災害時に必要な情報がバラバラでまとまっていない
── ノードとリンクについて、こんなことを言えるんじゃないかということを示したのがKO-TO防災ステーションだったと。次はマネジメントですか。
大村 それが2つ目の取り組みで、交通防災拠点の機能確認のところですね。特に国交省関東地方整備局様と連携し力を入れて取り組んだ社会実験です。帰宅困難者を想定して豊洲駅に集まってもらい、一時滞在施設への誘導情報を見てもらう実験をしました。本来はサイネージでいろんな情報を発信する予定だったのですが今回はアナログに看板を出す形で、災害時、どのような情報が必要かを検証しました。
ステップ1はあまり情報を開示せず、運行情報だけ。これだけ電車が止まったとか。ステップ2ではミチノテラスが一時滞在スペースだということを開示する。ステップ3では備蓄品に何があるか。ステップ4には設備の満空情報を出しました。これでどのパネルを見たときに移動したいと思うかという調査をしています。
その後、実際にミチノテラスまで避難してもらって、平時はバスターミナルの待合室にしている一時滞在スペースに実際に座ってもらいました。
そこで帰宅困難者が使えるマンホールトイレを体験してもらったり、備蓄品をこれだけ確保しますよということを見てもらったり、あとは災害時に炊き付けを出すようなデュアルモードを検討しているフードトラックのMellowさんとの連携を見てもらいました。
あとはデッキ上に大型のサイネージと、柱に10面のサイネージに、平時はにぎわいづくりとして豊洲市場やマルシェの情報を流していますが、「災害時にこういう情報があったら理想的だよね」という案を提示しました。
── 理想的な映像というのはどんなものだったんですか?
小川 どういう災害が起きていてどんな交通ネットワークが使えなくなっているか。そうした災害・道路情報に加え、ミチノテラス豊洲はBRTと船の交通結節点でもあるので、船やバスが運行しているかどうか、あとはネットワーク上のノードの情報として、避難先の空き状況を具体的に見せました。ただ情報を集めるにあたっては、実際に災害情報を持っている気象庁や避難所や避難施設の情報を持っている江東区などとの連携が取れていないことが分かりました。たとえば、先ほど宮原さんから一時滞在施設についての説明がありましたが、それぞれの施設に何人が集まれるかは公表されていないので分からないんですね。
── なんと。東京都も知らないんですか?
宮原 何人収容できるかという情報は開示されていません。
小川 ですから「空いているか埋まっているか」の満空しか示せないんですが、それが人数になってくればどれだけの分配ができるかという最適な避難につながると思うんです。その連携がまだ取れていないということが分かりました。
── 現在のLアラートの情報はどこから持ってきているんですか?
大村 Lアラート事業者からサイネージ事業者に配信されます。それがいまは気象情報、大雨注意報とかのシンプルな情報しかない。ただの地震速報と一緒なんです。でも、それだけでは今後の行動を判断できないよねと。
── そもそもLアラートってどんな情報が入ってきているものなんですか?
宮原 市町村や都道府県が把握している情報、あとは鉄道の運行情報などがあると思いますが、協議会としては「こういう情報があったらいいんじゃないですか」ということをLアラート側に問いかけて、必要な情報を提供してもらうべく連携をはかる必要があるなと感じています。
── なるほど……。
宮原 ただ、情報を集約するのも大変で。道ひとつをとっても、都道、区道、私道といろんな管理主体が混ざっていて、誰がそれを統合するのか。正確さなど情報の質も問われますし、誰の責任で発信するのかといった課題もあります。
── 間違った情報が出回ると困ってしまうし。
大村 おっしゃるとおりです。
宮原 行政も情報を集約する体制はあるようなんですが、災害が起きたときの体制はかなりアナログにならざるを得なくて、その辺りを踏まえると課題はありそうだと感じます。
── 映画だと「ゴジラ東京湾に出現」とか紙テープで出てくるじゃないですか。でも紙テープって意外と使われ続けていたらしいですね。一斉送信できるから。
大村 次年度の社会実験では、その体制を整理したいと思っています。それぞれの主体に指針や方針はありますが、連携が完璧ではないので。
── バラバラでまとまっていないと。昔みたいに町内会が強いわけでもないし。デジタル庁みたいに防災関係をまとめる「防災庁」みたいな組織はないんですかね?
大村 東京都は東京都、内閣府は内閣府、国交省は国交省、それぞれの立場からどの範囲をカバーするか、責任はどこまでかということで分かれています。たとえば豊洲だったらここまで連携しようということが言えたらいいですよね。
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