東北大学とトヨタ北米先端研究所の共同研究チームは、希少な元素を含まない高エネルギー密度蓄電池であるカルシウム蓄電池を試作し、実用化の指標となる500回以上の繰り返し充放電に成功。さらに、室温における5分の充電時間でも1時間充電の際の50%の容量が得られ、高速充電に対応可能であることも実証した。
東北大学とトヨタ北米先端研究所の共同研究チームは、希少な元素を含まない高エネルギー密度蓄電池であるカルシウム蓄電池を試作し、実用化の指標となる500回以上の繰り返し充放電に成功。さらに、室温における5分の充電時間でも1時間充電の際の50%の容量が得られ、高速充電に対応可能であることも実証した。 研究チームは今回、カルシウム蓄電池の正極材料として、層状の構造を有しており、リチウムやナトリウム、マグネシウムなどの様々な陽イオンを貯蔵する天然鉱物である硫化銅(コベライト)に着目。ナノ粒子化と炭素材料との複合化により、カルシウムイオンが大量に貯蔵可能な正極を開発した。 さらに、同チームが独自に開発した水素クラスター含有の電解液を用いて、コベライト正極とカルシウム金属負極を組み合わせた電池を試作。電池特性を評価したところ、500回の繰り返し充放電をした場合でも固有の充放電プロファイルが得られ、容量維持率も90%(10サイクル目と比較)という非常に安定した特性を有することがわかった。 カルシウムは、地殻中に5番目に多く存在し、安価で入手しやすいうえ、金属カルシウムは高いエネルギー密度を実現できるため、次世代蓄電池の材料として注目され始めている。ただし、安定性や可逆性が課題となっており、数十サイクル以上の繰り返し充放電可能な電池はこれまで報告されていなかった。研究論文は、国際学術誌アドバンスト・サイエンス(Advanced Science)に2023年5月19日付けでオンライン掲載された。(中條)