップとなり、今季初ポールポジションを獲得した。

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 前半戦は苦しんでいた分、予選後には冨林をはじめ各メンバーからも安堵の表情が見られた。

◆5時間耐久の決勝レース
◆いつもと違う作戦が功を奏する

 日曜日の決勝レースは5時間耐久のフォーマットで行われ、途中に3度のドライバー交代を伴うピットストップが必要となる。今回は冨林を最初と最後のスティントに起用し、中盤を水野&石井が務めるという作戦でスタートを切った。

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 ST-4クラスポールポジションの41号車は序盤こそトップを守ったが、後方から迫ってきた86号車「TOM'S SPIRIT GR86」と白熱のバトルを繰り広げた。5時間と長丁場のレースではあるものの、1スティント目でトップに立って全体の主導権を握れるかが、後半に向けては重要な要素となる。

 冨林もできる限りの応戦をしたが、9周目の90度コーナーでトップの座を明け渡すことなった。その後、2台の差がは広がっていたが、第2スティント以降でのチャンスをものにするために、着々と周回を重ねる冨林。スタートから1時間35分が経過した40周目に1回目のピットストップを行ない水野に交代した。依然として86号車がリードする展開が続いたが、水野も粘り強く周回を重ねた。

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◆ガス欠になるかも!? しかしチャンスが訪れた

 一進一退の展開が続く中、予想外の事態が発生した。ゴールまで燃料が足りなくなることが判明し、コース上でのマシンストップを回避するため69周目に給油のみのピットストップ。これでタイムロスになったのだが、逆に言えばゴールまで燃費を気にせずにプッシュできるということで水野は再び追い上げを再開。79周目のピットストップで石井がマシンに乗り込んだ。

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 この直後、待っていた“チャンス”が訪れる。開始から3時間30分が過ぎた91周目の5コーナーで86号車がコースオフを喫した。グラベルエリアにマシンが止まってしまい復帰に時間がかかったため、この間に41号車が逆転しトップに立ったのだ。

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 その後も石井はミスなく周回を重ね、チェッカーまで残り1時間15分を切った96周目に最後のピットストップを敢行。冨林が再びマシンに乗り込んだ。

◆後続に30秒以上の差をつけて今季初優勝!

 終盤にはほかのクラスで火災に見舞われるアクシデントが発生するなど、最後まで気の抜けないレース展開となったが、冨林は30秒以上のリードをしっかりと守り抜きチェッカーフラッグ! 41号車としては待望の初優勝を手にした。

 これで、ランキング首位の60号車「全薬工業 G/MOTION'GR86」との差を1.5ポイントにまで縮め、逆転チャンピオンの可能性を一気に押し上げたのだった。

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◆関係者コメント

デルタモータースポーツ 田中延男代表

 「冨林とは、毎年必ず参戦しているどこかのカテゴリーでチャンピオンを獲る。彼との約束ではないですけど、それをやり続けないと来年がないという恐怖心を常に持って臨んでいます。今回TRACYさんがすごくいいクルマを作ってくれて、それを最大限引き出せたレースだったと思います。僕自身としてはST-3クラスに出ている1台と、ST-4クラスの41号車でチャンピオンを獲りにいくのが目標です。なので、今回勝てたことは大きいです。この流れで残り2戦に期待ですね」

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水野 大選手

 「突然の給油に関しては想定外のことでビックリしましたけど、練習走行でやっていた燃料チェックでも確実に戻ってこられるというデータがあったので、冷静に対処できました。すごくリスペクトできる選手がたくさん参戦していて、しのぎを削って戦っているST-4クラスで勝てたことは、うれしいです。TRCAYさんが作ってくれるクルマは本当に乗りやすくて、いつも信頼しています。次の岡山はTRACYさんにとってコース的には地元になるので、そこで戦えるというのはアドバンテージになると思います。ウェイトハンデは増えますが、次の岡山もしっかりと取りこぼしのないようにして、最終戦の富士に向かいたいと思います」

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冨林勇佑選手

 「これまで富士、SUGOで戦ってきてストレートスピードが足りない印象でしたが、今回に向けてチームがすごく頑張ってくれて、周りと同等の状態でもてぎを走れました。ブレーキもWINMAXさんが良いものを作ってきてくれました。トータルでクルマが良かったです。途中に燃料を吸わなくなってしまう症状が出て燃費を気にしながら走っていましたけど、後ろに追いつかれないペースで走れました。順調に見えて色々ハプニングもあったレースでしたが、本当にみんなが頑張ってくれたおかげで勝つことができました。今回クルマが改善したことで最終戦の富士も力強く戦えるのではないかなと思います。そのためにも次の岡山で予選ポールを獲って、決勝では表彰台は最低でも獲得したいです!」

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石井宏尚

 「正直、もてぎに関しては自分たちのクルマは厳しいと思っていたので、こんなに良い結果になるとは誰も思わなかったです。チームが頑張ってくれたおかげで、これまで課題だったストレートスピードが周りと同じになって、ちゃんとストレートで勝負できるクルマになりました。ただ、2人が走路外走行を何回かやっていたらしくて、僕のスティントで“次やったらペナルティになる”という状況だったので、すごく気を使って走っていました。それでも走り方を変えてペースを落とさずに走ることができました。ここまでの経験で、冷静に判断できるようになったのは良かったです。この勝利でチャンピオンも大きく見えてきたと思います」

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