ソニーのドコモ向けケータイは
楽しいギミックが満載だった
無類のソニー好きを自称していながら、思い返せば折りたたみケータイの先駆けになった「N206S」に心を奪われてからは、何年かNシリーズを更新し続けていた筆者。
ソニーも折りたたみスタイルに追従すべく、ドコモ版「MSウォークマン」という名を冠した「SO502iWM」を投入します。メモリースティック(64MB)がまるまるケータイに入って、CD1枚分の音楽を録音できたり、CDプレーヤーから直接録音できたり、専用リモコンが付属していたり、バイオレットカラーで当時ブームになっていたVAIOとマッチするカラーなど、ソニーテイストを惜しみなく注入したモデルです。
けれど、あれ? au版の「MSウォークマン」として登場したC404Sの洗練さがないような……。ほかにも「SO210i」「SO503i」という折りたたみタイプを出しましたが、いかんせんデザインが微妙。いくらトレンドを取り入れても、独自機能があっても、持っていてカッコイイ! と思えなければ、手にしたいというところまでたどり着きませんでした。
イマイチ洗練された感がなかったが
エリクソンとの融合で変わった!
やっぱり風向きが変わったのは、ヨーロッパはスウェーデンにある大手通信機器メーカーであるエリクソンとの合弁事業として「ソニー・エリクソン モバイルコミュニケーションズ」となってから。
ソニエリ製のドコモ初号機は、2002年に発売された「SO504i」です。明らかに見た目が洗練され、折りたたみスタイルながら背面にもディスプレーを搭載。プレイステーションで大人気になっていたトロ(どこでもいっしょ)が登場するiアプリ「トロのお部屋」「トロの待受時計」をプリインストールするといった遊び心がありました。
独自性が生まれたのは2003年に発売された「SO505i」。液晶ディスプレーがパカパカと前後に折りたたまるケータイが全盛のなか、180度左右に回転するギミックをもたせた「回転式スタイル」を採用。さらに当時のケータイ電話としては世界で最高となる130万画素のCCDカメラを搭載して、メモリースティックDuoにも対応していました。
筆者がついにソニーのケータイに戻ったきっかけとなったのが、同年に発売された「SO505iS」でした。回転式スタイルはさらに洗練され、ボディーは薄く、マンネリ気味になっていたジョグダイヤルはディスクジョグというホイールタイプに刷新、オレンジというカラーとともにほかのケータイにはないかっこよさ全開だったのです。
背面にあるレンズカバーを開くとカメラが起動して、撮りたいと思ったときにもすぐに撮影できます。メモリースティックDuoを採用して、ソニーのテレビ「WEGA」やビデオレコーダ「PEGA-VR100K」などで録画したテレビ番組をケータイ本体で再生できるという連携機能も備わっていました。
とてもよく覚えているのは、ちょうど同じ頃にテレビで放映していた「仮面ライダー555」に登場したケータイ型変身アイテムとリンクした事もあって、物理テンキーなどに連動したSEを入れて、劇中の音を出せるようにして遊んでいたこと。新しくて、持っていて所有欲を満たしてくれるカッコよさ、そして音楽と動画をモバイルして楽しめるという、オタク魂をゆさぶる瞬間がここにありました。
小型スマホの始祖!
超小さいpreminiの衝撃!
衝撃はここにとどまりません。2004年にソニー・エリクソンが出したのは、超がつくほどのコンパクトなストレートケータイ「premini」です。一応「SO213i」という型番はありますが、それを思い出すのが困難なほど「premini」という名称が浸透しました。
サイズは縦90×横40×厚み19.8mmというコンパクトさと、重さもたったの69gという、おそろしいほどに軽いボディーだったのです。本体はアルマイト処理を施したアルミニウムボディーで、液晶ディスプレーは1.3型(128×160ドット)という小ささで、カメラはなし。驚くほど小さいテンキーは階段状になった「スロープキー」で押しやすくなるよう配慮されています。
画面の大きさと、機能・高機能化を兼ね備えた使いやすさの合理性の結果として折りたたみ型がケータイの最終型だと思われていた中で、そのアンチテーゼとも言うべきストレートかつ極小のボディーデザインには驚かされました。当然、ここまで小さいとメール入力もなかなかに大変で、カメラもなくて、正直なところやりすぎじゃない? と思えましたが、その使いづらさすらもステイタスとするほどのインパクトが「premini」にありました。
その翌年には、「premini-II」が登場。型番は「SO506i」。小さすぎて硬派すぎた初代「premini」からは一回り大きくなって、重さも97gと増量したものの、130万画素のメガピクセルカメラやQVGA表示対応のディスプレーを搭載しました。マジックゲート対応のメモリースティックDuoに保存したATRAC3形式の音楽データも再生できるので、VAIOと連携するには最高のモデルです。
「premini」から大きくなったとはいえ、欲しかった機能が充実したうえに、なにしろ見た目のオシャレさは抜きん出ていたので即買いです。手の中におさまる「premini-II」は最高にカッコイイと思えるモデルでした。
ネットワーク大容量時代到来!
FOMAがスタートしてネットが高速に
2007年には、ドコモの変革期となるFOMA端末「SO902i」が登場します。ストレート小型ボディーは、Premini を引き継いたデザインであり、液晶ディスプレーは1.9型(QVGA)を搭載。カメラは318万画素のCMOSイメージセンサーを備えて、オートフォーカスにも対応し、動画撮影時には手ぶれ補正もあるなど、カメラ機能もかなり優秀なものになってきました。
FOMAは通信規格でいうところの3Gで、 大容量iアプリが利用できたり、おサイフケータイが使えるなど一挙に現代のインフラに近い進化を遂げた頃でした。それと同時にOSにはSymbian OSをベースにしたものを採用し、マルチタスクができるようになるというメリットもあったのですが、それまでサクサク動いていたケータイが突如としてもっさりな挙動になってしまって、何か釈然としないものがありました。
このあと「SO902i」をベースにIPX7等級の防水機能を搭載した「SO902iWP+」というモデルも発売されました。
ケータイの日々の進化はすさまじく、この頃の筆者は出るたびに新機種を購入することがもはや使命となり、ソニーはもちろん新しく出てくるケータイを調べてはあーでもないこーでもないと語り合う事が生きがいのようになっていた頃でした。
まだスマートフォンがこの世を席巻する前の時代、この後ブラビアやウォークマン、サイバーショットという名を冠したケータイが、また僕たちの心を掴んでいくのです。
筆者紹介───君国泰将
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