【ピラティスインストラクターの健康的ラーメンライフ♪】第22回
沖縄から金町へ、そして世界を目指す『ramen club トトノエ』の心も体も整うラーメン
2023年06月23日 12時00分更新
2023年3月19日、東京・金町に新店『ramen club トトノエ』がオープンした。店主の高橋渉さんは、行列の人気店『麺処ほん田』出身。独立後は、2019年8月23日に沖縄で『麺処 わた琉』を開業し、東京の醤油ラーメンを広めてきた。沖縄でおよそ3年、手応えを感じた高橋さんは本拠地・東京に戻り、店名も新たに再始動。その理由は、世界を目指すため! 気になるお話とラーメンをいただきに伺った。
沖縄から舞い戻り、“心も体も整うラーメン”で世界を目指す!
高橋渉さんは、高校生の頃から飲食店でアルバイトをしながら、いずれは飲食店の中でもトップを目指し、世界で働きたいと思っていた。そこで選んだのがフレンチレストランだ。「働いてみて、フレンチの技術だけじゃなく、もっといろんなことを見てみたい。日本人だからこそ海外で伝えられるものがたくさんあるはずだと、自分にとってそれはラーメンだと思ったんです」。高橋さんは、ラーメンの文化を世界に広めに行きたいと、『麺処ほん田』で働き始める。
2年の修業後、さて独立となったとき、大好きな沖縄が頭に浮かんだ。「海外でやりたいっていう目標があったので、まだラーメン文化が根付いていない土地で、醤油ラーメンを広めたいと、挑戦したくなったんです」。単身沖縄に渡り、2019年に『麺処 わた琉』をオープンした。
沖縄でおよそ3年、常連客は増え、地元の人に愛される店を作り上げた高橋さんは、沖縄で醤油ラーメン店が増えてきたことで、次のステップに進む決意をする。「僕がやったことで醤油ラーメンの良さを広められたかな」。そして、2022年6月に沖縄の店を閉め、新店を立ち上げるため東京に戻ってきた。
東京に戻り、物件を探しながらお世話になったのが、『らぁめん小池』『キング製麺』など次々と人気店を手掛ける小池グループ代表・水原裕満さん。「縁がありまして、水原さんのところで働かせていただいたんです。本田さんとは考え方が違って、こちらでもいろいろ教えてもらって勉強になりました」。その間に、物件の相談もしたところ、水原さんのお墨付きをもらった金町にしたとか。
2人の優れたラーメン店主に学び、2023年4月、金町に『ramen club トトノエ』を開業。まずは、3月から告知せずにプレオープンしていた。「沖縄とは水質や設備が違うのと、自分で作りたい味が決まるまで、プレという形をとらせてもらって、調整してからの本オープンでした」と高橋さん。
店名も以前とは大きく変わった。「“ramen club”は海外に行っても使えるような名前に、“トトノエ”は体が整うようなラーメンをゆっくり落ち着いた雰囲気のなかで食べてもらって、心も体も整えてもらいたい」という思いがこめられている。
昆布水つけ麺と醤油らぁ麺のダブル看板で金町に新風を起こす
心も体も整うラーメンということで、券売機を見るといくつかメニューが。おすすめの一杯を伺うと、「初めてだったら醤油らぁ麺がいいと思うんですけど、昆布水つけ麺とダブル看板にしてるので、どっちもおいしいです(笑)。2人で来られたらシェアしてもらってもいいですね」ということで、まずは昆布水つけ麺からお願いした。
地鶏や豚に、浅利、煮干しなどの魚介を加えたベースのスープに、日本各地の5種類の醤油を使った醤油ダレや鮑・赤酒などを合わせたつけ汁は、麺をつけて啜ると幾重にも重なる深い旨味が広がる。「沖縄では貝は入れないスープだったんですけど、こちらでは浅利とかが入ってます。あとは、地鶏を使えるのが大きいですね。沖縄では使おうとしても送料がすごいかかっちゃうので」と高橋さん。沖縄とアプローチは同じながら、金町で新しい食材が使えるようになったことが大きく違うところだ。
きれいに整えられた麺線に、麺箱を見ると「心の味食品」の文字が。松戸の名店『中華蕎麦とみ田』の製麺所だ。出身の『ほん田』とは、同じ麺屋こうじグループで、そのつながりも大きい。「金町に店を出すので、松戸のとみ田さんが隣駅と近いんで挨拶に行ったら、麺を卸してくださることになったんです。とみ田さんには大変お世話になってるので、恩返しになればと思って使わせていただいています」と、真摯な思いを語ってくれた。さらに、とみ田の麺は注文した日の夜中に打ち、翌朝納品ということで、自家製麺に近いフレッシュな麺だという。確かに、そのまま食べても美味しい麺だ。
あえて2枚看板で、昆布水つけ麺を出す理由もあるという。「昆布水のつけ麵を出す店もありますけど、まだまだ浸透してない。一般の方々は『昆布水ってなに?』となるじゃないですか。それを食べてみて驚いてほしいなっていうのもありますね」。さらに金町では今までなかったタイプのラーメン店ということもあり、お客様から「こういうのが食べたかった!」「金町にこういうラーメンないんで嬉しい」という声をいただくと、高橋さんは嬉しそうに語る。
幅広い食材で、よりわかりやすい味の変化と半歩先の味を目指して
食材の広がりが出たことで、味の構成も変化している。「もともと食べている間に徐々に味が変化していくというラーメンの考え方が好きで。味変や一味や胡椒などで味を変えるのではなく、出汁とか、チャーシューの旨味とかで味が変わってくっていう構成が好きだったんです。それが東京ではより濃く、よりわかりやすく出てるんじゃないかなと思いますね」ということで、味の変化を楽しむために、醤油らぁ麺もいただくことに。
らぁ麺はスープをそのまま飲むので、飲み進めると味の変化がよくわかる。地鶏や豚の動物系と貝など魚介、醤油ダレがバランスのよいスープに、チャーシューの肉汁が溶け出すとまた違った味わいに。
中でも、ひときわ目を引くのが黒メンマ。食感もよいけど、甘旨い味がしっかりしみ込んだメンマはおつまみにもぴったりな美味しさ。他にも、味玉など珍しい食材がメニューに並ぶ。「ちょっと食べてみたいなっていうのを意識して、食べたことのある味の半歩先を目指してます」と、食材にも高橋さんのこだわりが伺える。
沖縄での出店経験から、沖縄らしい一品「ジューシー」も取り入れられている。「沖縄の炊き込みご飯なんですけど、地元の人が沖縄そば屋でソーキそばと一緒に食べるソールフードですね。向こうで僕が成長した部分とか、いろいろ勉強になった部分もたくさんあるんで、それをこっちでも出したい」と、高橋さんの思いとともに沖縄の文化を金町に運んでくれた。
それだけではない。実は、スタッフも沖縄から来てくれたのだ。「もともと働いてくれていたスタッフが、みんな沖縄から来てくれてるんですよ。ありがたいですね」という高橋さん。スタッフの七凪海さんに理由を伺ってみると、「もともと沖縄の店の常連だったんです。味がとにかく好きで、沖縄にいる時も週3くらい通ってて(笑)。それで働くようになったんです。味も好きですが、一緒にいるだけで元気をもらえる人なんです!」と、ラーメンだけじゃない高橋さんの人柄も『ramen club トトノエ』の魅力のひとつだ。
そんな高橋さんの目標は、世界にラーメン文化を広めること。「ミシュランほしいですね。最終的には海外を目指してますけど、まだ先の話なので。まずは沖縄から来てくれたスタッフが笑顔で働いてもらえるような環境を作りたい。遠くの話じゃなくて、スタッフもお客様も目の前の人たちに喜んでもらえるようにしたいですね。いま、ありがたいことにたくさんお客様に来ていただいて、レギュラーの仕込みも追いつかない感じですが、限定も準備が整い次第できたらなと考えてます」。
目の前のことを大切にしながら、多くの人に食べてもらいたいと語る高橋さん。食べる人を元気にしてくれる“心と体が整うラーメン”が、いつか世界に羽ばたく日が待ち遠しい!
ramen club トトノエ
東京都葛飾区東金町1-20-14 吉六ビル 1F
火・水・金・土・日11:00~14:30 18:30~21:30
木・日11:00~14:30
月曜休
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。臨時休業など、詳しくはお店の公式ツイッターをご確認ください。
大熊美智代 Michiyo Okuma
ラーメン大好きなフリーランス編集者・ライター。ピラティスやヨガのインストラクター、ヤムナ認定プラクティショナー、パーソナルトレーナーとして指導も行なっており、美容と健康を心がけながらラーメンを食べ歩く日々。ラーメンの他には、かき氷、太巻き祭りずし、猫が好き。
本人Twitter @kuma_48_kuma
Instagram @kuma_48anna