2021年末のCentOS 8サポート終了をめぐっては、利用者の間で大きな動揺が広がりました。OSの選択はその後になって影響する可能性があり、またOSの変更(移行)には膨大な労力がかかります。この記事では、 あらためてLinux ディストリビューションを選択するポイントを整理し、CentOS 8以外にどのようなOSがあるのか概要をまとめています。情報システムを適切に運用する方法として、「クラウドネイティブ」など比較的新しい考え方の理解も必要です。
今回のCentOS 8サポートおよび開発方針の変更から学ぶこと
|CentOS 8サポート終了の衝撃
今から30年ほど前の1991年にLinuxオペレーティングシステム(OS)が誕生し、多くのLinuxディストリビューションが生まれ発展し、離合集散がありました。利用者が使いやすくする目的はどれも一緒で、操作の仕方は似ているようでも、用途や向き不向きはそれぞれ異なります。企業や組織向けに安定し、比較的評価の高いLinuxディストリビューションにはいくつかあります。その理由は多くありますが、特に「サポート」体制が重要です。
現在多く使われているLinuxディストリビューション自体は、無償で提供されているものがほとんどです。利用者にとってはありがたいのですが、提供側としてこれらの「サポート」体制を続けるのには時間とお金がかかります。一度公開してしまえば、後は放っておいて何もしなくてもいい訳ではありません。その開発者あるいは提携する技術者は、将来に向けて多くの改善を継続し、その約束を公言する必要があるからです。
Linuxディストリビューションと一口に言っても、その中身は膨大なプログラム(ソースコード)が巧みにつながって動いています。そのため、ちょっとした改善や対策でも時間のかかる場合があり、計画的に進めなければなりません。もちろん、その作業を担う開発側の関係者が生活でき、作業を安定的に進める資金の工面が必須です。
Linuxディストリビューションとそのサポートを有償で提供する企業が、お試しで無償のものを公開し本契約を見込むのは、他の商業活動と同様です。その想定がうまく稼働しないと、場合により大胆な計画変更につながります。公表する側はある程度時間をかけて考えてきた変更プランでも、聞く側からすれば突然の出来事です。利用している現場の担当者が、文字通り寝られない日々が続くことは容易に想像できました。それがCentOS 8サポート終了の衝撃です。
|CentOS 8サポートおよび開発方針変更のポイント
これまでのように高品質な状態のLinux OSである CentOS 8 を、比較的長い期間、無料で利用できていた状況が変わることになります。そこで以下のような選択肢が考えられます。
1. 費用をかけ、できるかぎり従来のように使う(注)
2. ある程度妥協し、代替OSにこの際切り替える(数多く公開され、有償のものもある)
3. 従来通りに動作しなくなるまで何も変更せず、とりあえずこれまで通り使い続ける
(注)多くの場合、費用を払いさえすれば解決ができるとは限らないため、何らかのシステム上の変更や移行作業が必要になります。例えばCentOSからRed Hat Enterprise Linux (以下RHEL)に変更する場合は、以下のような方法があります。
●CentOS または Oracle Linux から RHEL に変換する方法
各社が発表しているCentOS 8延長サポートサービスを利用すれば、サポート費用の負担のみで変更や移行作業が可能な場合があります。
|CentOS Stream8の「Stream」が意味すること
CentOS 7から単にアップグレードしたCentOS 8とは違い、「8」の前に「Stream」が加えられています。バージョンを表す数字の前に、「Stream」という「流れ」を意味する言葉が付けられているのには意味があります。
この場合「流れ」には、一般的に何かが出来上がるまでに行う作業の順番と考えることができます。サービス・ユーザーへの提供物などは突然に完成する訳ではなく、試行錯誤をして何度かテストし、少しずつ改善してから完成品が出来上がります。完成品としてRHELの改善作業の進み具合を見ていくと、CentOSの「8」に「Stream」の有無により、完成品をつくる順番は以下のように変化が起きます。
【従来(Stream表記無)】 RHELで検証 → CentOSに「安定版」として反映
↓↓↓
【今後(Stream表記有)】 CentOS Stream8で検証 → RHELに反映し「製品版」として完成
上記のような考え方はそれぞれ、ダウンストリームやアップストリームと呼ばれます。
|サポートおよび開発方針変更から学ぶこと
主に以下のようにまとめられると考えます。
●重大な知らせがある日突然来ることがある
●「無料」で利用し続けるためには、実は各種の「コスト」がかかっている
●決定された方針(ポリシー)は絶対正しく、未来永劫ではない(こともある)
●利用者側のリスクになる(これからも継続してシステムを使い続けることができるかどうか)
●救済措置は多く発表されているが、自組織で適用可能かどうかは調査してみないとわからない
●利用者により、心配すべきかどうかわからないことがまた増えた(代替手段があるようだが、判断基準や移行手順がわかりづらいと感じる)
OSの採用や移行の際に検討すべきポイントとは?
最初にLinux OSの一般的な選び方をまとめ、次にCentOS 8から他のLinux ディストリビューションに移行する際の注意点を整理しています。
|Linux OSの一般的な選び方
新規に導入する際に他のOSと比較検討するポイントは、おおまかには以下のように集約されると考えます。
1. 安定し安全に継続して利用できるか
2. サポートは充実しているか(一般的には最新の状態に保つ方法があり、問い合わせにある程度対応するなど導入後の支援の有無など)
3. 適正なコストで無理なく利用できるか(たとえOS自体が無料で利用できても、維持するには設備や人員のコストはかかる。そのため一括で多額の支払いではなく、毎月決まった支払いで負担を少なくできるなど。)
|CentOS 8から他のLinux ディストリビューションに移行する際の注意点
■「似ている」ものに移行する
これまで使い慣れた安定性を可能な限り維持する際、同じ「系統」での移行の方が負担は軽くなります。CentOSはRHELの系統で、比較的高い互換性があるクローンOSです。そのため、RHELクローンである他のLinuxディストリビューションを移行先として選択すれば、より近道となります。
■継続して利用できることを優先する
前の章で説明した開発方針の「Stream(流れ)」があるため、より安定した状態になった「製品版」を利用した方が、継続的に安定して利用しやすくなります。今後はクラウドの利点を活用する「クラウドネイティブ」の考え方を考慮して、Linuxディストリビューションを選ぶことも大切になると考えています。
■サポート
利用者が自組織で全てをまかない維持するのには限度があるため、必要に応じて専門家に委ねることは、本業に専念するためにも得策です。一例としてRHELの場合では、契約期間を定めて料金を定期購読するように支払う「サブスクリプション」型で利用できるようになっています。
■コスト
関連するコストの合計額で納得できる移行が理想です。OSが無料で利用できることにこだわってばかりいると、肝心なところで思わぬ出費に出くわすことは避けなければなりません。
■計画的な対策と実施
すでに決まっていることは、あわてても仕方がないことです。今できることは綿密な移行計画を専門家とともに練り、これからの推移を十分に見通すことです。
CentOS 8の移行先Linux ディストリビューション6選
今後の普及が期待され、今からでも知っておきたいディストリビューションです。
●これまでと同様に無料でも利用可能なRHELクローン(3種)
●今後のことも考え「クラウドネイティブ」を前提としたもの(2種)
●CentOSと同程度に普及しているもの(1種)
|AlmaLinux
|Rocky Linux
|Oracle Linux
|Fedora CoreOS
(注)Red Hat公式ページによれば、「クラウドネイティブ」のオープンソースのソフトウェアの実現で、アプリケーションの利用者が安全かつ安定的に、どのような環境でも利用できることを説明しています。
|RancherOS
|Ubuntu
まとめ
CentOSから移行する場合、Linuxディストリビューションの動作が確認されたサーバーを利用する方が安心と考えます。一例として、KAGOYA CLOUD VPSでは「OSテンプレート」機能があり、Linux ディストリビューションを選択するだけで環境を整えることができます。
本記事で取り上げた「AlmaLinux 9」や「Rocky Linux 9」「Ubuntu 22.04 LTS」も「OSテンプレート」に含まれています。(各バージョンは2023年4月時点)これからを見据えた情報システムの改善に、ぜひお役立てください。
参考記事
●【最新】初心者必見! Linuxディストリビューション用途別おすすめ10選(2023)
https://www.kagoya.jp/howto/cloud/vps/linuxdistribution/
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