4年ぶりの会場開催となったSORACOM Discovery 2023基調講演レポート
生成AI×IoT、グローバル展開、衛星通信など 今年もソラコムはトピック満載
大規模IoTを支えるVPGや人的サービスを拡充 三菱電機も登壇
続いて大規模なIoT案件に向けた取り組みを披露したのは、ソラコム 上級執行役員 SVP of Engineeringの片山暁雄氏。SORACOMプラットフォームの総回線数が数倍になることを想定し、スケールするための拡張を継続していることをアピール。
また、プロダクトマネージメントチームでは、大規模顧客向けの機能リリースを検討しているという。新機能として追加された「スイッチユーザー」は、文字通り1つのソラコムアカウントで、複数のソラコムアカウントの操作が可能になる機能だ。
IoTデバイスと自社システムを閉域で接続するためのネットワークゲートウェイであるVPG(Virtual Private Gateway)もアップデートが行なわれた。まず既存のVPG Type-Fは収容回線数の上限を1万から10万に拡大。また、回線数による料金テーブルを廃止し、実質的な値下げに踏み切った。VPGのIPアドレスレンジやオンラインセッション数などの情報表示も可能になった。10万回線以上の大規模なIoTに対応した「VPG Type-G」も新たに追加された。
さらにVPG Type-F/Gにはルーター配下のデバイスにNAT設定なしで直接アクセス可能にする「SIMベースルーティング」も追加された。「大規模なネットワークをきれいに作ってもらえるし、VPGで一元的にネットワークが管理できるので、管理の簡素化にもつながる」と片山氏はアピールする。
人的な支援に関しては、エンタープライズ向けのサポートプランやプロフェッショナルサービスも拡充している。SORACOM Booster Packと呼ばれるワークショップ型のDX推進支援サービスでは、2~4日間で集中的なワークショップを実施し、次のアクションにつながるレポートも提供する。
SORACOM Booster Packのユーザーとして登壇したのは三菱電機 執行役員 DXイノベーションセンター長の朝日宣男氏。同氏は、メインフレーム、オープンシステム、クラウドというITの進歩と民主化の時代を振り返りつつ、「夢はずっと1つの方向を目指している」と述べ、1988年にアップルが提唱したKnowledge Navigatorが、2022年にChatGPTという形でほぼ実現したのでは?と持論を展開した。
現在、三菱電機は循環型デジタルエンジニアリングを標榜し、縦割り化していた事業本部を再編し、さらに横串のソリューションを展開している(関連記事:「循環型デジタル・エンジニアリング企業」を目指す三菱電機の取り組み)。これを実現するために朝日氏はAmazon流のフライホイール理論をベースに、パートナーを巻き込んでソリューションを構築するサイクルを提案しているという。たとえば、高齢者の見守りサービスでは給湯器と冷蔵庫、ルームエアコンが連携していく。SORACOMサービスの導入事例としては、ため池の水位をブイ型水面センターで計測し、スマホで確認できる監視サービス「みなモニター」を披露した。
IoTストア、ソラカメ、SMSサービスも着実に機能強化
続いて片山氏は、SORACOM IoTストアの取り組みも披露した。今までのPoC向けデバイスのみならず、電池駆動や長期利用、屋外利用、マルチコア×超低消費電力などの特徴を持つ商用デバイスを1個単位で購入可能にしている。豊富な接点入出力インターフェイスなど、ニーズに特化したデバイスも拡充しているという。
IoT時代のクラウドカメラサービスとして昨年から展開している「ソラカメ(Soracom Cloud Camera Services)」も紹介した。ATOM Cam2や360度・上下左右に稼働するATOM Cam Swingなど安価で高機能なカメラを「IoTの目」として用いることができるソラカメ。モニタリングやモーション検知、クラウド常時録画などを機能を持ち、APIでの連携も可能で、昨年来から導入事例も相次いでいるという。
このソラカメもアップデートされ、カメラとルーターをセットにした「ソラカメ専用セルラーパック」の最大通信速度が大幅に向上。また、動きがあった部分だけ録画し、通信データを大幅に削減できる「クラウドモーション検知“無制限”録画ライセンス」も追加された。さらに、ソラカメ×AIの実践ノウハウが豊富なAIパートナーを紹介する「ソラカメAIマーケット」も新たに発表された。
また、APIを利用したSMS送信サービスSoracom Cloud SMS Deliveryに加え、SMSを利用した多要素認証サービスである「Soracom Cloud MFA」も新たに追加した。ログイン画面など認証や本人確認が必要なところに組み込み、SMSでコードを送信できる。音声での認証もサポートする予定で、2023年第3四半期をめどに提供を開始する。
最後、安川健太CTOはデータ解析用のデータウェアハウス「SORACOM Query」と既存のカメラをクラウド対応させる「SORACOM Relay」などを紹介し、SORACOM AirからRelayに至るまでアルファベット順で作ってきたサービスがついにSoracomのSまで一巡したことをアピールした。SORACOM QueryやSORACOM Relayのほか、Satellite NB-IoT、ChatGPT対応など、新サービスにより踏み込んだ安川CTOの午後の基調講演は別途レポートする。