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高温超伝導体における37年間の「常識」覆す測定結果=東大など

2023年07月27日 11時49分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、東京理科大学、理化学研究所の共同研究チームは、銅酸化物(CuO2)高温超伝導体において、電荷が微少かつ均一に分布する乱れの無い極めて綺麗な結晶面を見い出し、その電荷の振る舞いを解明。これまで確立されたと考えられていた銅酸化物高温伝導体の電子相図が、CuO2面に乱れがある場合に特化したものであったことを明らかにした。

東京大学、東京理科大学、理化学研究所の共同研究チームは、銅酸化物(CuO2)高温超伝導体において、電荷が微少かつ均一に分布する乱れの無い極めて綺麗な結晶面を見い出し、その電荷の振る舞いを解明。これまで確立されたと考えられていた銅酸化物高温伝導体の電子相図が、CuO2面に乱れがある場合に特化したものであったことを明らかにした。 研究チームは今回、乱れのないきれいなCuO2結晶面を有する多層型銅酸化物高温超伝導体に着目。レーザー光電子分光を用いた電子構造の精密測定、および強い磁場を用いた量子振動測定の結果、注入される電荷が、反強磁性秩序が消える遙か手前の限りなく微量でも、金属的に自由に動き回れることを見い出した。 さらに、周りから散乱により邪魔をされることも稀で、同じ流れとして保てる寿命が極めて長いことが分かった。これらの結果は、反強磁性秩序を電荷注入で完全に消去しなければ電気が流れないことを示している従来の電子相図(キャリア量と共に変化する物質の状態を描いた図)とは相入れないものであるという。 研究チームは、37年もの歴史を経て構築された銅酸化物高温超伝導体の電子相図は、乱れの影響を受けた結晶面特有のものである可能性が高いと述べており、それに代わる、より本質的な電子相図を見い出したことで、高温超伝導研究に新展開が期待される。研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)誌に2023年7月14日付けで掲載された

(中條)

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