欧州連合(EU)の議会が、包括的なAI規制案を採択した。
EUのAI規制は、Chat GPTなどの生成AIに対する規制を含む内容で、主要国・地域の中でいち早くAI規制に踏み切るものだ。EUも「世界初の包括的AI法」と位置付けている。
今後、世界各国がAI規制を法制化するうえで、重要なモデルになりうるものと受け止められている。
EUは今後、加盟各国との間で法案の詳細を詰め2023年末までの合意を目指すという。
AIが生成したコンテンツには開示義務
現時点で最も注目を集めるのは、生成AI規制の内容だ。EUによれば、生成AIに対する規制は、以下の3点に集約される。
- コンテンツがAIによって生成されたことを開示
- 違法なコンテンツを生成しないようにモデルを設計
- 学習に使用された著作権保護されたデータの要約を公開
どれも重要だが、1番目の開示義務は影響が大きそうだ。
たとえば、記事の要約や見出しを作成する際に、AIを利用しているウェブメディアはすでに存在する。
こうしたメディアに対しては、記事の末尾あたりに「この記事の要約部分と見出しの作成には、ChatGPTを使用しました」といった表示が義務づけられることになりそうだ。
違法なコンテンツは、そもそも生成しない
2番目については、AIを開発・提供している企業側も対応が追いついていない領域であるだろう。
課題の多い領域としては、個人情報の保護が挙げられる。
生成AIに対して、「有名人の自宅の住所を教えて」と質問したら、答えてくれるのは、個人情報保護法の観点で、明らかに問題だ。
それ以上に、AIがウェブからデータを収集し、学習をするうえで、こうした情報は収集されるべきではない。
個人情報の取り扱いには課題も
日本の個人情報保護委員会も、6月2日にChatGPTを開発・提供するOpenAIに、個人情報の取り扱いに注意するよう促したことを公表している。
個人情報保護委員会は同社に、「収集する情報に要配慮個人情報が含まれないよう必要な取組を行うこと」として、そもそもデータの収集から除外するなどの措置を求めている。
ここで登場する「要配慮個人情報」は、「不当な差別や偏見その他の不利益」につながる可能性がある、個人情報を指す。
たとえば、ある人が、これまでにどんな病気にかかったかや、出自などに関する情報が含まれる。
このあたりは、フィルターをかけるのはけっこう難しいのではないか。
有名人の自宅住所を答えてくれるAIは問題だが、反対に、今夜食事する予定のレストランの住所を教えてくれないAIがあるとすれば、性能が不十分だと批判されるだろう。
この記事を執筆するうえで、マイクロソフトのBing AIに、あるレストランの住所と、ある有名人の自宅の住所を質問した。
レストランについては、問題なく回答してくれた。有名人の住所については、過去に住んでいたと思われる地域と集合住宅の名前が出てきた。現在の住所については、「不明」とのことだった。
現状では、機能が追いついていないようだが、有名人の自宅の住所を尋ねたら、「個人情報については、お答えできません」と回答するのが、「責任あるAI」の姿だろう。
著作権の取扱いにも開示義務
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