大阪大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校などの国際共同研究チームは、レーザーがプラズマ中を伝播する過程で、高エネルギーX線やガンマ線の光子が2つ衝突することで、電子と陽電子のペアが生成される「電子・陽電子対生成」が起こることをシミュレーションで発見。実験による実証への道筋を提示した。宇宙における物質創成の基礎過程の一つを、既存のレーザーで実証できる可能性を示す成果だとしている。
大阪大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校などの国際共同研究チームは、レーザーがプラズマ中を伝播する過程で、高エネルギーX線やガンマ線の光子が2つ衝突することで、電子と陽電子のペアが生成される「電子・陽電子対生成」が起こることをシミュレーションで発見。実験による実証への道筋を提示した。宇宙における物質創成の基礎過程の一つを、既存のレーザーで実証できる可能性を示す成果だとしている。 光子衝突による電子・陽電子対生成は理論的に予言されていたが、実験室で光子衝突により発生した陽電子はこれまで確認されていない。電子・陽電子対生成の確率は非常に小さく、大量のガンマ線光子を衝突させ、観測に足る陽電子を発生させることが困難であったことがその理由だ。 研究チームは今回、高強度レーザーがプラズマ中を伝播する過程で、レーザー光のエネルギーをガンマ線に変換して局所的に光子衝突を実現し、電子・陽電子対生成が効率的に起こる条件を理論的に導きだした。さらに、発生した陽電子が指向性の強いビームとして飛び出す特性を用いて、光子衝突による電子・陽電子対生成実証への道筋を示した。 研究論文は、米国科学誌フィジカル・レビュー・レターズ(Physical Review Letters)に、2023年8月9日付けで公開された。(中條)