DX実現に必要なテクノロジーとは?種類や活用事例を紹介
本記事はユーザックシステムが提供する「DX GO 日本企業にデジトラを!」に掲載された「 DX実現に必要なテクノロジーとは?種類や活用事例を紹介」を再編集したものです。
DXの推進にはテクノロジーが必要です。しかし、自社が導入しているテクノロジーがどのようにDXに結びつくのか、整理できていない人もいるのではないでしょうか。そもそもテクノロジーによりどういった課題が解決されるのか、テクノロジーの活用方法について疑問を覚える人もいるかもしれません。
ここでは、DX実現のために必要なテクノロジーとはどういったものか、テクノロジーで何ができるのかなどを整理しながら、DXとテクノロジーの関係について紹介します。
DXとテクノロジーの関係
DX(デジタルトランスフォーメーション)に必要なテクノロジーを考える前に、DXとはどういったものかを整理しておきましょう。
IPA(情報処理推進機構)の資料「デジタルトランスフォーメーションに必要な技術と人材」によると、DXは次のように説明されています。
「デジタルテクノロジーを駆使したビジネスの変革」
変革は、ビジネスモデルの変化だけでなく、個人の生活や社会構造にまで影響がおよぶとしています。例えば、従来の紙媒体による書籍販売に対し、電子書籍という形態での販売へ移行することにより、出版社や販売プラットフォーム、消費者の行動も変化します。そのような変革をDXと呼んでいます。
参考:デジタルトランスフォーメーションに必要な技術と人材(PDF)|IPA
では、デジタルテクノロジーはどういったつながりによってDXを実現していくのでしょうか?
経済産業省では、目指すべき産業のあり方として「Connected Industries」の概念を提唱しています。これは、次のような効果を目標とした取り組みです。
「様々な業種、企業、人、機械、データなどがつながり、AI等によって、新たな付加価値や製品・サービスを創出、生産性を向上」
Connected Industriesは、テクノロジーが新たな付加価値やビジネスを生み出し、生産性を向上させていく産業の「つながり」を構築することです。こういった産業の連携ができた結果、超高齢社会、人手不足、環境・エネルギーなどの社会課題を解決し、産業競争力の強化にもつながるとしています。
このように、DXとテクノロジーは分けて考えることのできない関係にあり、テクノロジーの有効活用によるビジネスの変革こそDXといえるのです。
DXについて詳しくは、「【徹底解説】DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?必要性から成功事例まで」もご参照ください。
DX実現に必要なテクノロジーとは?
では、DXに活用されるテクノロジーにはどういったものがあるのでしょうか。主な例を以下に挙げます。
IoT
IoTは、“Internet of Things”の略称で、日本語では「モノのインターネット化」と訳されています。これは、あらゆるモノがインターネットによってつながり、モノの状態や位置などに関する情報や、知識やデータなどをどこにいても共有できることを表します。
情報や知識のリアルタイムな共有によって、さまざまな産業において新たな可能性が生まれました。その結果、これまでにない多くのビジネスモデルが創出され、DXへとつながっていきます。
IoTについて詳しくは、「IoTとは?仕組みと効果・課題、導入事例などを紹介」をご覧ください。
センシングデバイス
センシングデバイスとは、感知する(センシング)装置(デバイス)のことです。
センシング技術の進化はIoTを実現するためには欠かせないものでした。センシングデバイスによってモノの状態を検出し、そのデータを送ることによってIoTは成立します。
センシングデバイスには、長く使われている接触型のセンサーや非接触センサーなどの位置検知、温度センサーや光度センサーなどが含まれます。また、特定の成分の含有量を計測するセンサーや、機械が自ら機械部品の摩耗を検出するセンサー、画像を撮影し処理するためのカメラなども、センシングデバイスの一種として活躍しています。
AI
AIは“Artificial Intelligence:人工知能”の略称です。
業務のなかで判断が必要とされる部分は人間が担当しなければならず、そのため省人化や無人化を進められない領域がありました。しかし、AIはコンピューターによる判断を可能にします。これにより、従来は不可能だった領域の省人化や無人化が実現するだけでなく、人間より早く作業をこなすことも可能になります。
センシングデバイスを活用して収集したデータを、IoTによってリアルタイムに送受信することで、よりAI活用の幅が広がります。
ビッグデータ
ビッグデータとは、さまざまな種類や形式のデータによって蓄積される巨大なデータ群のことをいいます。量と種類、頻度といった異なる要素を満たすこと、幅広い範囲をカバーしていることが条件となります。
AIが判断する精度を向上させるためには、ビッグデータが必要です。AIが学習しながら「適切な判断」を身に付けていくためには、幅広い分布と厚みを持つデータから正解に近いものを見つけていく必要があるためです。
ビッグデータはそれ自体でもデータ分析の材料として有効に活用できますが、AIと組み合わせることで可能性は大きく広がります。
ビッグデータについて詳しくは、以下もご参照ください。
ビッグデータとは―4つのVとメリット、考慮すべき点、活用事例など
クラウドコンピューティング
クラウドコンピューティングとは、大規模なインフラやソフトウェア、保存のためのサーバーを持たなくても、インターネット上に提供されるそれらの機能を、必要に応じて利用できるサービスです。
従来は、サービス利用のため導入時に大きな初期費用をかける必要があり、ソフトウェアを導入したパソコンから利用するしかできませんでした。しかし、クラウドコンピューティングで提供されているサービスであれば、低コストで利用開始できます。また、パソコンが限定されることがなく、スマートフォンやタブレットなどの携帯端末を含むさまざまな端末からアクセス可能です。
自身の持つ容量の限界や場所に限定されずにサービスを利用でき、情報を共有できるという点が、クラウドコンピューティング最大の利点といえます。
エッジコンピューティング
エッジコンピューティングのエッジは、ネットワークの端を意味します。中央で大きな情報量を保存しているのがクラウドコンピューティングだとすると、ネットワークの端にある現場の最前線をエッジと表現したことから名付けられました。
クラウドコンピューティングは、自身の持つ容量や場所に限定されないという点で大きな利点がありますが、通信時の送受信速度は回線環境に依存することになります。
例えばIoTと組み合わせて活用する場合、センサーによって得たデータがクラウドへ送られ、そこで処理されて制御指令が再び戻ってくるには、通信速度に応じたタイムラグが発生します。このタイムラグは、IoTの利点のひとつである「モノのリアルタイムな状況を把握できる」という点と矛盾します。
そこで、リアルタイム性を損なうことなく必要な処理を行う手段として生まれたのがエッジコンピューティングです。エッジコンピューティングでは、現場の最前線(エッジ)で判断や処理を行える部分はエッジで処理し、必要に応じてクラウドへデータを送り蓄積します。このような振り分けを行うことで、必要な処理のスピードを維持します。
5G
5Gとは、次世代の移動通信方式として定義されたもので、これから求められる通信のあり方と、それを満たすための新たな通信方式を表したものです。
高速で大容量の情報通信、多数同時接続、低遅延などが条件とされています。これによりトラフィック安定、情報セキュリティー強化、通信コスト削減などのメリットが期待されています。
5Gはこれまでの水準を大きく上回る条件が求められるため、その実現に向けてさまざまな角度から開発が進んでいます。
5Gについて詳しくは、以下もご参照ください。
AR・VR
ARは“Augmented Reality:オーグメンテッドリアリティ”、VRは“Virtual Reality:バーチャルリアリティ”の略称で、それぞれ「拡張現実」、「仮想現実」と訳されます。
画面のなかに、あたかもそこに実物があるかのように表示する技術がARです。例えば、スマートフォンのカメラで撮影している画面内に、現実世界では存在しないものをそこにあるかのように表示することが可能です。
一方のVRは、仮想世界に入り込んで自分自身もそこにいるかのような体験ができる技術です。さまざまな状況を仮想世界で体験でき、現実世界ではテストが難しい状況をつくり出し、試してみることもできます。
サイバーセキュリティー
多様な通信方式によって情報のやりとりに多くの可能性が生まれると、同時に必要となるのがサイバーセキュリティーです。
近年では、その企業や団体にとってなくてはならない情報や、保管している個人情報などを人質として身代金を要求する、ランサムウェアによる被害も増大しています。日本国内の病院では、保存してある電子カルテの情報が人質にされ、身代金を要求された事例もあります。 こういったサイバーリスクに対応するため、デジタルテクノロジーの進化にはサーバーセキュリティー強化の必要性も伴います。
テクノロジー活用によるDXの事例
これらのデジタルテクノロジーを活用し、DXを推進している事例をいくつか紹介します。
IoTによって航空機エンジンの状態を管理
航空機エンジンの製造販売を行うロールス・ロイス社では、これまでの常識を打ち破る航空機エンジンのレンタルサービスを展開しています。
レンタルサービスの価格基準となるのは、エンジンの出力と稼働時間です。実際にどれくらいの出力で、どれくらいの時間稼働したかによって価格が算出されます。出力と稼働時間は、エンジンに取り付けたセンサーによってデータを取得し、IoT機器によって解析します。
エンジンを売るのではなく、エンジンの出力と稼働時間を売るという手法により、大きな資本を持たないLCC(格安航空会社)は初期投資を抑えられ大きなメリットとなります。また、エンジンの整備に関する業務は全てロールス・ロイス社側で受け持ちます。航空会社としては安全についての保障に加え、利益に直接結びつかない整備業務を縮小できるというメリットがあります。
この方法により、ロールス・ロイス社は他社とのサービスの差別化を図り、新規顧客の獲得と、従来からの顧客との関係維持に成功しています。
デジタルテクノロジーを活用して新たなビジネスモデルを創出したDXの成功例といえます。
ARによって自動車を体験
ドイツの自動車メーカーBMW社では、ARを活用して実車を確認できるサービスを導入しています。アプリのなかで実際の車をさまざまな角度から観察でき、カスタマイズも可能です。
店舗で実際に試乗してみる前段階として、ARによる体験によって販売機会の幅を広げることに成功しています。
テクノロジーを集結した飲料水のスマートファクトリー
サントリー食品インターナショナル株式会社では、複数のデジタルテクノロジーを導入したスマートファクトリー「サントリー天然水北アルプス信濃の森工場」を運営しています。
同工場では、あらゆる設備資産が管理分析可能です。設備や業務量、人の動きやスキルの見える化によって、効率的な設備の稼働状況を導き出し、さらに高効率での稼働へとつなげていくPDCAの仕組みが構築されています。
DXはテクノロジーから何を生み出すかが重要
DXとテクノロジーの関係性、DX推進のために活用されるテクノロジーの種類などについて紹介しました。
企業がDXを進めるためには、テクノロジーの活用が必須ですが、テクノロジーを活用すれば必ずDXが成功するというわけではありません。そのテクノロジーで何ができるのか、そのテクノロジーを活用してどういったビジネスモデルを創出できるのかを理解し、テクノロジーを活用する目的を明確にしなければなりません。また、事業や組織の変革、社会全体の変革に良い影響をもたらすものかどうかを考慮する必要があります。
まずは自社のDX推進に必要なテクノロジーを見極めていくための知識を身に付けることが重要です。DX推進に必要なテクノロジーについては、「DXを支える技術とは?技術を生かしてDXを推進するのに必要な人材も紹介」もご参考ください。
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