東京で一番都会っぽいイメージの区といえば、10人中9人は港区というはずである。でなきゃ「港区女子」なんていう憧れてるんだか揶揄してるんだかよくわからない言葉は生まれない。港区でイメージする場所といえば、青山や赤坂や六本木や麻布なのだから、華やかな場所には違いないわな。
という導入からわかるように、今回は「港区猫」である。今月、たまたま港区に仕事で出かける機会が何度かあったので、せっかくの都会だから写真でも撮ろうとぶらぶらしてたら、港区猫に出会ったのだ。そんな港区猫の第一弾がこれだ。
華やかさのかけらもない写真ですまん。全然港区っぽくないとこがいいんだけど、大都会でも、おしゃれストリートからちょっと奥へ入れば古い住宅街の名残があり、マンションと立派な新しい家と分譲住宅と、時には古びた家屋も残っていて、そのないまぜになった感じこそが東京だなあと思うのだ。そして、猫はこういう場所にいがちなのである。
ここも、ぱっと見は廃屋(実際にどうかは知らない)なのだけど、すぐ横には高級タワマンが建ってたりするギャップがいい。伸びた木々の隙間から顔がちゃんと見えるアングルを探して望遠で捉えてみた。ちゃんと去勢もされてるのだった。
続いて、別の日に別の場所で出会った港区猫。幹線道路からも駅からもちょっと離れた住宅街で、一戸建てが多く並ぶエリアだ。家と家の間にある給湯器の上に何かもこもこがいる、と思ったら、猫だったのである。
平日の昼間だし、誰もお湯を使ってなければ熱くはないんだろうけど、真夏に見ると、余計に熱そうで落ち着かない。
こっちの不安な気持ちが伝わったのか、ちょこんと飛び降りて歩いてこようとして、うーん、と伸び。猫って歩き出す前にストレッチするんだけど、そのときのポーズや表情って刻々と変わるから面白い。
今まさに伸びきろうという瞬間もいいけど、伸び終わって、元に戻る途中のちょっと間の抜けた顔も捨てがたい。
まあ、伸びの途中のカッコいい瞬間を狙うなら、タイミングを逃さないこと。そして、伸びたあと、ちょこんとすまし顔で座ったのが冒頭の写真だ。
この猫を撮ってたら、近所のおばさまがすぐ近くに立って掃除をしてた。商店ひとつない昔からの住宅街であり、カメラを持った不審者と思われても困るので、声をかける。もちろん猫の話題だ。
経験上、昔からずっと住んでる人のほうが怪しがらずにちゃんと話をしてくれる。すぐ横のマンションのオーナーだそうで、リアル港区おばさまである。それで掃除をしていたのだな。
猫の話を聞くと、人懐こい猫がいたのだけど亡くなったとか、給湯器の上にいた猫の名前とか(聞いといて忘れてしまった)、ほかに2匹くらいいるなど、猫世間話をしてくれて楽しい。黒猫が比較的人に慣れているのだけど、今日は見ないわねと言うや否や、すぐ横の小さな空き地にキジトラのハチワレが一匹出現。こちらは警戒心が強いほうだそうだ。
そのキジトラハチワレが、ひょっこり道路に出てこっちを見てる。
そろそろおなかが空いてきたのかねえと言う。ああそうか、カメラを構えた知らない人間が一緒にいるから、こちらへ来たくても来れないのか。それは悪いことをした。
というわけで、挨拶をして帰ろうとしたら、ととととととっと黒猫が走ってきたのである。ああ、君もおなかが空いてたのね。
かくして、港区っぽい華やかさは全然ないけど、港区で生きてる港区猫たちなのであった。
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筆者紹介─荻窪 圭
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老舗のデジタル系フリーライター兼猫カメラマン。今はカメラやスマホ関連が中心で毎月何かしらのデジカメをレビューするかたわら、趣味が高じて自転車の記事や古地図を使った街歩きのガイド、歴史散歩本の執筆も手がける。単行本は『ともかくもっとカッコイイ写真が撮りたい!』(MdN。共著)、『デジタル一眼レフカメラが上手くなる本』(翔泳社。共著)、『古地図と地形図で楽しむ東京の神社』(光文社 知恵の森文庫)、『東京「多叉路」散歩』(淡交社)、『古地図と地形図で発見! 鎌倉街道伝承を歩く』(山川出版社)など多数。Instagramのアカウントは ogikubokeiで、主にiPhoneで撮った猫写真を上げている。Twitterアカウント @ogikubokei。ブログは http://ogikubokei.blogspot.com/
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