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起業を目指す中高生たちにセンパイ起業家から貴重なアドバイス! 中小機構『起業家プログラム 生徒報告会・交流会』レポート

 独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)は、2月25日東京丸の内にあるNexs Tokyoにて、『令和4年度 起業家教育事業 交流会』を実施した。

 この取り組みは、中小機構が全国の高校生を対象に行っている“起業家教育プログラム”の支援を受けるなどした学生たちを招き、自身が作成したビジネスプランについて外部専門家からアドバイスを受けたり、他校の起業家教育に取り組む生徒との交流を行う場を提供するというもの。当日は、起業家教育プログラム支援校3校(北海道留辺蘂高等学校、青森山田高等学校、芝浦工大付属中学高等学校)、出前授業実施支援校5校(神戸星城高等学校、静岡県立伊豆総合高等学校、山形県立酒田光陵高等学校、静岡県立島田商業高等学校、兵庫県立長田商業高等学校)、また日本政策金融公庫主催高校生ビジネス・プラングランプリからゲスト参加校1校(洗足学園高等学校)と全国各地から9校19名の生徒たちが参加した。

会の冒頭に挨拶を行った中小機構の坂本英輔氏。「皆さんの将来に創業という道もあるというきっかけとなってくれれば嬉しい」と生徒たちにエールを贈った。

参加生徒たちがビジネスプランのプレゼンテーションを披露

 当日のプログラムではまず、参加各校グループによる自己紹介が行われた。プログラム支援校ではこれまでプログラムで学んできたこと、出前授業実施支援校では学校や個人で取り組んできたプランやアイデアを、思い思いの形で披露していった。参加各校の様子を以下にまとめる。

起業家教育プログラム実施支援校

【北海道留辺蘂高等学校】留辺蘂町で盛んだという木材産業を元にアルファベットの形をした積み木を商品化するというプラン。地元の近隣企業の協力を得て制作した試作品は実際に会場に持ち込まれた。

【青森山田高等学校】青森県内にある小牧野遺跡を題材にビジターセンターと遺跡とを上空から見渡せる運搬型ドローンでつなぐことでアクセスの不便性を解消するビジネスプランを構築。ドローン活用による話題性喚起で観光客の増加も目指すものとした。

【芝浦工大付属中学高等学校】ミドルウェアを使った音声認識による文字起こし、AIモデルによる感情分析システムや、コンテスト受賞した地理空間情報を利用したプラン、また旅先での荷物をアプリとコインロッカーを利用して宿泊先まで届けるサービス“キャリーマート”など複数のプランを発表。

出前授業実施支援校

【神戸星城高等学校】年間200億足が製造され同数が廃棄されていくランニングシューズに着目。アッパーとソールを別々に製造・販売し、またデポジット制度によりソールのリサイクルを促す“DEF shoes”を提案した。

【静岡県立伊豆総合高等学校】伊豆市には適正値を相当数超える2万1000頭の鹿がいるという。こうした鹿肉を地元企業と協力して、高タンパク低脂質のペットフードとするビジネスを提案・模索したいと語った。

【山形県立酒田光陵高等学校】米どころである山形県庄内地方は、飢饉が起きても商人が率先して米を配り死者を出さなかったという歴史背景、それにちなんで、「すべての物事をビジネスとして考える」ことを学んだと発表した。

【静岡県立島田商業高等学校】SLで有名な大井川鉄道や、世界遺産である蓬莱橋が地元の名物であるという島田商業高校。同校には総合ビジネス科、情報ビジネス科があり、情報ビジネス科の生徒が制作した学校紹介動画を用いながら、マーケティング授業などのある学校の魅力を紹介した。

【兵庫県立長田商業高等学校】同校の生徒が起業した、株式会社NAGAZONが商業活動を行い、すでに営業利益を上げていることを紹介。参加した生徒は、今後は海洋ゴミの削減も兼ねて、シーグラスを活用した商品の制作・販売を行いたいと語った。

ゲスト参加校

【洗足学園高等学校】日本政策金融公庫主催による高校生ビジネス・プラングランプリで審査員特別賞を受賞したメンバーが登壇。“あんぶらいと”は、雨滴で発電する傘で得た電力を企業や学校、病院向けに定額制で提供するというプラン。個人での達成が難しいSDGsにも貢献できるものだという。

全国各地から集まった起業に関心を持つ若者たち。普段は出会うことのない他校の生徒や起業家たちと積極的に交流を行っていた。

ブレインストーミングなどを実践的なスタイルで学ぶ
実際の起業家たちによる特別講座も実施

 各校生徒の自己紹介に続いて、実際にスタートアップに成功した起業家を特別講師として招いてのパネルディスカッションが行われた。人工衛星によるサービスを提供するアクセルスペースの中村友哉氏、飼い猫の行動を見守る「Catlog」を提供するRABOの伊豫愉芸子氏の両名が、テーマごとにトークを展開していった。

 創業した当初は宇宙ビジネスが未知数で、かつ営業経験もなく苦労をしたと振り返った中村氏。ウェザーニューズ社から気象衛星の開発受託を受けたことによりビジネスが軌道に乗り、その後は自社の衛星によって取得した画像データを販売するサービスへと推移していったことを説明。創業には「自分が世に出したモノにお客様が価値を見出して使ってくれたという喜び」があると語った。

株式会社アクセルスペース 代表取締役の中村友哉氏。大学生時代に人工衛星の開発に関わったことがきっかけで、民間企業の人工衛星利用を目的として2008年に会社を設立。現在では自社人工衛星による画像データ販売や、超小型人工衛星でのミッションの提供を基幹ビジネスとしている。

 大学時代に野生動物のバイオロギング(ITによる生態観察)を専攻したという伊豫氏は、卒業後に就職した企業で学んだプロダクト開発のノウハウ、そしてなにより猫への愛情があって起業を決意。設立当初は「いいプロダクトを作る」ことに注力しすぎ市場を作ることをおろそかにしていたと振り返りつつも、獣医が気づかなかった病気を早期発見できたなど、猫と飼い主のより深いサポートができたことが喜びだと語った。

株式会社RABO 代表取締役社長の伊豫愉芸子氏。同社が提供する「Catlog」は首輪に取り付けたデータロガーにより、飼い猫のコンディションを24時どこでも把握できるというもの。今後は収集したデータを活かしたビジネスも手掛けたいという。

 参加した学生たちに向けては「成功した起業家の多くは“自分は運がいい”と語るが、それは到来したチャンスを逃さずに実現できているから。考えの軸を持ちつつも、フレキシブルに考えていくことが大事」(中村氏)、「まずは日々目の前にあることに一生懸命になる。そして何者になりたいのかを考える。自分の知的好奇心がグッと動くモノを見つけてください」(伊豫氏)とメッセージ贈った。

質疑応答では「イニシャルコストとして借金はした?」「社員を雇う基準は?」といった具体的な質問が生徒たちから飛び出していた。

 また会の中では、1つのテーマについてテーブルごとで討論し合うグループディスカッションや、アイデアを広げていくためのブレインストーミングといった、スタートアップ企業では欠かせない手法のレクチャーも行われた。今回登壇したROBOの「Catlog」をテーマに高校生が考えるビジネス拡大案を考えるというブレインストーミングを実施。まずは発表することを恥ずかしがらないというブレストのレクチャーを受けた。ブレストには伊豫氏も参加し、各チームから様々なアイデアが出てきた。活発に積極的に参加する生徒たちの姿は、未来の起業家を想像させるに十分なものだった。

  参加した生徒からは、起業家教育に取り組む全国の生徒と交流や起業家の考え方をこれからの活動の参考にしたいという声が多く聞かれた。また交流会に参加したことで起業・創業に対する関心が大きく向上する結果となった。

交流会参加後のアンケート結果

 各校から教員も参加していたが、他校との交流や高校生同士でワークショップを実施する機会は少なく、参加した生徒の将来に良い影響があったのではとのコメントがあった。

 起業家教育プログラムは、将来的に創業を志す人材の育成を目指す取り組みだが、彼らのすべてが創業するまでには至らなくとも、彼らのなかに育った”起業家マインド”は、将来きっと大きな支えとなってくれるだろう。

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