SORACOM Discovery 2023の初日はユーザー企業のテクノロジー対談
ソラコム、ヤマト運輸、Go、フジテックが語る「IoTとAIの可能性」
生成AIの登場はソラコムにとってチャンス
今回の特別講演のテーマである「IoT×AI」についても議論が行われた。
入山氏は、「生成AIの登場は、ソラコムにはとってはチャンスだと考えている。ChatGPTによって、プログラムを書くことで、IoT連携が促進されることになる」と指摘。ソラコムの齋藤氏も、「つなぐことがソラコムのビジネスであるが、AIの民主化によって、専門家以外でもAIが使えるようになると、つないだ先のデータに対しても新たなサービスが提供できるようになるだろう」とした。
ソラコム社内では、「これまでのIoTは、自分の会社のなかだけで成立しているイントラネット・オブ・シングスに留まっていた」という議論があるという。「IoTの領域に対して、ChatGPTなどが広がれば、異なる企業同士が有機的につながり、顧客にとって最もいいサービスが提供できる世界がやってくる。横展開の広がりに期待したい」(入山氏)と述べ、ソラコムの齋藤氏も、「業界ごとに異なるデータフォーマットを、AIがひとつに統一し、連携ができるといったことにも期待したい」と語った。
GOの青木氏は、「AIを活用することで、開発効率を高めることに期待している。すでにコード生成にChatGPTを利用している」としたほか、ヤマト運輸の櫻井氏は、「これまでの物流はIoTで進化してきた。今後は、AIを活用することで顧客サービスを高度化したり、効率的な配送ルートの選定などができたりするようになるだろう」と発言。
フジテックの小庵寺氏は、「定期点検の際にも、保守員が現場に最短ルートで行けるようにしたり、災害発生時に問い合わせが集中した際にAIによる自動応答に採用したりといったことも考えている。社内でもSlackを入口にしてChatGPTを活用しており、説明会には3000人の社員のうち、500人が参加した」などと述べた。
ソラコムでは、ChatGPTを社員全員が利用できるようにしており、サポート業務に利用したり、メールのひな型文章の生成に利用したりといったことを検討しているという。入山氏は、大学で使用する試験問題の作成にChatGPTを利用しているという。
また、宅配やタクシーの利用は、11月から12月にかけて集中する傾向があり、平時の需要や集中時のデータのほか、気候やイベントなどの情報を加味して、AIによって精度が高い需要予測を行い、最適な配車やドライバーの確保につなげたいという声もあがった。
総合格闘技のIoTを900社のパートナーと支援
一方、IoTの活用についても、それぞれの取り組みから言及。GOの青木氏は、「IoTは、手段のひとつであり、手段の自己目的化になるとうまく行かない。データの欠損があったり、すべての機器間連携ができなかったりということを前提として開発したほうがいい。そうしたないとIoTは失敗する」と提言。「今後はクルマと街との接続にも取り組み、モビリティを中心としたつながりへと広げていきたい」とした。
また、フジテックの小庵寺氏は、「IoTは、まずは小さく始めることが大切である。失敗するのであれば、早く失敗して、別のやり方を考えるべきである」と指摘しながら、「エレベーターやエスカレーターを、安心、安全に使ってもらえるように、IoTやAIを積極的に活用したい」と述べた。ヤマト運輸の櫻井氏は、「IoTとAIを組み合わせることで、日本のサービス業の生産性を高め、地域課題の解決にも取り組みたい。そのためには、さまざまな企業と関わっていくことも必要である」とした。
ソラコムでは300以上の事例を公開しており、IoTの実現に向けた支援を行なっているが、「IoTは総合格闘技と言われるほど、様々なテクノロジーが関連しており、1社で解決することが難しい。ソラコム自らが相談に乗るだけではなく、900社以上のパートナーを活用した支援も行っていきたい」(ソラコムの齋藤氏)と述べた。
入山氏は、「人手不足などの影響もあり、日本の現場が大変になってきている。しかもイノベーションが求められている。ここにIoTやデジタルが入ると、日本の現場力がもう一段高まり、日本全体の競争力を高めることができる。また、現場から数多くのデータが収集されるが、データの選別や仕分けも重要になるだろう。ここにはAIが活用できる。IoTとAIは密接に関わるものになる。これから面白い時代が訪れる」と語り、特別講演を締めくくった。