東京大学と東ソーの共同研究チームは、従来のセラミックスの概念を覆す、しなやかで割れにくい、金属に匹敵する高い靭性(材料の粘り強さ)を発現する高強度ジルコニアセラミックスの開発に成功した。
東京大学と東ソーの共同研究チームは、従来のセラミックスの概念を覆す、しなやかで割れにくい、金属に匹敵する高い靭性(材料の粘り強さ)を発現する高強度ジルコニアセラミックスの開発に成功した。 研究チームは今回、ジルコニアの強化機構を基に、セラミックスの弱点である脆さを克服する「微細組織仮説」を立案。それを具現化する原料粉末を合成し、成形・焼結してジルコニアセラミックスを生成した。さらに、同セラミックスの微構造解析と力学特性評価により、微細組織仮説が正しいことを検証し、金属に匹敵する高い靭性を発現する世界最高性能の高強度ジルコニアを開発することに成功した。 ファインセラミックスの一種である高強度ジルコニアは、歯科材料、粉砕ボール、装飾材料、光ファイバー用接続部品、産業機器材料などに広く用いられている。アルミナ、窒化ケイ素などの他のファインセラミックスに比べて優れた力学特性を有する材料として知られているが、金属材料と比較すると靭性は劣っており、用途は制限されていた。 今回、革新的なジルコニアセラミックスを開発したことにより、高強度材料での市場成長に加えて、高度な信頼性が要求される工具、筐体、生体・医用材料等の広範な分野へ利用が進むことが期待される。研究論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS: Proceedings of the National Academy of Sciences)のオンライン版に2023年6月26日付けで掲載された。(中條)