筑波大学などの研究チームは、有機発光ダイオード(有機EL)より低コストな次世代省エネ発光素子として注目されている発光電気化学セル(LEC)の動作メカニズムを、電子スピン共鳴法を用いて解析。注入された電荷が発光層上に分布している動作メカニズムを解明した。
筑波大学などの研究チームは、有機発光ダイオード(有機EL)より低コストな次世代省エネ発光素子として注目されている発光電気化学セル(LEC)の動作メカニズムを、電子スピン共鳴法を用いて解析。注入された電荷が発光層上に分布している動作メカニズムを解明した。 研究チームは、代表的な有機発光材料のスーパーイエローを用いたLECについて、電子スピン共鳴(ESR)法を用い、LECが動作している状態で電荷のスピン状態を観察。LECに加える電圧が高くなるにつれて発光もESRも増えることが分かった。さらに、観測した信号の理論解析から、ESRの増加の起源はスーパーイエローに電気化学的にドープ(注入)された正孔と電子であることを突き止めた。同チームによると、ドーピングの進行が輝度の上昇と相関していることから、電気化学的にドープされた電荷が発光層上に分布していることが動作メカニズムとして示唆されるという。 有機性発光素子の一つであるLECは、有機ELと比べて構造が簡単で柔軟性にも富むため低コストでの製造が可能であり、有機ELより低い電圧で駆動できることから次世代の省エネ発光素子として注目されている。だが、動作メカニズムが微視的なレベルでは未解明のままであることが実用化の障壁となっていた。今回の成果が、LECの製品開発を推進することが期待される。 研究論文は、コミュニケーションズ・マテリアルズ(Communications Materials)に2023年6月2日付けで掲載された。(中條)