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細胞内脂質を超高速解析、代謝異常の原因遺伝子を同定=京大

2023年03月16日 05時28分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学の研究チームは、ヒトの全遺伝子と脂質代謝の因果関係を網羅的に調べる超高速解析技術を開発した。今回の技術は、スクリプス研究所(Scripps Research Institute)のバリー・シャープレス教授らが2022年にノーベル化学賞を受賞した「クリックケミストリー」を独自に発展させたもの。がん・肥満・糖尿病などの病気の背後には代謝の異常があることが明らかになっており、代謝異常の原因となる遺伝子を特定することで、さまざまな疾患の治療法の開発につながることが期待される。

京都大学の研究チームは、ヒトの全遺伝子と脂質代謝の因果関係を網羅的に調べる超高速解析技術を開発した。今回の技術は、スクリプス研究所(Scripps Research Institute)のバリー・シャープレス教授らが2022年にノーベル化学賞を受賞した「クリックケミストリー」を独自に発展させたもの。がん・肥満・糖尿病などの病気の背後には代謝の異常があることが明らかになっており、代謝異常の原因となる遺伝子を特定することで、さまざまな疾患の治療法の開発につながることが期待される。 研究チームは、生きている細胞の中で脂質に蛍光色素を標識できる独自のクリック反応を利用して、細胞内における脂質の「存在量」と「空間分布」を、単純な蛍光シグナル情報に変換して超高速(1万細胞/1秒)で解析する技術「O-ClickFC」を開発。遺伝子編集技術「CRISPR-KOスクリーニング」と組み合わせることで、人の全遺伝子の変異を持つ細胞集団から、脂質の代謝が異常な細胞を選別し、その原因遺伝子を同定することを可能とした。 同チームは実証実験として、脂質の主要成分である「ホスファチジルコリン」の代謝に重要な遺伝子49個を同定し、「FLVCR1」など多数の新規遺伝子を発見。詳細な解析から、FLVCR1は生命維持に必須の栄養素コリンを細胞内に取り込ませる役割を持つことを見い出した。さらに、遺伝性神経疾患の原因となる変異型FLVCR1は、コリン取り込み活性を喪失するという病態発現メカニズムの一端を解明した。 従来型の細胞の脂質分析では、大量に集めた細胞抽出物の放射線分析や質量分析を実施する方法が主流だが、多大な時間と労力がかかるため、多数のサンプルを解析する際の課題となっている。研究論文は、国際科学誌セル・メタボリズム(Cell Metabolism)に2023年3月13日付けで掲載された

(中條)

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