東京大学の研究チームは、「カゴメ格子」を持つ超伝導体における電子の直接観測に世界で初めて成功。カゴメ格子を持つ超伝導体の超伝導メカニズム解明の重要な手掛かりとなる「超伝導ギャップ構造」を明らかにした。カゴメ格子は、原子が籠(かご)の目状に配列した構造のことであり、最近、カゴメ格子を持つ超伝導体が、これまでに知られている機構とは異なる機構で超伝導が実現する「非従来型超伝導体」であることが明らかになっている。
東京大学の研究チームは、「カゴメ格子」を持つ超伝導体における電子の直接観測に世界で初めて成功。カゴメ格子を持つ超伝導体の超伝導メカニズム解明の重要な手掛かりとなる「超伝導ギャップ構造」を明らかにした。カゴメ格子は、原子が籠(かご)の目状に配列した構造のことであり、最近、カゴメ格子を持つ超伝導体が、これまでに知られている機構とは異なる機構で超伝導が実現する「非従来型超伝導体」であることが明らかになっている。 研究チームは今回、カゴメ格子構造を持つ非従来型超伝導体の一つであるCsV3Sb5におけるバナジウム(V)を少量、ニオブ(Nb)やタンタル(Ta)で置換すると超伝導転移温度が上がることに着目。バナジウムの7%をニオブで置換した試料と、バナジウムの14%をタンタルで置換した試料を用意。独自開発の「極低温超高分解能レーザー角度分解光電子分光装置」に、オキサイドが開発した「深紫外連続波レーザー」を新たに導入することで、両者の超伝導状態をより高精度に調べることを可能にし、超伝導ギャップ構造を高精細に測定することに成功した。 同チームはさらに、カゴメ格子を持つ超伝導体では、時間反転対称性の破れが生じる「カイラル超伝導」という特異な超伝導状態が実現している可能性があることも示唆。その超伝導メカニズムの全容解明に繋がる重要な知見となることが期待される。研究成果はネイチャー(Nature)に2023年4月26日付けで掲載された。(中條)