今回のひとこと
「自然言語の研究者でも、生成AIの中でなにが起こっているのかがわからない。そこで、2023年秋には130億パラメータ、2023年度中には1750億パラメータの日本語に強い大規模言語モデルを構築し、原理解明に取り組む」
研究と事業を密接に考えていく
国立情報学研究所(NII)の5代目所長に黒橋禎夫氏が就任した。
黒橋所長は、1994年に京都大学大学院工学研究科博士課程修了。2006年4 月から京都大学大学院 情報学研究科教授として、長年に渡り、自然言語処理、知識情報処理の研究に従事。2023年4月に国立情報学研究所長に就いた。
現在も、京都大学大学院情報学研究科特定教授を併任しており、NIIで8割、京都大学で2割という勤務体系だ。
生成AI分野に精通しており、「ChatGPTの仕組みと社会へのインパクト」と題した黒橋所長のYouTube動画は、すでに3万回以上が再生されている。
黒崎所長は、「情報学は、社会で使われ、人に使われる技術である。そのため、研究と事業を両輪で進めていく必要がある。これまで以上に研究と事業を密接に考えていく」と、新所長としての抱負を語る。
黒橋所長が目標に掲げているのが、「データ基盤から知識基盤へ」の取り組みだ。
「これまでの経験を生かし、AI基盤モデルの研究、開発、運用体制を整備し、知識基盤の構築に取り組む」と語る。
具体的には、ネットワーク基盤や研究データ基盤を拡張し、集まった良質な学術データを集約したAI基盤モデルを構築。これを知識基盤の中核と位置づけ、AI基盤モデルが出力する情報の信頼性を担保する知識トレーサビリティを実現し、学術分野の垣根を超えた研究パートナーの連携を促進するという。
「21世紀はデータの重要性が明確化され、これが学術界に大きな進展を起こした。NIIは、SINET6によるネットワーク整備と、研究データ基盤の整備を行い、データの時代に貢献してきた。今後は、知識が重要になる。知識基盤の構築は、今後10年をかけて実現していく構想であるが、5年後には地盤を作り、できあがったところから事業化をしていくことになる」と語る。
黒橋所長は、2022年12月に、日本学術会議の「未来の学術振興構想」の策定に向けた「学術の中長期研究戦略」の募集において、「知識基盤の構築」を提案。今後は、NIIの所長として、知識基盤づくりの旗振り役を担うことになる。
「AI基盤モデルを中核として、ネットワーク基盤や研究データ基盤を拡張し、集まった良質な学術データを集約したAI基盤モデルを構築する。これにより、様々な学術分野を解釈することができ、専門が異なる研究者同士を、AIがファシリテータとなって橋渡しすることができるだろう。大規模言語モデルに基づいたデータ解釈と、様々な分野の知識の関係づけ、体系化した知識基盤を構築することで、新たな知の創造や、ひとつの学問分野では解決できない複合的な社会課題の解決も支援する。あらゆる分野の研究者が分野横断的に研究を行うことができる環境を構築することを目指す」と語る。
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