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クラウド人材育成、モダナイズ/内製化支援推進、コンピテンシー、公共系での取り組みも

AWSジャパンがパートナー向けイベント開催、最新の取り組みを紹介

2023年03月20日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は2023年3月16日、17日の2日間、パートナー向けイベント「AWS Partner Summit Japan 2023」を開催した。AWS目黒オフィスとオンラインのハイブリッド形式で開催された同イベントには、パートナー企業など約3000人が事前登録し、2つの基調講演、12のライブセッション、22のオンデマンドセッションを通じて、ベストプラクティスの紹介やパートナープログラムの概要説明などが行われた。

 開催初日の午前に行われた基調講演では、AWSジャパンの2023年パートナー戦略をテーマに、既存ITシステムのモダナイゼーションに向けたAWSとパートナー各社の取り組み、クラウド人材育成の支援策などが説明された。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 執行役員 パートナーアライアンス統括本部長の渡邉宗行氏、同社 執行役員 パブリックセクター パートナーアライアンスの大場章弘氏

東京/大阪リージョンには累計1.3兆円を投資、パートナーの人材育成も支援

 AWSジャパン 執行役員 パートナーアライアンス統括本部長の渡邉宗行氏は、「予測ができない急激な社会環境の変化のなかで、企業はいち早く対応できる体制を作っておくことが大切だ」と語る。

 「調査によると76%のCEOが『現在のビジネスモデルは5年後には通用しない』と予測している。いまから5年前の2018年には、コロナ禍を経験し、ウクライナ情勢が起こり、世界的なインフレになるとは誰も予想していなかった。いまは5年で大きく変わることを前提として、イノベーションのスピードをさらに速めていかなくてはならない。そのためにはDXが必要であり、イノベーションを推進するためにはクラウドが不可欠だ」(渡邉氏)

 AWSでは、日本のDXをサポートするために積極的な投資を行ってきた。渡邉氏によると、東京/大阪リージョンに関する投資額は2022年までの累計で1兆3510億円となり、2022年だけでも3480億円に及ぶ。その結果、日本のGDPへの貢献額は累計1兆3060億円(2011~2022年)、サードパーティーにおける雇用創出は2万300人に達すると試算されるという。さらに、数千社に及ぶスタートアップ企業にも数十億円規模の投資を行ってきた。

AWSでは日本市場に対する積極的な投資を行ってきた

 日本におけるIT人材の育成にも注力している。その一例として渡邉氏は、パートナー企業に対してアップスキリング、リスキリングの支援を強化していることを説明した。

 「2017年から、パートナーソリューションアーキテクトチームのなかにパートナー向け人材育成専門組織を立ち上げており、パートナーの要望にあわせて個別にカスタマイズしたトレーニングメニューを提供している。さまざまな職種や役職にあわせたメニュー、また日本独自の育成支援メニューもある。なかでも『AWS Skill Builder』は、AWSの総合学習サイトとして500以上の無償デジタルコースを提供しており、自分のペースでクラウドの知識とスキルを高めることができる」(渡邉氏)

 また2022年には、人材サービス型AWSパートナープログラムを発表。AWSジャパンがエンジニア育成のノウハウを提供し、現場で仕事を経験しながら実践に基づいて人材を育成。パートナーにおける人材不足の解消を目指すという。さらに今後の施策として、パートナー企業の協業パートナーに対しても新たにトレーニングを提供していく考えも示した。

 パートナーにおける人材育成の事例として、AWSと戦略的協業を行っているNTTデータを紹介した。クラウド人材の育成強化を目指すNTTデータでは、2022年に3600人だったAWS認定技術者を2025年には5000人に拡大する計画を打ち出している。独自のトレーニングプログラムとして、実践的研修の実施や、新入社員研修にAWSジャパンが提供するハンズオンを組み込むなどの取り組みを行っている。

現在のパートナー向けトレーニング一覧。日本オリジナルのトレーニングも数多い

顧客の内製化を支援するパートナーへの支援策も

 近年ではユーザー企業におけるシステムの内製化も強く求められるようになっている。渡邉氏は、AWSジャパンが展開する内製化支援策についても紹介した。同社では2年前から「内製化支援推進AWSパートナー」の仕組みをスタートさせている。

 「当初は10社でスタートしたが、現在では30社になっている。パートナー各社では、コンサルティング、共同開発/運用保守、標準化支援、人材育成の4点から、AWSのクラウドサービスを活用した内製化支援のオファリングを用意している。この取り組みは、今後広く、深く展開していく」(渡邉氏)

 ユーザー企業による内製化の事例として、ライフネット生命を取り上げた。同社では、顧客接点であるフロントエンドの基盤をサーバーレス環境とマイクロサービスによって刷新。従来は数カ月に1回しか新機能がリリースできなかったが、内製化支援推進AWSパートナーとの連携により、2週間に1回のペースで新機能がリリースできるようになったという。

 加えて渡邉氏は、「内製化が難しい企業にはSaaSという選択肢もある」としたうえで、SaaSの最適化提案を目指すパートナー向けプログラム「AWS SaaS Factory」を紹介した。同プログラムでは150のトレーニングやベストプラクティス、リソースを提供するほか、「AWS Marketplace」経由で販路も提供し、SaaSベンダーとユーザーを支援している。

「内製化支援推進AWSパートナー」の一覧

 全国の各地域で企業DXを推進する動きも活発になっている。2022年に設立した「Cloud Native Builders Group」は、各地域でクラウドネイティブシステムの導入を支援している。また四国では、クラウド化推進のパートナーコンソーシアムも立ち上がっている。

 たとえば青森のヘプタゴンは、自治体のほか製造、農業、福祉など幅広い業種を対象に、これまで100社300プロジェクト以上をAWSで構築した実績を持つ。同社の顧客であり、米の卸売りを行うKAWACHO RICEでは、流通過程の銘柄検査にAWSを活用し、米粒の画像から銘柄を判定するAIモデルを「Amazon Sagemaker」で構築した。スマホで撮影するだけで銘柄判定が可能になり、検査員の負担が軽減されたという。

 さらにヘプタゴンは、顧客企業の内製化を支援するコンサルティングサービスメニューも用意。IT部門を持たない企業の内製化については、同社がCCoEとしてクラウド内製化をサポートする「re:Light TOHOKU」プロジェクトも展開している。この実績をもとに、地域全体のCCoEへと進化させて、地方のDX化を加速させるという。

パートナーを通じて幅広い業種での実績を重ねる

 パートナーが強みを持つ業種ノウハウ、ユースケース、ワークロードのスキルを示す「AWSコンピテンシープログラム」も紹介された。渡邉氏は、市場動向やAWSの戦略に基づいて、次のように語った。

 「昨年は『DevOps』コンピテンシーの取得を促したが、今年は『Data & Analytics』『Machine Learning』といったコンピテンシーの取得に力を入れてほしい。AWSはデータの民主化に力を注いでいく方針であり、そうした観点からもこれらのコンピテンシーが重要になる」(渡邉氏)

業種、ユースケース、ワークロードに沿ったAWSコンピテンシープログラム

 パートナーを通じた各業界のユーザー事例も紹介された。

 ナブテスコでは、基幹システムを「SAP R/3」からAWS上の「SAP S/4HANA」に移行。DXの加速とともに、東京/大阪リージョンを活用したDR環境を構築した。日本ハムでは、SAPをAWS上に移行したことで、20~30%のコスト削減を実現。アサヒ緑健では、「奉行シリーズ」の稼働環境を2カ月でAWSに移行し、サーバーコストを削減したという。

 またアシストでは、社内システムのクラウド化を推進。スクラッチ開発したオンプレミスの社内基幹システムを、AWSとSAPの環境に移行する計画であるほか、社外向けにはOracleデータベースなどとAWSを組み合わせた提案を進めている。象印マホービンではオンプレミスの「Oracle Exadata」を「Amazon RDS for Oracle」に移行し、BCPの強化、総コストの10%削減を達成した。

 なお、AWSジャパンではオンプレミスシステムのクラウド移行を支援する「AWS Migration Acceleration Program(MAP) 2.0」を提供している。渡邉氏は、MAP 2.0の活用によって、システムのコスト削減、生産性、俊敏性、回復力の高い効果が生まれているとしたうえで、「パートナー各社にもMAP 2.0を活用してもらえるように支援していく」と述べた。

 そのほかAWSのサステナビリティへの取り組みとして、データセンターでの再生可能エネルギー利用やウォータースチュワードシップ(水資源管理)、低炭素型コンクリートによる建設などを進めていることを紹介した。顧客事例として、NECが5Gネットワーク構築において「Graviton 3」プロセッサを採用し、高性能化と低消費電力化を両立したことを挙げた。

 「AWSのインフラを活用することで3.6倍のエネルギー効率化を実現でき、二酸化炭素排出量を88%削減できる。既存システムをAWSに移行するだけで、企業のサステナビリティに貢献できる。これをサステナブルマイグレーションと呼んでいる」(渡邉氏)

AWSのサステナビリティへの取り組み

公共:“クラウドスマート”の方針に強く賛同、全面的に支援

 AWSジャパン 執行役員 パブリックセクター パートナーアライアンスの大場章弘氏は、公共分野におけるパートナーへの取り組みについて説明した。

 2016年にスタートした「公共部門パートナープログラム(PSP:AWS Public Sector Partner Program)」は、毎年新たなパートナーが参加し、年率40%以上で順調に拡大していると報告。PSPの連携を通じて中央官庁や政府機関、自治体、医療、文教など、公共系の顧客においてもAWS活用が進んでいるとコメントした。

 「中央省庁では多くの政策が“Cloud by Default”となっており、自治体においても2023年からガバメントクラウドへの本格移行期を迎える。また、2022年12月に改定された『政府情報システムにおけるクラウドサービスの適切な利用に係る基本方針』では、クラウドファーストだけでなく“クラウドスマート”という表現で、サーバーレス、モダナイゼーションといった新たなクラウドの利用方法が強く推奨されている、AWSジャパンもこの方向性に強く賛同し、全面的に支援したい」(大場氏)

AWSの公共系における顧客実績

 公共分野でも、基幹システムのクラウド化にとどまらず、自治体におけるスマートシティプロジェクトや遠隔医療、各種行政サービス、教育におけるクラウド活用などが急速に広がっている。大場氏は「パートナーと密接な関係を築き、公共分野のクラウド化を推進していく」と意欲をみせた。

 PSPでは営業ツールキットをパートナーに提供している。現在は自治体、教育、医療の3つのシナリオを用意しており、業界トレンドやユースケース、価格サンプルなど、クラウド提案に役立つ情報が元込まれているという。加えて公共分野に特化したウェビナーも開催しており、昨年は10回の開催で延べ1000人以上が参加したと紹介した。

 公共分野で多くの実績を持つパートナー企業、Fusicでは、文部科学省CBTシステムのインフラ構築にAWSを採用したほか、理化学研究所での自然言語処理を用いた言語アセスメント機構において、AWSによりインフラを構築。東京農工大学大学院では、てんかん脳波データを自動推論する機能を実装したMLOps環境をAWSのサーバーレスサービスにより実現した事例を紹介した。

 基調講演の最後に渡邉氏は、「Amazonには『リーダーシッププリンシプル』と呼ぶ14の信条があり、その最初に掲げているのが『Customer Obsession』である。これは、まずお客様を起点に考え、お客様のニーズに基づき行動するということ。パートナーとともにこれを実行することが、お客様の成功につながると確信している。AWS、パートナー、顧客が一体となって、Together Unlimitedをキーワードに、無限の可能性を引き出していくことが大切である」と締めくくった。

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