LiDARで出入りを監視し
Galaxy Tab S8でモニタリング
では、北野さんと岡本さんが作り上げたシステムをご紹介しましょう。サウナの入退出は、自動車の追従で使われる3D-LiDARを利用して監視。その情報をタブレット端末を介しリアルタイムでクラウドに上げ、サウナ利用者には専用のスマホアプリで、施設管理者はPCやタブレット端末などでリアルタイム表示するウェブアプリで、利用状況を提供するというもの。
問題になったのは計測方法。高温多湿という環境下と、プライバシーの観点から映像検出という方法は使えず。そこで検討の結果、ドイツ・SICK社の3D-LiDARのセンサーをサウナ室の外のドアに取り付けることで問題を解決したとのこと。
このSICK社製センサーをサムスン製のタブレットと接続。タブレット端末はサウナ室利用状況を表示するとともに、インターネット回線を通じてアリババのクラウドサービスにデータを転送。利用者はリアルタイムでクラウドサーバーにアクセスすればよい、というわけです。
利用状況の表示をサウナ室のみならず、サウナ後の外気浴場所(休憩施設)にも設置すれば、さらに利便性は高まります。実際に動いている様子をみたところ、入退室した5秒以内にサウナ室の状況に反映されており、ほぼリアルタイムといえそう。
新宿にあるテルマー湯で検証実験をしたところ、これが大好評。施設側も「タオルの交換時期、ロウリュウのタイミングなどがわかり、とても有効でした」(テルマー湯:垣花氏)とのこと。またユーザーアンケートを取ったところ好評だったとか。
その名も「TOKYO SAUNIST」
将来は日本中のサウナに導入したい
岡本さんは、このシステムを「TOKYO SAUNIST」と命名。東京と名付けたのは、サウナは首都圏を中心に人気があるから。実際「JALサ旅」の利用者の大半が首都圏在住なのだそうです。ですが、別に東京の施設だけではなく、全国のサウナ施設に、このシステムを導入したいと夢を語ります。
初年度はテルマー湯のほか37施設に、このシステムを設置する予定で、センサー代などの費用はJALが負担します。なお、38施設目以降の設置費用(イニシャルコスト)と、施設側のシステム利用料(ランニングコスト)は、近日発表するそうで、この会見では明らかにされませんでした。
一方、エンドユーザー向けのスマホアプリは9月にローンチ予定。スマホアプリでは、AndroidとiOSの2種類を提供し、施設情報などもあわせて掲載するそうです。利用料は無料ですが、「軌道に乗ったらプレミアム会員向けの情報や投稿機能などを提供するサブスク版も考えています」と岡本さんは展望を語りました。また、施設側からのクーポン配信ができるようにしているとのこと。
実際にアプリに触れてみると、すぐにでもリリースできるのでは? と思えるほどの完成度。営業時間などの施設情報、MAPといったところは、グルメ系のスポットアプリに似た雰囲気ですが、入退室の時間経過が細かく出ているのが、それらとは大きく異なるところ。「エンドユーザーにここまで情報を出す必要はあるのか? ここまで細かいとスマホよりタブレットで見たくなるのでは?」と思ったりしたのですが、9月のリリースまでには大きく変わるのでしょう。
施設側としては、浴室までにインターネット回線を引き込む工事が必要になるのだそう。「ですが、モバイルルーターなどのWi-Fiがあれば問題ありません」(アクティア:北野さん)とのこと。デモンストレーションではセンサーはタブレットから給電されていた様子。24時間営業の施設では、タブレットに給電するための電源工事が必要になるかもしれません。ともあれ、これは絶対的に便利なシステムであることに変わりありません。
会見には支援企業も参加。そのうちの1社、サムスン電子ジャパンの小林謙一CMOは「新サービスの構築に関わることができたことをうれしく思います。今後も取り組みにご一緒させていただけることを楽しみにしております」とコメントしました。浴室にスマホを持ち込み、入浴中に動画やSNSを閲覧する人は多いと思います。今回のプロジェクト参画をきっかけに、ひょっとしたら、サウナ内でも使えるようなタブレットやスマホが登場するかもしれません。お話を聞きながら、そのような事を思いました。
「みんなエアーラインしかやっていないので、新しいことをやると言ってもできないんですよ」という斎藤さん。ですが岡本さんは自分の好きから新しい仕事を成し遂げようとしています。JALの新しい翼になるか、注目してみたいと思います。