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A620チップセット vs. B650チップセット

A620 vs. B650マザーボード Ryzen 7 7800X3Dに最適なのはどっち?

文●加藤勝明(KTU) 編集●ASCII

提供: 日本ギガバイト

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電源回路の発熱は大丈夫か?

 ゲームではRyzen 7 7800X3Dのパワーは定格の半分程度で動作していた。PCでゲームだけ遊ぶ限りは、A620マザーでも何の問題もなく、かつGPUがRX 7900 XTXであっても負けることはない、ということが分かった。

 しかし、気になるのは電源回路の冷却である。今回テストしたA620M GAMING Xはヒートシンクが付いているが、B650M AORUS ELITE AXに比べると明らかに容積が小さい。

A620M GAMING Xの電源回路部分を冷やすヒートシンクは回路規模に合わせたシンプルなものが採用されている。上位チップセット搭載マザーに比べるとシンプル過ぎる気がするが……?

 そこで、Handbrakeで動画を3本連続でエンコードし(条件は前掲の検証時と同一)、その際のクロックやVRM MOS温度等を追跡した。情報の取得には「HWiNFO Pro」を使用している。後述するEPS12Vの電力消費を追跡するためにElmorLabs「PMD」も併用している。

CPUクロックの推移:Ryzen 7 7800X3Dでエンコード中のもの

CPU Package Powerの推移:Ryzen 7 7800X3Dでエンコード中のもの

CPU Package Powerの推移:Ryzen 7 7800X3Dでエンコード中のもの

EPS12Vの消費電力:Ryzen 7 7800X3Dでエンコード中のもの

 ここでのデータは様々なゲームで観測されてきたデータを裏付けるものだ。まずCPUのクロックにおいてはA620とB650の間に差というべきものは存在せず、むしろA620の方がわずかに高い値を示す時もある。そしてCPU Package Powerに関してはCPUをフルロードに近い状況に持ち込んでもなお、A620の方がB650よりも高い。正確を期すならA620M GAMING Xの方がB650M AORUS ELITE AXよりも高いという表現の方が適切だろう。

 CPU Package Powerの差に関して言えば、EPS12Vを流れる電力はどちらの環境でも80~90Wあたりを変動しつつ消費しているが、平均値をとった場合わずかにA620の方が高い(約87Wに対し約85W)という結果が出ている。

 しかし、VRM MOS温度に関しては、明らかにA620M GAMING Xの方がB650M AORUS ELITE AXよりも7度ほど高い値を示している。A620マザーのヒートシンクが小さいのだから温度が上がって当然といえるが、それでも54度程度で頭打ちになっている。これは今回の検証で使ったA620M GAMING Xによるデータであるため、すべてのA620マザーでも大丈夫だと断言できるわけではないが、A620M GAMING XはA620マザーの中でも装備がシンプルなマザーであることを考えると、一般論として考えても良いのではないだろうか。すなわち、Ryzen 7 7800X3Dを使う分にはA620マザーで問題ないのだ。

Ryzen 9 7950Xと組み合わせるとどうなるのかを検証

 最後にTDP 170Wの「Ryzen 9 7950X」を運用した場合はどうなるかも調べてみたい。検証に用いたA620M GAMING XのCPUサポートリストにはRyzen 9 7950Xが記載されている。すなわち8+2+1フェーズのA620M GAMING XでもRyzen 9 7950Xは動くのだ。

A620M GAMING XのCPUサポートリスト:GIGABYTEの記載(https://www.gigabyte.com/jp/Motherboard/A620M-GAMING-X-rev-10/support#support-cpu)によれば、TDP 170WのRyzen 9 7950XもA620M GAMING Xの対応リストに入っている

 ここからの検証は前述の検証環境をそのままに、CPUだけRyzen 9 7950Xに変えて検証している。まずは「CINEBENCH R23」のデータを見てみよう。

CINEBENCH R23:Ryzen 9 7950X使用時のスコアー

 シングルスレッドのスコアーはほとんど変わらないが、マルチスレッドのスコアーはB650環境の方がA620より明らかに高い。Ryzen 7 7800X3D使用時の差(B650の方が0.5%程度高スコアー)を考えると、Ryzen 9 7950X使用時の方が差が大きい(約3.7%)。

 Handbrakeを使ったエンコード時間も比較しておこう。テスト条件は前述のものと同じである。

Handbrake:Ryzen 9 7950X使用時の処理時間

 このテストではA620とB650に差といえるようなものはないが、素材の尺が短い(約3分)のが原因と思われる。10分間回し続けるCINEBENCH R23ではスコアー差が出るが、3分で終わってしまうHandbrakeでは差がない。つまり処理が重くても短時間で終わるのであればA620でも問題ない、ということだ。

 ではこのHandbrakeのエンコード処理をしている際のCPUクロックやCPU Package Powerなどのデータも追跡してみよう。エンコード処理は3本連続で実施している。

CPUクロックの推移:Ryzen 9 7950Xでエンコード中のもの

CPU Package Powerの推移:Ryzen 9 7950Xでエンコード中のもの

CPU Package Powerの推移:Ryzen 9 7950Xでエンコード中のもの

EPS12Vの消費電力:Ryzen 9 7950Xでエンコード中のもの

 ヒートシンクがシンプルなA620環境でエンコードした場合、時間経過に伴いクロックが下がってしまうのではないかと予想していたが、実際はA620のクロックはB650環境よりもわずかに高くなった。面白いのはCPU Package Powerが時間経過とともに徐々に上昇している点だが、これは原因が何であるか断言できるだけの材料はない。またEPS12Vの消費電力を見るとB650環境(B650M AORUS ELITE AX)の方が明らかに消費量が少なく、これは電力変換効率の違いであると思われる。

 そしてこの検証のハイライトといえるのがVRM MOSの温度変化だ。Ryzen 7 7800X3Dの時と同じようにB650環境では60度にすら到達しなかった一方で、A620環境では最終的に110度に到達。電源回路を冷却するヒートシンクが小ささが原因であることは明らかである。TDP 170WのRyzenでも短時間全力で回すならまだしも、長時間それを維持するには向かない設計であるといえる。念のため書き添えておくと、このマザーはそういう用途を想定しない設計のマザーだからこのような結果になったのであり、A620だからVRM MOS温度が100度を超える訳ではない。

【まとめ】A620でもRyzen 7 7800X3Dなら全力で回してもいいし
ゲーミングPC用途に十分使える

 以上のように、最廉価のA620マザーであってもTDP 120WのRyzen 7 7800X3Dの性能を十全に引き出せ、そしてB650マザーにひけをとらないものである、ということが分かっただろうか。

GIGABYTEのA620マザーはRyzen 7 7800X3Dの性能を十全に引き出せる

 ただゲームの裏で重い作業(録画のためにCPUエンコードなど)をさせたい場合は電源回路のフェーズ数や冷却機構あらかじめ強いB650マザーを最初から選んだ方が得策だろう。

(提供:日本ギガバイト)

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