連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第84回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 5月20日~5月26日
生成AIの業務利用が先行する業種、ランサムウェア攻撃の9割がバックアップリポジトリを狙う、ほか
2023年05月29日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2023年5月20日~5月26日)は、ランサムウェア攻撃被害を受けた企業の実態調査、生成AI(ジェネレーティブAI)の業務活用動向、民間医療保険や公的社会保障の理解度、国内ソフトウェア市場やDDoS攻撃対策市場の成長率についてのデータを紹介します。
■[セキュリティ]サイバー攻撃に遭った組織の80%が身代金を支払う、21%はデータ復旧できず(ヴィーム・ソフトウェア、5月24日)
・ランサムウェア攻撃被害の80%がデータ復旧のために身代金支払いに応じる
・復元阻止のため93%の攻撃がバックアップリポジトリを標的に
・21%は身代金を払ってもデータ復旧できず、75%が一部のバックアップを失う
過去1年でランサムウェア攻撃の被害を受けた企業のIT担当者1200人を対象にした調査と、約3000件のサイバー攻撃を参照してまとめた「Veeam 2023 Ransomware Trends Report」より。ランサムウェア攻撃に遭った企業の80%が身代金の支払いに応じているが、データ復旧できたのは59%にとどまり、21%は身代金を支払ったがデータを復旧できなかった。身代金を支払うことなくバックアップからデータを復旧できた組織は16%で、2022年の19%から減少した。Veeamでは「身代金の支払いはデータの復旧策ではない」としている。
■[AI]生成AIを「日常的に業務利用」は7%、業種は「専門サービス」が先行、「製造」などは遅れ(エクサウィザーズ、5月25日)
・生成AIを「業務で日常的に活用」は7%、「試していない」は23%
・業種別では「専門サービス」(22%)「サービス」(13%)が多い
・「何らかの形で利用している」が最も多いのは「金融・保険」(93%)
同社が4月に開催した生成AI関連セミナー参加者274社514人を対象に、生成AIの使用状況について聞いた。5段階に分類すると、レベル1「関心なし」は2.3%、レベル5「日常的に使用」は7.2%。ボリュームゾーンはレベル3「試しに利用」で43%。業種別で見ると、レベル5に達しているのは「専門サービス」(22.2%)、「サービス」(13.6%)、「IT/Web」(12.5%)などが多く、少ないのは「電気・ガス・運輸」(0%)、「製造」(2.8%)など。IT/Webでは、自社ソリューションやサービスに関連して生成AIを積極活用しているという。
■[ソフトウェア]国内ソフトウェア市場は2022年に前年比13%増、SaaSは同29%増(IDC Japan、5月23日)
・2022年の国内ソフトウェア市場は4.1兆円、前年比13.9%成長
・パブリッククラウドサービスは同29%増、1.4兆円に
・アプリ開発/デプロイ市場が同15.%増と高い伸び
2022年の国内ソフトウェア市場は前年比13.9%増。2021年来続いている消費者/ビジネスのデジタルシフトが大きな要因で、中でも非財務側面の強化による企業価値拡大、サイバーセキュリティ/ガバナンス対策のソフトウェア投資が2022年後半に増加したという。ソフトウェア3大分野別では、「アプリケーション開発/デプロイメント」市場が前年比15.1%増の1.3兆円、「アプリケーション」市場が同12.7%増の1.7兆円、「システムインフラソフト」市場が同14.5%増の1.3兆円となった。
■[生活]民間の医療保険加入率は45%、公的社会保障制度を把握できている人は少ない (DIGITALIO、5月23日)
・個人の医療保険加入率は45%、生命保険非加入は29%
・加入する保険の種類は「医療保険」(45%)「終身保険(死亡保険)」(41%)
・民間の保険に支払う保険料は「1万~1万5000円」(16%)が最多
ECナビ会員10569人(18歳以上)を対象に、保険加入率について聞いた調査。民間の保険加入率は「医療保険」(45.83%)、「自動車保険」(42.96%)、「終身保険」(41.01%)など。きっかけは「家族や親族からのすすめ」が最多で28.62%。一方で、公的社会保障制度の概要把握については、「医療費の自己負担が1~3割」は46.96%が知っているものの、「高額療養費制度」(44.2%)、「生活保護」(34.45%)など、概要があまり知られていない現状が浮き彫りになった。
■[セキュリティ]国内DDoS攻撃対策市場は2022年度75.5億ドルに、前年比8%増(アイ・ティ・アール、5月25日)
・2022年度のDDoS攻撃対策市場は75.7億円、前年比8%増
・DDoS攻撃は悪質化、多様化。2026年には91.5億ドル規模と予想
・2021年~26年の年平均成長率(CAGR)は5%
DDoS攻撃対策市場は2021年度、前年度比9.6%増の69億9000万円。2022年度は前年から8.3%増加し、75億7000万円に達すると予測する。DDoS攻撃を原因とした企業サービスの停止、システム障害などが継続して発生しており、その目的も金銭搾取や脅迫など悪質化しているという。新たにDDoS攻撃を踏み台にした情報搾取事件も発生しており、手法は巧妙化・多様化していると報告する。
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